【元管理会社取締役つぶやき その7-2】管理会社が用意するのは「馴れ合い見積もり」(2)

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【ある「元」大手管理会社取締役のつぶやき】
 【元管理会社取締役つぶやき その7-2】管理会社が用意するのは「なれ合い見積もり」(2)

※2017年8月4日に一部更新しました。

あるマンション理事長さんの話です。

「うちのマンションは以前からこの問題を管理会社に指摘しているから大丈夫。管理会社が自社の見積もりを管理組合に提出することは禁止。更に管理会社には、2社以上の業者に相見積もりを取り寄せさせて、安い方に管理組合が直接発注しているからね。」

と安心していたのですが……

ある理事会の席で管理会社のフロントマンから
「ポンプが故障して、モーターの交換が必要となった。」
と報告があり、フロントマンが持って来た見積書に疑問を持ちました。

A社(ポンプメーカーのサービス会社) 88,000円
B社(地元の設備会社)        92,000円
常識的にメーカー系列の会社より地元業者の方が安いはずではないかと思ったからです。

そこで、それぞれの会社に電話で問い合わせる際、マンション名は告げずに、都内のマンションだと伝え、見積書記載のポンプのメーカーと型式を伝えたのです。

A社はなんと管理会社が出した見積もりよりも3割も安い見積もり金額を理事長に伝えました。
B社に至っては、現地を確認したうえでないと見積もりを出せないとのこと。
早速管理員に、B社がいつ現地を見に来たのか尋ねると、そんな業者は来ていないとのこと。
あれあれ?
公平な発注を装っていますが、何か変です。これって、犯罪じゃないですかね。(今はまだ未遂ですけど)
背任罪が成り立つのは、「他人のために事務を処理する者=管理会社」が「自己=管理会社」の「図利(とり、と読みます)=リベート」または相手への「加害=高い金額での発注」目的で任務違背行為を行い「財産上の損害=管理費の無駄遣い」を与えた場合です。

リベートが立証できなくても、わざと高い金額で発注させた「加害」行為が明らかになれば背任罪は成立するようです。

もしもフロント担当者が個人でリベートを受け取っていることが明らかになれば、刑法背任罪が適用されますね。

刑法は原則として自然人を処罰の対象としているため、残念ながら管理会社がリベートを受け取っている場合は、処罰の対象にはならないようです。

但し、管理会社がリベートを受け取る仕組みであったとしてもその一定割合が管理会社の担当職員に成果報酬として支払われる仕組みが整っていれば、背任罪が適用されるかもしれません。

仮に管理会社を背任罪に問えないとしても、こんなことが明らかになれば重大な背信行為です。管理会社にとっては会社の存亡にかかわる大きな信用失墜でしょう。

マンション管理会社と交わしている事務管理の契約には、建物の維持や修繕に関する調停が含まれています。これは委任契約と言って、「他人を信頼して事務処理を任せる契約」です。

管理会社は「善良なる管理者の注意義務をもって事に当たらなければならない。」(民法第664条)とされ、プロとしてちゃんとした仕事をしなさいと義務を課されているのです。

管理委託契約にも、善管注意義務の定めがあり、これに違背すれば当然管理委託契約の解除事由となり、管理組合に与えた損害については賠償請求の対象となります。

相見積もり時に管理組合が注意すること

相見積もりには、管理組合側から信頼できる会社を加えることが肝心です。
それとて管理会社に見積もり依頼を任せてはなりません。その業者の見積もりを見て、意中の業者に安い見積もりを出させるくらいは朝飯前。それどころか管理会社は管理組合の推薦業者をすぐに取り込んでしまいます。

「うちみたいな大手管理会社は仕事がいくらでもある。適当な相見積もりを二、三回こちらの指示通りに作ってくれるなら、三回に一度はお宅に発注する。営業の手間なしでどんどん仕事になるのだから悪くないでしょう。当然その場合は‥‥。わかっていますよね。」と持ち掛けられれば、どうなるでしょう。

厳封した見積もり書を理事長の手元に直接取り寄せ、理事会の席で開封するといった、「馴れ合い見積もり」を排除する工夫をしなくては、いつまでも管理会社のいいようにされてしまいますよ。

菅 理(すが さとし)

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