【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その97】管理会社に何でも発注しないとだめなのか?

理事会のたびに管理会社からは備品の交換、不具合箇所の小修繕工事、枯れた植栽の植え替え等、たくさんの見積もり提案が出てきます。どれもこれも管理会社の見積もりです。

「一つ一つの発注金額も予算の範囲内だし、少々安い業者がいたとしても、他の業者に発注するとなると、見積もり依頼、発注、納品や工事完了確認など必要な事務処理は管理会社ではなくて理事会の責任になるし面倒だ。」などとあきらめ気分で、全て管理会社に押し切られていませんか?本当にそうなのでしょうか。

マンション管理業協会では下記の共通見積もり書式を先年作成しました。以下該当箇所を抜粋します。
マンション管理業務共通見積書式 2018 年版・平成 30 年版
http://www.kanrikyo.or.jp/format/pdf/kiyaku/mitsumori_20181203.pdf

 

4. 提供業務内訳書

1 事務管理業務

⑶ マンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整

  1. 長期修繕計画案・修繕資金計画案の作成
  2. 長期修繕計画・修繕資金計画変更案の作成
  3. 外注業者契約業務の見積書の受理
  4. 外注業者契約業務の発注補助
  5. 外注業者契約業務の実施確認

 

これらの項目が①基本契約に含まれるのか、② 別契約 とするのか、③非対応 なのか、を明らかにして見積もり依頼すべきとしています。

とはいえ、この書式はマンション管理業を行う団体が管理会社の都合の良いように作成しています。「こんな条件で見積もり依頼をされては大変。あれもこれも組合から押し付けられないように予防したい。」との思いが透けて見えます。

「マンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整」はマンション管理適正化法が規定する会計、出納と並ぶ3つのマンション管理業者が行うべき基幹事務の一つを構成すると明記されています。

法律が業務として(管理会社が受託する管理業務以外の管理事務(スポット清掃など)や修繕工事のお世話をすることを明確に規定しているのです。

以下、組合が直接工事を発注する場合の管理会社に望まれる対応を列記します。

  1. 管理組合が指定する業者に見積もり依頼の連絡をする。
  2. 現地を訪問した業者に、図面を閲覧させたり現場を案内したり修繕依頼箇所の不具合状況や過去の修繕履歴などのヒアリングに応じる。
  3. 管理組合から指示があれば見積書を代理受領し、複数社見積もり依頼をした場合には金額や内容を比較した理事会資料を作成する。
  4. 理事会が決定した業者と管理組合が契約する場合、組合が要請すれば事務代行者として組合を代理して契約を締結する。(電気、水道、保険などは代理契約しているケースが通例です。理事長が管理会社と直接契約されてもOKです)
  5. 工事日を確認し、住民に掲示し、注意事項を周知する。
  6. 工事が終わったことを確認する。(目視で現地職員が簡易に確認できる範囲に限るべきと思います。高所作業や汚水槽内部など危険個所までは管理員では対応できません)この場合、履行確認の書面への署名や押印を求める業者に対して、そこまで管理会社に依頼するのか、理事が直接対応するのか取り決めておく必要があります。
  7. 残材の持ち帰り、片付け清掃の完了を確認し、注意事項(養生期間、操作方法や取扱説明など)や保証書や取扱説明書などを受領し、管理組合に引継ぎ、報告する。
  8. 管理会社からの管理組合宛て請求書を受領し、管理組合所定の手続きを経て支払いを代行する。
  9. 不具合やクレームの申告が組合員や理事会からあった場合は業者に連絡をして善処を要請し、改善のための窓口業務を行う。

管理会社は管理組合の代理人として、管理組合のために、「維持又は修繕に関する企画又は実施の調整」を含めて契約しているのです。自社が管理委託契約外の維持や修繕行為を行う場合に限り、「維持又は修繕に関する企画又は実施の調整」をすると誤解していませんか?

次回の重要事項説明が管理会社からなされた折、上記の内容を示して、「当管理組合の管理業務の一環で、これらのことを管理会社に期待していいですね。」と管理会社に迫りましょう。担当者は顔を引きつらせながらも「当然やります」と言わざるを得ないと思います。やると約束させたことは詳細に契約内容に盛り込む姿勢を貫かれればと思います。
役員の皆様のご健闘を祈ります。

「【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その97】管理会社に何でも発注しないとだめなのか?」への4件のフィードバック

  1. 本日貴殿の記事を初めて拝見しコメントさせていただきます。私は福岡市中央区にある13年前に分譲された125戸のマンションを所有し居住している者です。一昨年までは、所謂サイレントマジョリティでしたが、昨年7月、分譲当初から駐在している管理人の問題を端緒に管理会社と折衝しておりましたが、その折衝開始からわずか一カ月で突然管理会社が管理を解約すると言ってきてから様々なことが起こりました。しかしながら考え続けていますと、「原始規約」に問題があることがよくわかりました。多くのサイレントマジョリティー存在や現マンションの区分所有者でもある旧地権者たちなどの自分たちが作った「原始規約」のまともな部分さえも守らないことなど、憤りが尽きないところです。個別に告発したいところですが、そのような現状は大方の考えである「マンションの価値」と「煩わしいことに関わりたくない」という本質を見抜くことが出来ない状況に嘆息しています。もしご相談できるならば個別にご連絡申し上げたく、ご検討の程お願い申し上げます。

    1. 高橋様
      書き込みありがとうございます。
      コラムを執筆する事で、様々な知見を皆様にお伝えすることを本分としておりますので、個別相談となると、地元のマンション管理士さんや、他の管理会社さんにご相談されればと思います。
      ただ、高橋さんから、具体的なご質問やお困りごとを書き込んでいただければ、それをコラムで取り上げさせていただけるかもしれません。
      また、簡単な内容であれば本コメント欄でご返事したいと思います。
      よろしくお願いします。

  2.  管理会社は、丸投げがたたり、おっしゃるような業務は、今ではできません。
     地場の信用できる業者を探して、やらせた方がマシです。
     そのためにマンション管理士制度ができたのですが、今では制度疲労を起こし、カネに目のくらんだ連中が増え、同じマンション管理士でも、排他をする団体まで現れ、制度疲労は末期状態です。
     脱税事件まで起こす団体まであり、憲法の「納税の義務」をどう考えているもでしょう?

    1. 器用人様いつもコメントありがとうございます。
      頼れる管理士、頼れる管理会社は皆無ではないと信じます。
      丸投げリベートが横行する管理業界にあって、多くの管理会社、施工会社、マンション管理士、設計事務所などがマンションを舞台に、立派な仕事でお客に貢献する正業ではなく、客を欺いて暴利をむさぼる賤業になり下がってます。悪貨が良貨を駆逐することを阻止するには組合員の自覚と識者の積極的な情報発信が不可欠と思います。

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