【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その50】管理会社と管理組合はすれ違ったままなのか(その3)

元大手管理会社取締役_ブログ

更に一カ月後の理事会__。
いよいよ管理会社から管理業務の総合的な見直し案が提示されることになりました。管理会社の支店長も管理組合の求めで出席しています。

理事全員、2か月越しの管理会社の「総合的な見直し案」の説明を聞き愕然としたのでした。

管理委託費の削減額は年間の管理会社の管理委託費の1%にも達しません。しかも削減の根拠は理事が検討を要請した「廊下の定期清掃は自動床洗浄機を導入することで、日常清掃スタッフが対応できるのではないか。」とのアイデアにこたえた結果です。

そのほか、管理員の勤務時間をわずかばかり延長すること、下請の植栽管理業者により、夏場に年5回巡回して除草等の軽作業を行うことなどを現行金額のまま実施する内容です。

7月の理事会以降、管理会社に「植栽管理の内容とコストを見直すため、発注先を管理組合の推薦業者も含めて検討してほしい。元請けとしての必要経費は管理会社が上乗せしていい。」と要請していました。いったんは管理会社の課長はこれに同意していました。

 

同時に、エントランスホールの大理石床の光沢を維持するための適正な管理方法も管理会社に投げかけていました。
これらの宿題を踏まえた回答を期待していた前々回の理事会で、管理会社の支店長から、「管理業務全般に対して総合的な見直しを行う。」との申し出があったのです。ところが管理組合の投げかけた問題については何ら回答が無い有様です。

先月の理事会で、中間報告と称して、管理会社の課長から「独立系の設備保守管理会社を採用することで設備管理料の値引きを検討している。」との発言がありましたが、このことは一切今回の提案には盛り込まれていませんでした。

 

前々回の理事会に支店長の出席を促すきっかけとなった、「清掃業務仕様書にある月一回の植え込みの除草は、日常清掃スタッフでは一切対応しない」と発言した管理会社の課長は、自身の発言通り、下請の植栽管理会社に要請して年5回夏場を中心に除草等の作業を追加してきました。あくまで下請け業者が除草をするとのスタンスなのでしょう。
これと同時に説明のあった修繕積立金の長期収支見込みは驚くべきものでした。
不足すると見込まれる額は、向こう30年で10数億円との試算です。これを解決するには修繕積立金の大幅な値上げは必至で、修繕時期を遅らせたり、管理費の支出を削減したりする検討が必要と管理会社のレポートは締めくくっています。

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「ああそうですかわかりました。今期も残すところわずかです。これ以上当期の理事会で審議するにも時間不足です。それではみんなでこれから10数億円を負担することにしましょう。管理会社さんが管理委託費の見直しを検討していただいた結果、僅かですが値引きをしてくれるそうです。来年はこの金額でお願いしましょう。皆さんよろしいですね。」

 

……こんな風に丸く収まると管理会社は期待していたのでしょうか。

「うるさい理事には逆らわず、理事の声を聴いているかのように装い、ズルズルと時間を稼いでいれば一年はすぐにやり過ごせる。今期の面倒な理事さえ交代してくれれば、来期はおとなしい役員に交代するかもしれない。そうすれば管理組合との関係はリセット出る。理事は通過集団にすぎない。継続して管理を担う管理会社にはしょせん逆らえないのだから。」

理事の皆さんには、こんな管理会社の腹の中が透けて見えてしまっています。「消費者を馬鹿にするのもいい加減にしろ。」と言いたくなりますね。
①管理会社と管理組合が分かり合える関係を構築しているレベル
②管理組合が管理会社のいい面も評価しつつ残りの不満は諦めているレベル
③管理組合が管理会社を全く評価していないにもかかわらず具体的な行動に起こせず諦めているレベル
④管理組合が管理会社の問題点を是正させる、叶わない場合は管理会社を変更するなどの行動に移すレベル

 

__あなたの管理組合と管理会社の関係はどのレベルでしょう。
②や③のレベルのお客様を多数抱える管理会社こそ一番採算性が良い、儲かかる経営だと勘違いしている管理会社が多いのかもしれません。解約になるのは下策だが、必要以上の顧客満足は必要ないとのスタンスです。

①を実践する管理会社が評判となり、DM、テレビCM、セミナー企画、新聞雑誌の広告など、多くの大手管理会社がやっているような、無駄な広告宣伝をしなくても仕事が増える仕組みが出来れば理想ですね。

コストの削減と社員の待遇向上が両立できれば職員の採用も容易になりますし、安定した人員体制は、更なる管理組合との信頼関係構築に資するものと思います。

 

①を目指す管理会社と管理組合の関係構築には、以前にもコラムで触れたように契約の仕組みから変えてゆかないといけないと考えています。

 

 

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