【マラソンと日本酒をこよなく愛する弁護士のマンション管理コラム】住宅部分の寄宿舎・シェアハウス利用の用法違反、どう対応すればよい? 第1回(全3回)

専有部分を改築し、居室を大幅に増やした上でシェハウスとして賃貸している場合、専ら住宅として使用するという管理規約に違反することになるのでしょうか。また、このような事態に対して管理組合としてどのように対応すればよいでしょうか。

シェアハウスとは

シェアハウスとは、明確に定まった定義はありませんが、ここでは、「1つの賃貸物件に親族ではない複数の者が共同で生活する共同居住型賃貸住宅のことをいう」とする国土交通省が示した定義に基づき検討します(シェアハウスガイドブック1頁(国土交通省作成))。

シェアハウスは、1つの専有部分内のリビングや浴室、トイレ台所といった共用部分を他の居住者と共同利用し、居室部分を専用部分として単独利用します。共用部分の利用を通じて、入居者同士に交流や繋がりが自然に生まれる点に特徴があるとされており、また現在活用されていない空き家や空き室の有効活用の1つとしても注目されています。

問題の所在

家族が生活することが前提として設計されているマンションでは、区分所有者を含む居住者が家族、すなわち1つの生活共同体として継続的に同居生活を営むことが予定されています。単身者用のマンションでも、特定の居住者が継続的に生活を営むことが予定されています。そのため、このような物件の管理規約では、専有部分を専ら住宅のとして使用することに限定していることが見受けられます。

たとえば、国土交通省が公表しているマンション標準管理規約(単棟型)12条1項は、「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし 、他の用途に供してはならない。」と定めています。

他方、専有部分をシェアハウスとして活用する場合、見ず知らずの複数の者が当該専有部分を利用することになるため、家族を単位とする生活共同体による継続的な同居生活という前提があてはまりません。これは、特定の利用者が単独で生活をすることを前提とする単身者用のマンションにも当てはまります。
そのため、マンションにおいて専有部分をシェアハウスとして活用する場合、そのマンションが当初予定していた形態とは異なる利用形態が生じることになり、「専ら住宅として使用する」という上記管理規約の定めに違反するかが問題となります。

とりわけ、違法貸しルームとして専有部分が活用される場合、その使用が建築基準法等の法令に違反するおそれがあるほか、不特定多数者がマンションを出入りし、他の区分所有者にセキュリティ上の不安を抱かせることになるため、管理規約適合性が問題となります。

(続く)

「【マラソンと日本酒をこよなく愛する弁護士のマンション管理コラム】住宅部分の寄宿舎・シェアハウス利用の用法違反、どう対応すればよい? 第1回(全3回)」への4件のフィードバック

  1.  民泊はともかく、シェアハウスの利用は、極端な例でない限り、制限を加えられません。
     最近は、老人一人暮らしでの孤独死、孤立等の問題が生じています。
     マンションでは、孤独死、孤立は発見しにくく、外見からはごみ屋敷であることすら発見できません。 詳しくは分かりませんが、少人数のシェアハウスと思われる住戸もあります。
     人数の点で考えると、親族なら3LDKで10人暮らしもあるかもしれませんが、管理規約の用法には反していません。 マンションの発生、発達は時代により変わっています。 その変化に、法体系や管理規約はついていけません。 民泊がその例です。 空き住戸を活用したいのは、区分所有者とすれば当然です。 不動産管理信託などは、管理規約の枠を超えるものですが、これからはその対策も必要です。 マンション管理センターも英語版の管理規約を出していますから、区分所有法上、外国人の区分所有を拒否できません。 マンションを社会資本と考え、活用方法を考えないと、マンションに明日はありません。

  2.  「商行為を禁ずる」なら、分譲賃貸が問題になります。 禁じてもカネの誘惑には勝てません。
     実質的に禁止するなら、保健所の制限が役に立ちます。 当地では民泊担当は保健所です。
     なぜなくならないかと言えば、民泊は権利関係が複雑にならず、儲かります。

  3.  寄宿舎やシェアハウスでは、非常識なものは排除しても、常識的なものは排除できません。
     区分所有者に居住者の教育(マンションの暮らし方等)を徹底するしか、方法はありません。
     居住届等の書類で、実際の居住者を管理組合が把握しておくのも忘れずに。

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