【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その78 】管理会社の修繕工事に対する取り組み姿勢改善に向けて(その2)

少額工事は必ずものにする管理会社

一方、少額工事は管理会社が元請けとして見積もりを提示するケースがほとんどです。少額工事であれば、ほとんど管理会社の提案通りに発注してもらえますし、様々な議題を審議しなくてはならない理事会の席で、しつこい値引き交渉をされること等まずないからです。

年間の定期点検保守を管理会社が受注している場合、多くは保守対象設備のメーカーが下請けで保守点検を担当しています。このような場合、業界の慣行として、管理組合からメーカーに直接見積を依頼しても、管理会社経由で提出していからとの理由で見積り提示を断られるか、定価ベースの標準見積もりを提示されるだけです。

それなら他社に工事を依頼すれば問題は解決するでしょうか。部品交換を伴う工事であれば、メーカーはこういった独立系業者に定価ベースの高い部品代を提示します。
また、年間保守管理を行うメーカーとは異なる業者が工事を行うとなれば、後日トラブルが生じた際に、工事を行った業者の工事不良なのか、年間保守管理を行う業者の保守管理上の問題なのか、判然としないというリスクを管理組合が負うこととなります。
このような業界の仕組みに守られて、少額工事は高い利益率で、管理会社がほぼ100パーセント受注しているのが現状です。

適正な工事発注へ向けての取り組み

建設業界と管理業界の慣行はしっかり守られていますので、談合やリベートの真偽を管理会社や関連業者に追及しても詮無いことです。
専門家の協力を得て、工事の見積もりの根拠を質し、適正な査定を行い、必要に応じて管理組合主導で管理会社以外の相見積もりをとるなど、セカンドオピニオンを求めることが重要です。管理組合として毅然とした態度をもって、管理会社の工事提案を厳正にチェックする姿勢を示さなくてはなりません。
管理会社の工事提案は、管理組合と管理会社それぞれの利益に相反する問題だとの認識をもって吟味する姿勢が望まれます。

管理会社と管理組合の修繕工事の取り組み姿勢を改善するためには、以下の方策があると考えています。

①元請けとなって管理会社が工事を行う場合の経費率(利益率)を取り決めておき、管理組合が独自に選定した業者が提示する金額で管理会社の下請けとして指定することも可とし、所定の経費(利益)を上乗せして管理会社に工事を発注する。

②管理会社が元請けにならない場合でも、見積もり依頼、現場説明、見積もり内容の検討、工事発注、工事の履行確認、アフターサービスの連絡等の経費(利益)を考慮し、一定のコンストラクションマネジメントフィーを管理会社に支払うこととする。

③管理会社は管理組合と取り決めた経費(利益)以外の報酬やリベートを一切受け取らないことを自ら管理組合に確約する。

④仮に③に反した場合(未遂を含む)は管理委託契約の解除と併せて所定の違約金を支払うことを管理委託契約に明記する。

以上のような提案を、自ら管理組合に申し出る管理会社が現れれば、管理会社と管理組合が修繕工事の取り組みにおいても真のパートナーシップが実現するものと思います。
国土交通省は近年、管理組合が契約する専門コンサルタントの利益相反行為をけん制するため、利益相反行為があった場合に備えて、コンサルタント契約にペナルティー条項を導入することの有益性を提唱するまでになりました。マンション管理及びその周辺業界には変革の風が吹き始めているように思います。期待しましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


アーカイブ