【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その54】相見積もりは企業秘密なので開示できない!?

元大手管理会社取締役_ブログ

 

給水ポンプのシステムを更新する見積もりが管理会社から出てきました。
管理会社の見積もりだけでは決められないと、理事会が管理会社の担当者に複数の会社から見積もりを取って比較検討したいと要請したところ、管理会社の担当からは次の回答が返ってきたそうです。
「本社技術部門では、業者3社に対して相見積もりを取っています。しかしその内容は、会社としては仕入れに該当する企業秘密部分になるので開示できません。」
相見積もりとは、管理組合が工事などを発注する際に、複数の業者に見積もり依頼することです。競争原理を働かせ、適正な価格と内容で発注先を選定するために必須の作業です。
管理会社の見積もりと比較検討するため、管理会社以外の発注候補業者が管理組合宛てに提示する見積もりが相見積もりです。管理会社の担当者の答弁は全く答えになっていませんね。
理事会が工事発注に際して「相見積もりを取ってほしい」と管理会社に要請することはどのマンションでも日常茶飯事です。

管理会社ランキングトップクラスの、当該マンションの管理会社が、管理組合からの相見積もりの要請に対して、このような回答で乗り切るよう社員を教育し、自社の見積もりだけで工事を承認させているとは驚きです。

 

それでは世の中の管理会社はどのような対応を取っているのでしょう。
Pattern①十分再委託先の選定を吟味し、社内検討をしているので管理会社の見積もりを信じて管理会社に発注するよう強弁する。(今回のケース)

Pattern②「管理会社以外の見積もりを比較したいなら理事会が独自に業者を選び、その業者に工事内容を説明し、現場を案内して、見積を依頼すればいい。」と開き直る。この場合「管理会社は一切協力しない。」「トラブルが生じても管理会社は責任を負わない。」等と相見積もりを断念させるようプレッシャーをかける。

Pattern③管理会社の見積もりのほかに、常に数社の相見積もりを提示する。管理会社に必ずしも発注しなくていいとの建前。(でもなぜか常に管理会社の見積もりが最安値となっている。親しい業者に管理会社より高めの見積もりを出してもらっている。)

Pattern④管理会社は一切工事に関して見積もりを提出せず、管理会社が選定する複数社の相見積もりを提出する。(内情は、管理会社が見積もりを取る専門業者の顔ぶれは工事種別ごとに固定化しており、各社の提出する見積もり金額を管理会社が指図することで、順番に工事を取らせている。談合を取り仕切る管理会社には、専門業者から所定のバックマージンが入る仕組みが出来上がっている。)

Pattern⑤管理会社は一切リベートを取らないと管理組合に誓約し、管理組合の推薦業者があれば推薦業者も含めて見積もり参加させる。常に複数の業者を比較検討して管理組合が業者を選定できるようサポートする。

管理会社のリプレイスが当たり前の時代です。
管理会社の選定において価格面を最優先して管理会社を見直すと、管理の本業ではどの会社も採算が取れなくなってしまいます。そのため、いったん管理を受託すれば、受託したマンションは自社の縄張りだと言わんばかりに、管理組合から発注する特別な管理、備品の購入、保険金の対象となる事故の復旧、小修繕や大規模修繕工事等はすべて管理会社の利権だと自認して、利益を吸い上げるのです。

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そんな中でPattern⑤の対応を取る管理会社もごく稀ですが存在します。
しかしながら、管理会社はボランティアではありません。本業の管理以外の部分で一切利益を上げないとの方針を貫徹するPattern⑤の会社としては、本業こそ適正価格で受注しなくては経営が成り立ちません。管理組合が価格だけに目を向けて管理会社の選定をおこなえば、真っ先にこのような会社は選から漏れてしまうので、悩ましい限りです。

 

管理会社の比較検討の段階では、Pattern⑤とPattern④の会社はにわかには峻別できません。Pattern④の管理会社も、「工事業者の選定では出来レースを仕組んで管理組合を手玉に取るつもりです。」などと公言して受注できませんからね。
「Pattern⑤で対応します。」との管理会社の言を信じて管理を任せても、実際に管理が始まるとPattern④がまかり通るのが、残念ながらマンション管理業界の常識です。

 

管理会社の管理委託契約は、委任契約であり、受任した管理会社は、本来管理組合の利益のために管理業務を履行する義務を負っています。管理組合の信頼を裏切り、詐術まがいに裏でリベートを取るような行為を許してはなりません。

将来発生するであろう様々な工事の発注にあたり、今後繰り返し問題となる重要な課題です。管理組合は、工事業者の選定と発注に関する手順をあらかじめ管理会社ときちんと取り決めておく必要があると思います。

 

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