【マンション管理規約・法令に学ぼう】管理費の値上げに納得いかない


【相談内容】管理費の値上げに納得いかない

 

◇◇◇ポイント◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


●共用部分の負担は使用頻度は考慮されない
●管理規約を確認
●乱暴な言動は厳禁、冷静に

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【相談者】 ソフィア201号 I田さん

OEKAKI15

【回答者】  マンション管理士 ブチナガ先生

OEKAKI18

 

~高校の大先輩I田さんが、後輩マンション管理士のもとへ訪れたのは、新年あけて早々の澄んだ空広がる午後だった~

 

「アンタかい? マンションのルールに詳しいという後輩のニィちゃんは?なんとかしてくれ!」

 

 

「オーイ! どうしたんスかぁ、I田先輩!?」

 

 

「エレベーターの保守費が高くなったから、という理由で、管理費が値上げされることになったんじゃ。しかし、ワシは普段、エレベーターなんぞ使っておらん。なのに、なんでワシが払う管理費も値上げされるんじゃ!?」

 

 

「なるほど。お気持ちは分かりますが先輩っ! 管理費の値上げには、おそらく妥当性があると思いますよ。」

 

 

「ちょっ、ちょっと待てやニィちゃんっ!ワシは普段、エレベーターは使ってないんじゃぞ! それなのに、その分の費用も払うことが妥当だとっ!?フザけたこと言ってると、痛い目に遭わせるぞぉっ! ロックンロール」

 

 

「オーイ! 熱いスね、先輩!ところで、そのような言動は、脅迫罪(刑法222条)に当たる可能性がありますよ。その場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金となってしまいますので、注意してくださいね。」

 

 

「脅迫罪っ!?懲役って、け、け、け、刑務所に入るってことだよな?」

 

 

「オーイ!」

 

 

「理事長にも同じようなことを言ってしまった・・・」

 

 

「オーイ! それは Too Bad ですよ先輩!理事長(または私)が告訴したら、2年間は塀の中になるかもしれません。もしそうなれば『管理費の値上げに納得いかない!』なんて言ってられません!
熱くなり過ぎはダメっスよ、先輩!」

 

 

「そうじゃのぉ・・・ スマンかった。」

 

 

「オーイ! では改めて話を聞かせてください。」

 

 

「ワシのマンションは10階建で、ワシの部屋は2階にある。ワシの部屋からは、エレベーターよりも階段の方が近くにあるから、外出や帰宅の際には階段を使っている。エレベーターに乗ることはほとんどない。」

 

 

「なるほど。普段、エレベーターは使っていないのに、その保守費の増額負担に納得がいかない、ということですね。」

 

 

「そうじゃ。」

 

 

「先輩、質問です。10階にお住いの組合員は、階段を使っていますか?」

 

 

「知らんっ!・・・が、普通に考えたら階段は使わんじゃろ。」

 

 

「オーイ! そうスよね。厳密には調査しなくては分かりませんが、おそらくは10階のみならず、多くの組合員が階段ではなくエレベーターを使っていると思われますよね?」

 

 

「・・・」

 

 

「ではもうひとつ質問、いいスか?仮に『階段の保守費が高くなったから』という理由で管理費が値上げになるとして、普段は階段を使わない多くの組合員が『使っていないから負担できない』となった場合、それを許せますか?」

 

 

「許せるわけないじゃろっ!階段を使わないのがワシ以外の全員で、それが100人だとして、なんでワシ1人が100人分を負担せんといかんのじゃ! そんなバカな話があるかっ!」

 

 

「オーイ! そうスよね。でもそう考えると、エレベーターについてはその逆に、100人が、先輩1人の分を負担することになりますよね?その場合、先輩が、その100人にお金を負担させることができる根拠は何でしょうか?」

 

 

「うるせぇなっ! ワシは、エレベーターは使ってない!使ってないものに金を出せというなら、それこそ、根拠を示せっ!」

 

 

「先輩、真面目に話しますよ。法律(区分所有法)は、『共有持分に応じて共用部分の負担に任ずる』としています。つまり、エレベーターや階段などについて、それを使う・使わないは関係なく、所有者(共有者)が必要な金銭等を負担する、ということです。」

 

 

「ちっ・・・ (根拠あるんかい)」

 

 

「一方で法律(区分所有法)は、この負担について、管理規約で、法律の定めと異なる定めをすることを認めているので、管理規約を確認しないことには、結論は出せません。」

 

 

「ならば、ワシの場合はどうなのか分からんのじゃろ!?ニィちゃん、テキトーなこと言ってると、家に火つけっぞ!ロックンロール」

 

 

「オーイ! 先輩、それは脅迫罪だってば!いい加減にしないと告訴するよ!あ、これは脅迫罪には当たらないからね、残念ながら(笑)」

 

 

「・・・」

 

 

「とりあえず、家に帰って管理規約を確認してください。見ても分かんなかったら、管理規約を持って戻ってきて。ちなみに、多くの管理組合で準拠している標準管理規約には、法律(区分所有法)と同趣旨の規定があるから、先輩のとこの管理規約も、これと同じ可能性がある。その場合は、先輩の主張が認められることは難しいスね。」

 

「そうなのか」


 「それと、過去の裁判では、共用部分の使用頻度を勘案せずに、共有持分によって負担割合を決めることには合理性があるとしたものがあるので、標準管理規約と同様の場合は、先輩の主張が認められることは、やはり難しいと思われますよ。」

 

 

「オーイ!(あ、口癖がうつった)」

 

 

 

【ご了承願います】

この記事は「できるだけ解り易く」という観点で作成しています。正確性には留意していますが、厳密性を欠いている表現が含まれている場合があることをご了承願います。

 

【参考】

・平成5年3月30日 東京地方裁判所 平成3年(ワ)第17250号 管理費等請求事件

 

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