【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その79 】管理会社が管理を辞退する時代に管理組合は何をなすべきか(その1)

財閥系の大手マンション管理会社が、不採算と思われる管理組合に次々解約を申し入れ始めています。フロントスタッフの確保、管理員の確保が困難となり、従来の価格では管理を継続できないと判断してのことのようです。

独立系の大手管理会社においても、小規模の不採算マンションについて解約を進める動きが進んでいます。

リプレイス営業を積極的に行う管理会社には、これら既存管理会社が見捨てた管理組合からあまたの引き合いがあるようで、Sバブルなどと財閥の名前を冠して大忙しです。
数年前までデフレの時代が長く続き、物価の低迷安定が自社の利益に直結していた管理業界は、逆境の時代に入ったようです。景気が上向くと管理業界は不景気になるのです。

フロントマンの確保がまずはできなくなります。ほかの好況業種に人材が流出するのです。大手の管理会社を中心に、かつてのブラックな雇用関係を見直し、人を大切に快適な労働環境の確保を謳う募集が広がっています。管理員も絶好調の工事現場の軽作業や警備員に人材を奪われます。そのため現場で働く現業員(管理員やフロント要員)の人件費は急騰しているのです。とはいえ管理委託料の値上げは困難です。利益が確保できないならば解約もやむなしとなり、上記の騒ぎが起きています。

__管理を手放さざるを得ない大手管理会社。

__手放した管理組合に群がる管理会社。

なぜこんなことが起こるのでしょうか。

大手デベロッパー系列の管理会社の中には、親会社が供給するマンションを専ら管理し、他社が管理するマンションからの管理の引き合いには原則対応しないところが少なくありません。管理のリプレイス営業を積極的に仕掛ける管理会社がリプレイス先に提示する管理委託費用が実勢価格だとすれば、これらの管理会社は実勢価格に比べて数段割高な管理委託料で受託しているため、安値で管理を受託する必要がないのです。

デベロッパー系の管理会社の中にも、リプレイス営業を積極的に行うところが複数存在します。彼らは親会社の供給するマンション管理組合からは、いわば言い値の割高な管理委託料をもらいながら、他社の物件にはそれとは数段割安な管理委託料をぶつけて管理戸数を伸ばしています。親会社からの潤沢なマンション供給が、割安価格の見積もり提示の源泉となっているのです。全体の管理戸数の増大でスケールメリットを享受する作戦です。

大手電鉄系の管理会社が、先年投資ファンドから高額で準大手管理会社を買収しました。買収された管理会社は、今では誰でも知っている電鉄グループのシンボルマークを前面に押し出して、リプレイス営業を展開しています。役員や幹部社員も電鉄系企業から受け入れ、会社のカラーは一新されました。それならば一層のこと合併してしまえば、間接部門のコストなどスケールメリットが出せるように思いますが、そうは単純にゆかないようです。
両社の管理戸数とマンション管理部門売上が、一般社団法人マンション管理業協会のホームページに公開されています。(いずれも平成30年の実績)これから一戸当たり平均売り上げを計算してみればだれもが驚きます。

    管理戸数    マンション管理部門売上    一戸当たり平均売上  
A社  334,172戸      5,449,600万円        16,307円
B社  163,637戸      1,457,100万円         8,904円

同じ大手のシンボルマークを掲げて、同じマンション管理業務を行う2社の単価にほぼ2倍の開きがあるのです。合併して一つになれば、ここまで価格が開いた契約が一社に混在してしまい、顧客の理解は到底得られないでしょう。親会社の受注を中心に高い単価で受注するA社は、他社のリプレイスには関心が薄く、一方の受注単価の低いB社は安値で他社のリプレイスに活路を見出しているのです。

「【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その79 】管理会社が管理を辞退する時代に管理組合は何をなすべきか(その1)」への3件のフィードバック

  1.  恐ろしい時代には、管理組合の理論武装が欠かせません。 諸法令や管理委託契約、管理規約等の理解は必須です。 ただ、そこまで理論武装できる管理組合は多くなく、管理委託契約直前に解約を言われると、ひとたまりもありません。 やむなく、独立系に依頼することになりますが、管理の質は保障されません。 そこへ、マンション管理センターの基礎セミナーでは、素人の集まりの管理組合に、専門的知識者レベル(100点満点)の能力を求めています。
     素人が勉強もしないで、100点満点を取れるわけがありません、

  2. コラムお読みいただきコメントありがとうございます。
    管理会社の品格を見極めるのはなかなか困難です。
    独立系だからと言って信用できないわけでもないと思います。
    デベロッパー系だからと言って安心できるわけでもありません。
    残念ながら、管理組合の姿勢を見極めながら管理会社もどういう態度で臨むかを判断しているのだと思います。
    引き続きコラムをご支援ください。

  3.  なかなか儲からない(中小規模)マンションで、専門的知識者等のいるマンションでは、隠語を使いマンション管理に詳しい人を排除します。 マンション管理ができない管理会社に管理組合の運営は出来ません。 管理会社社員が言っていた「一般理事」には驚きを隠せません。

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