【デベロッパー・管理会社経由、北関東のマンション管理士 白寄和彦のコラム】宇都宮でマンション管理フォーラム

毎月中旬ごろ、マンション管理フォーラムを県都宇都宮で開催しています。
参加者のほとんどは、現在管理組合で役員を務めておられていて、過去にも役員を数回以上経験されている方々です。

__私は2回目のフォーラムの辺りから、参加者の発言内容に何かモノ足りない違和感を抱き始めていました。

フォーラムのテーマ及び相談内容は地方においても、首都圏のマンションとほぼ同じです。「組合員における組合活動参画意識の向上」とか「将来に備えたリアリティのある長期修繕計画の実現」といったマンションの普遍的な課題から組合員のマナーや駐輪場等の日常的課題、「理事長による独善的組合運営の改善」とか東京・神奈川と何ら変わりません。

ただ、課題は同じであっても参加者の発言から感じる違和感というのは、課題を減らしていくにも組合にとってパートナーとなるべき管理会社の存在は極めて重要なはずですが、それが薄すぎるというか、軽いというか、期待されていないというか、まず参加者は管理会社の業務・役割を認識していないのではないか、更に支払っている業務委託料に見合った課題解決のための仕事をさせていないのではないかということです。

生意気なことを言って申し訳ありませんが、あえて直言させて頂こうと思います。

管理会社による「課題解決」のための助言や補助などという業務は存在しない。そもそも組合と管理会社が締結する業務委託契約書のどの条項にも記述は見当たらないし、マンション管理の主体は組合でしょ!と。

ただでさえ、委託契約書別表に明記されている総会や理事会の「支援・補助」という表現の曖昧さに起因して、管理会社の業務が拡大解釈され、どれほど新たな業務が発生し、一度受託したら遠慮なく継続が求められ、かつ、それらが当然のように無償提供されている現状を知らないのかと!

理事会に先立つ事前幹部会や複数設置される専門委員会における理事会並みの「支援・補助」、居住者間コミュニティ形成のためのイベントの実質的運営、建物の不具合箇所に関するデベロッパーとの実質的交渉等々、追加業務はそう容易く有償を認められることはなく、管理会社が人事・収益面上で非効率な経営を強いられていることは私も重々承知しています。

しかしそれでも、管理組合に対して的確に課題解決のアプローチを行い、そのための支援・補助を惜しまず、説得力のある具体的提案を行い、そして結果と信頼を積み上げている管理会社を私は幾つも知っています。

これらの会社(フロント社員も)は着実にそのスキルと経験を積み上げているので、旧来型のモチベの低い管理会社との格差は開くばかりです。
かなりの課題を抱えているマンションでも、10年もあれば課題はほとんど解消できます。

私がお世話になっている東京世田谷のAマンションでは、毎期、管理会社から理事会に対して粘り強いアプローチがありました。フロント社員の口癖は「早め早めがちょうどいい」です。
そのお陰で、①規約の改正や管理仕様の見直しは適宜行われ、②長期修繕計画をよりリアルなものにするため修繕積立金は段階方から均等型積立へ変更、③理事会を真に補佐する専門委員会の自主的活動、④マンションのアキレス腱だった機械式駐車場の大胆な改革等々、第1回の大規模修繕工事前にほとんどの課題をクリアできました。

それでいて、10年という短期間で突っ走ったにも拘わらず、課題は組合員間で十分に共有でき、理事会が紛糾したとか、総会の承認が危うかったとかいうこともなく有効な施策は粛々と決議され、執行されていったそうです。
ですから、マンション管理のコンサルタントに相談するような場面はなく、その必要性を感じたこともなかった。管理会社で十分事足りたと役員さんは話しておられました。

確かにAマンションの管理会社にとっては業務量が増え、会社として課題を明示し、的確な解決のためのフローチャートも提示するプレッシャーはかかるし、社員教育や「落とし込み」にそれなりの労力が必要でしょう。現場のフロント社員は能力と経験が絶えず試されているようでストレスはかなりのものです。

しかし、その対価は彼らの努力を裏切ることはないと思います。

 

 

例えば、B級・C級の管理会社という烙印が押され、今流行のマンション管理のコンサルタントを潤すだけの茶番劇「管理会社変更コンペ」が開催されて、そこで「追い詰められた」窮地の姿を親しい組合員に晒すようなことをしなくて済みます。
私も出席したことがありますが、シンパの元役員さんに慰められて惨めなものです。

そして、業務委託料の大幅な値下げを条件に契約の継続をかち取るというコンサルタントが当初から描いていた予定路線を行くわけですが、そんな田舎芝居で会社の大事な利益を失わずに済みます。
これは一例で、要は、会社が最も嫌がる事態を招かなくて済むのだと言いたいのです。

管理会社にとっての共通の願いとは、各マンションから永続的に管理委託契約を更新して頂ける安定的な関係の構築、すなわち「管理組合の囲い込み」ができることではないでしょうか。

願いを現実にしたいのなら、管理会社は課題解決から逃げられないということです。

私は宇都宮のフォーラムで幾つかの相談を受けた際の違和感を書きました。

参加者(現役員の方々)は組合を運営するうえで納得の行かないことや将来に不安・危惧があるにもかかわらず、課題解決のパートナーであるべき管理会社の使命や役割を理解していない。管理会社に望むどころか、存在がハナから意識の外にあるような気がしました。

管理不全マンションとか、不全予備軍とかいう名を最近よく耳にします。
「管理不全」とは、文字通り、事情があるにしろ管理不全になるまで課題を組合にも管理会社にも長期間放置され、健全化するまでに相当の費用と時間、そして労力を要する状態をいいます。

地方では区分所有者にも行政においても、恐ろしく想像以上に管理士に対する認識・期待値は低く、会員の方々は苦労していますが、栃木県のマンション管理士はフォーラムに参加頂いた相談者との出会いを大切にし、管理士業が「機能不全」していると言われないように精進してまいります。

(photo by photoAC)

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