【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その65】修繕時期が来たら即全面交換、これで間違いない?(その1)

管理会社は昨年、特段の不具合の兆候が見られない給水システムを予防保全のため全面交換するとの説明を行い、約1000万円の工事を実施しました。

予防保全とは、全面交換するには大変高額なコストがかかる、重要設備(マンション生活に必須でかつバックアップが無い設備)が突然故障することが無いよう、設備の寿命を可能な限り延長する為の保守管理手法です。
故障や不具合が発生する前に早め早めに定期的に損耗した部品の交換や分解整備を行うことで、多額の費用が掛かる全面交換を先延ばしする管理手法です。

多くのマンションで予防保全をおこなっているのが、フルメンテナンス契約で保守をするエレベーターです。

管理会社が予防保全を行ってきたと言いながら、担当フロントは過去どのような予防保全を行ったのか承知していなかったので調べてもらいました。すると、建物竣工後9年目に給水ポンプの大掛かりな分解整備を行っていたことがわかりました。

疑問に思い設備の専門家に過去行った給水システムの保全をレビューしてもらうと、いろいろなことがわかってきました。

①9年目の給水ポンプの分解整備では、まだ問題の生じていないすべての周辺機器と部品が新品に交換されていました。

当時の報告書によると、ポンプ(4台×2系列)本体の分解整備以外に、インバーター(4台×2系列)、制御基板(2枚×2系列)、リモコン交換、電磁弁交換、圧力タンク(各系列1個追加計2個×2系列)、圧力センサー交換、逆止弁(2個×2系列)、フロースイッチ(2個×2系列)の交換が行われています。ここまですべての周辺機器の更新が必要だったのか強い疑問を感じます。

そして今度は分解整備を行った8年後の昨年、再度これら周辺機器を含めたシステム全体を新品に交換する提案をしているのです。

管理会社自らが8年前に新品に交換した周辺機器も含めて、前回の分解整備の周期より一年前倒しで、ポンプも含めてすべて新品に更新するとの提案でした。
竣工9年目に分解整備したのであれば、本来は18年目の本年度に同様の分解整備を提案すべきだったと思われます。

②給水システムを更新すべきとの提案理由に一つに挙げている、「部品の調達が困難」という管理会社の説明は、確認不足若しくは虚偽報告の可能性があり、管理組合をミスリードするものでした。

メーカーに旧システムの部品調達の可否を確認した結果は驚くべき内容だったからです。
「旧給水システムは省エネ型モーターの導入で確かに廃版となっており、旧型モーターの供給は終了しています。が、故障したらポンプ(モーターとセット商品)とインバーターを最新モデルに変更可能です。更に主要部品は、メカニカルシールや制御基板など他の現行機種と共有しており、後継機種の部品と互換性があるため供給が可能です。」

③ゴム製の継手やサイレンサーは破損した都度交換したとしても直ちに断水になるわけでは無いのに一斉に新品に交換済みでした。

ゲートバルブも新品に取り換えていたのです。(見積もり金額は2台で税別71,280円)ゲートバルブは鋳物製の耐用年数の長い部品で、かつ日常操作するバルブではありません。交換する必要は無かったと思われます。

④築9年目に実施した分解整備の報告書に疑問点がありました。

ポンプ本体のケーシング(分厚いステンレス製のポンプの外殻)にピンホールが発生し、漏水が見られたためケーシングを交換したと注記があります。
これは当初からの製品不良が強く疑われます。通常のポンプが10年以内の経年劣化でケーシングに穴が開くことは考えにくいからです。ピンホールの漏水を日常点検で発見し、これを止めるすべがないためオーバーホールを提案したのではとの疑念が生じます。

⑤配管の保温カバーは不要と思われます。

ポンプ室は地下二階にもかかわらず配管は厳重に保温工事が施されていました。凍結など考えにくい場所ですから、過剰な保温工事であったと思料します。

⑥査定が困難なアバウトな見積もり提案

見積もり明細書の配管工事は一式表示であり、材質、総延長、配管経路などは明らかになっていません。数量と単価をもとに査定することが不可能なあいまいな見積もり内容となっていました。

(その2へつづく)

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