【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その41】マンションの宅配受け取り革命(その1)

マンションの宅配受け取り革命(その1)
日本の宅配物流業界では大変な問題が生じています。
ネット販売の急増、当日配送、一時間以内配送など、宅配荷物の量の増大と質の転換に、配送と受け渡しの体制が追い付かないのです。その問題が一番顕著に表れるのが、マンション。特に大型の集合住宅です。

私も都心の250戸のマンションに住んでいますが、宅配ロッカーはあるものの、いつも満杯です。自宅に届く宅配便の9割は再配達の案内がメールボックスに届いています。これでは宅配業者は、宅配荷物ではなく、不在連絡票を配って回っているようなものですね。

年末に帰省して田舎から戻ると、多くの不在連絡票が届いています。これらを宅配業者別に選別して再配達の連絡に大わらわです。連絡したらしたで、今度は受け取りのために毎回オートロックを開錠して受け取りの応対をしなくてはなりません。何とかならないものでしょうか。

マンション管理上も以下のような問題が起こっています。
①大量の配送車両の進入と荷卸し車両の駐車
宅配事業を行う各社は、自社の最終配送拠点からマンションまで、軽トラック等で配送にやってきます。荷卸しに便利なエントランス回りの車寄せや来客用駐車場などを長時間かつ頻繁に占拠し、一般の来客の邪魔になっています。
②インターホンを行列待ちする配送業者
オートロックシステムが当たり前となっているマンションでは、お届け先の居室を呼び出し、入居者に開錠してもらって当該住戸にお届けします。
来客専用エレベーターがある場合は開錠操作を行った居住者の住むフロアーの停止ボタンしか押せませんので、別のお届け先を訪問するためには一旦オートロックの外に出て、同様の操作を行うのです。
結果インターホンの前は、行列待ちする配送業者であふれます。セキュリティー上は必要な措置ですが、一般の来客には不自由な光景です。
③奪い合いの宅配ロッカー
新築マンションには電子式の宅配ロッカーが装備されています。しかし設置されるロッカーの数は受け渡し荷物に対して圧倒的に不足しています。設置スペースの問題、価格が一つ10万円以上するというコストの問題があるからです。結果、ロッカーはあっても配送事業者の奪い合いとなっています。せっかくロッカーにお届けしても、入居者がすぐに受け取らず、何日も占有されるケース、大型ゴルフバッグ用のロッカーに小さな小包が収納されるケースなど、非効率な面も否めません。
④配送カートに占拠されるエレベーター
配送事業者は配送カートと共にエレベーターに乗り込みます。多くの配送業者が配送に集中する時間帯では、エレベーターは込み合ってしまいます。
⑤不審者が容易に侵入できる仕組み
インターホンを押して「お届け物です。」と言えば、どんなに厳重なセキュリティーマンションでも簡単に突破できます。配送荷物を持って作業服を着ていれば、管理室でも見とがめられることはありません。多くの宅配業者の立ち入りはセキュリティー上無防備なのです。
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多くの大手配送業者は、それぞれ独自に問題を解決すべく腐心しています。
コンビニとの提携、独自の受け取りロッカーを駅などに配備するなどです。

大手不動産業者では、宅配ロッカーメーカーと提携して、高機能の宅配ロッカーを開発して、新築マンションに配置する動きが出てきました。荷物が届いたことを独自のシステムで居住者に連絡したり、自宅のカギでロッカーを開錠して受け取ったりといったことを売りにしたマンションを販売しています。
宅配ロッカーには実は問題があります。
電気代や通信費用を含めた保守管理コストがばかになりません。年々機能が向上するとともに設置コストも高くなっています。新築マンションでは、販売時にマンション購入希望者にアピールするため必ず採用されるのが最新ロッカーシステムです。
でもロッカーの耐用年数を超えたマンションでは結構な問題となっているのです。多くの中小マンションでは、数百万円のロッカーの更新費は重たい支出です。大規模修繕等の費用との兼ね合いから見送られるケースも少なくありません。「ロッカーが無くても、業者は部屋まで再配達してくれるじゃないか。それより優先すべき設備や建物の不具合があるのでは‥‥」
宅配の受け取りの問題の解決は、既存のマンションでは極めて困難に見えてしまいます。(つづく)
今回のコラムで取り上げた内容については株式会社ウィルポート(03-6205-7399)の城山取締役のご協力をいただきました。
物流業界誌で取り上げられたこちら記事もご参照ください。

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