【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その93】管理組合も業者も合意形成にお金がかかる(その3) 植栽管理をフルメンテナンスに

管理会社「植木が枯れていますので植え替えます。植替えには○○円かかります。」

理事会 「日常の散水は管理員の仕事だし、年間契約で消毒や施肥は管理会社に任せているのだから管理会社の責任じゃないですか?」

管理会社「動物園のパンダが死んだからといって飼育係の責任だから弁償しろというのは暴論ですよね。これと同じです。生き物だからしょうがないでしょう。」

理事会 「それにしても値段も高すぎます。」

管理会社「管理組合が別業者に発注すれば、生育の保証は管理会社としては責任を持てませんよ。」

理事会 「……」


管理会社「植木に虫がついているので駆除のための作業に○○円かかります。」

理事会 「植木の消毒は年間契約の範囲でしょう。」

管理会社「年2回の消毒は含まれていますが今期は実施済みです。これは追加作業ですので別料金です。」

理事会 「年間管理の計画は管理会社の提案通りお願いしているのだから、これは実施時期を見誤ったのではないですか?

管理会社「消毒は春と秋の2回と仕様書に明記してあります。仕様書通りに実施したまでです。放置すれば被害が拡大しますよ。」

理事会 「……」


植栽が枯死や、病害虫の被害の都度、管理事会も管理会社も相当の時間をかけて、毎年同じような議論を延々繰り返しています。追加の作業は年間の計画作業のついでに行える内容であっても、割安価格とはならず、管理会社は必ず発注いただける作業だと高を括って割高な金額を提示してきます。

これに嫌気がさした管理組合が植栽管理を管理会社の業務から外して、直接専門業者に委託する場合もあるでしょう。これはこれで、トラブルがあった場合は植栽業者と管理会社の責任のなすり合いになり、管理組合は別の意味で多くの時間とコストを負担しなくてはなりません。

私は植栽管理を専門的な業務も含めて、日常管理を行う管理会社にフルメンテナンスで委託することを提案したいと思います。

 

 

フルメンテナンスの考え方(仕様、発注方法等)については以下の通りです。

①発注形態
管理会社の下請けとして、植栽の専門会社に業務委託する形態が良いと思います。

日常の管理業務(散水、ゴミや枯れ葉の除去、日常の外観点検等)を管理会社の管理スタッフが、その他の専門的な業務(定期点検、剪定、施肥、害虫駆除、病気・害虫予防、植え替え等)を専門業者がそれぞれ連携を取って実施することが望まれます。

専門業者の候補先は管理会社、管理組合双方から推薦することとします。

専門業者の選考は管理会社、管理組合双方が協力して行うこととし、業務再委託内容(業務仕様、発注金額等)は管理組合に開示とします。

専門業者の発注金額に、管理会社の元請け経費(マネジメントフィー)を所定の割合で上乗せし、発注することとします。この場合の元請け経費として、下請け金額の何パーセントが必要となるのか、管理会社より提案いただき、理事会で承認します。

管理会社は、ⅳで定める業務再委託内容の変更(仕様変更、金額変更等)をしない、リベートを含む一切の利益供与を受けない等を管理組合に誓約していただきます。
万一これに違背した場合は当該植栽フルメンテナンス業務の契約解除と違約金の定め(例えば年間の委託料相当額など)を設けるべきと思います。

②業務の仕様について
現状の植栽が枯れている部分についての捕植、植え替えは、先行して別費用をかけて実施するべきと思います。正常な状態からフルメンテナンス契約をスタートさせることが前提です。

他の業者が植え替えた植栽の保証を、別の業者が行うことは困難ですので、捕植、植え替えとフルメンテナンスの場合の専門業務を担当する業者選定は一括して行う必要があります。

低木のフルメンテナンスは必須として枯損時は、追加費用無しで捕植、植え替えを行うこととします。

中高木については一括して、若しくは個別樹木を指定に枯損時に植え替えを免責する定めを設ければ良いと思います。

施肥、害虫駆除、害虫予防、剪定はすべての樹木を対象としますが、これらに関して厳密な業務仕様を定めることはせず、要求水準(樹木を健全な状態に維持する事といった最低の基準)を定めて作業頻度、実施時期については受託者に裁量権を持たせる所謂性能発注とすることが良いと思います。

定期的(年2回程度)に植栽生育状況の調査を行い、捕植、植え替え、生育不良樹木の対処などの対応を管理組合に対する報告義務を定める必要があります。

自然災害、人的行為(いたずら等)による枯れや損害等に関する免責基準を定める必要があります。

管理組合が定期的なモニタリング(状況確認・検査)を行い、管理不良があれば是正を命じ、指示に従わなかった場合のベナルティー(植栽管理費の一定額の減額)に関する取り決めが望まれます。

 

 

植木が健全に育っている限り、生育土壌が良ければ肥料も毎年必要ないかもしれません。害虫や病気被害がない場合は管理会社の判断で、全面的な消毒も不要で、樹種や発生場所を絞ってピンポイントで行えばよいのです。日常管理でしっかり散水や除草を行い、異変にはいち早く対処することで、植え替えなどのリスクを極小化します。結果、一定の植え替えリスクを見込んだフルメンテナンス契約がもたらす利益は極大化します。

管理会社がしっかり日常管理を行うモチベーションが高まる仕組みだと思います。

植栽のフルメンテナンスを持ち掛けて承諾してくれる管理会社はまだ少ないですが、管理会社の委託先を見直す際に見積もり条件として提示すれば理解が得られるのではと思います。(その場合は①のⅲ~ⅵは割愛しても結構です。)

現在の植栽管理費を各社が考えるリスク負担相当額が上乗せとなり、一見コストアップとなりますが、仕様書発注(仕様書通りの内容で発注し、仕様書以外の業務は別料金)から性能発注(要求される水準を保つための必要な管理を行い、それに要する別料金は発生しない)に変更することが、管理組合にとっても管理会社にとっても、合意形成のための時間とコストまで考えると全体では必ずや利益になるものと思います。

「【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その93】管理組合も業者も合意形成にお金がかかる(その3) 植栽管理をフルメンテナンスに」への2件のフィードバック

  1.  植栽管理は、周辺環境によります。
     住宅街で、周りの住宅街の植栽がそれなりにされているのなら、フルメンテナンスが最適です。
     植栽管理は一時的なものではなく、季節に応じた管理が必要です。
     地場の業者なら、その事は心得ており、指示しなくても任せておけば安心です。
     反対に、盛り場の申し訳程度の植栽で、ごみが頻繁に捨てられるところでは、フルメンテナンスは無駄です。

  2.  管理会社は鞘取り、コロガシ、丸投げで、植栽管理の実力などありません。
     管理会社の植栽管理など、地場業者のフルメンテナンスの比べると、足元にも及びません。

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