【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その111】コロナ禍の中、総会で特別決議を可決するための方策

管理規約の改定を目指して総会を招集した管理組合からの相談がありました。

新型コロナ感染対策として、可能な限り総会会場への現出席者の数を抑え、特別決議をクリアしたいとのことです。そのために、1カ月以上前に総会の開催通知を送り、総会会日前に、2回にわたり議案説明と質疑応答の為の集会を設けました。その集会ですら三密にならないように実会議とWEBのハイブリッド型で開催。総会の現出席者を抑えるため、組合員には総会での三密を回避するため、事前に委任状と議決権行使書の提出を求めました。仮に総会に出席すると意思表示される組合員に対しても、急遽不都合で欠席するなどの事態に備えて、委任状又は議決権行使書の提出をお願いする念の入れようです。

現在1回目の議案説明会を終えたところです。それでもなお多くの方から、書面(委任状や議決欠権行使書)による回答を得られていない為、組合員及び議決権総数の4分の3を要する特別決議をクリアできないと懸念されています。
今後の理事会の対応として、各階ごとに回覧板を回して、委任状又は議決権行使書の提出を促すことを検討されているそうです。

私から以下のアドバイスを行いました。

回答の無い方を分析すると・・・3分類でしょうか。

  1. 議案に何等かの理由で反対の方。但し総会で反対意見を述べることまではしたくない
  2. 書面提出を失念又は総会に無関心の方
  3. 現段階で賛否保留又は質問のある方で議案説明会の結果で意思表示したい
  4. 対応すべきは.の方々へのアプローチですね

委任状は議決権行使書に関していくつか問題点を整理します。

1⃣ 委任の有効性についての考え方

  1.  電話、電子メール等であっても委任の意思表示があれば有効
  2. 代理人を理事長とした場合は理事長に事故がある場合委任状は無効となるため、代理人は総会の議長とすべき
  3. 代理人を明記していない委任状でも、委任状書式の末尾に「代理人の指定が無い場合は総会の議長への委任として取り扱います」との注記を付してあれば有効(本記述がない場合、当該組合員に誰を代理人とするか確認する必要がある。)

2⃣ 議決権行使の有効性についての考え方

  1. 電話で「議案は全て賛成する」とか「1号議案は反対、2号議案は賛成」といった組合員の意思表示は無効(議決権の行使は書面でなくてはならない。)
  2. 電子メールやファクスで1.のような意思表示があれば有効
  3. 押印の無い議決権行使書でも有効

但し、直筆署名が無く、ネームスタンプや活字などの記名の場合は、本書面の正当性を信じるに至った状況を残しておくとよい。(本人が本書面を提示した日時や受け取った者の氏名など、一定の信じるに足る状況を記録しておく。)

3⃣ その他

今回のケースでは無用の心配かもしれませんが、強引な反対者が、フェイクの反対書面を提示することを防ぐ必要がある場合があります。
管理会社変更議案に反対の意思表示をする決権行使書が管理会社経由提出されたものの、区分所有者の氏名に書き間違いがあり、これを無効であると議長たる理事長が判断したケースを承知しています。
偽造、複製、なりすましを避けるために、配布する委任状、議決権行使書に、

  1. 番号を付して部屋番号と対比できる形で配布
  2. 理事長印等を押印して配布

といった予防法が考えられます。
これらは偽造、複製、なりすましに対するあくまで牽制であり、番号や理事長印の無い書面を直ちに無効とすべきではありません。このような書面が無効かどうかは議長が吟味し、判断すすればよいと思います。

以上の考えに基づき、いささか強引ですが、総会特別決議を成立させるために有効な手法を述べます。

 

① 管理会社と役員が戸別訪問により書面を回収する

管理会社も理事会も一丸となって議案を通したい姿勢を見せたいものです。
委任状、議決権行使書を手元に準備し、「この場で記入願いたい。」とお願いする。ただし書面の提出は要請しても、くれぐれも賛成を強要することはしない。

書面提出を拒んだり、出席するつもりだとの回答であれば、「万一総会に出席できない場合は議長への委任をおねがいできませんか?」と尋ね、議長に委任する旨の意思を確認する。理事側が(特に複数名で)確認した会話であれば、書面が無くても口頭で委任が確認できたとして扱う。(会話の方法、日時、会話者、立ち合い者の記録と共に議長に提出する。)

② マンション外に居住の方には書留にて再度総会資料を送達

書類送付案内に重要議案であること、書面の返信はメール添付、ファクスでも受け付けることを告知するとともに、本件事情について後日電話でご連絡を差し上げることがあると予告する。
後日電話連絡で書面の提出状況を確認する。未到達の書面が委任状の場合は誰に委任したかを確認しておく。
仮に書面未達でも①の後段の会話同様、電話での委任の意思確認ができたとして出席扱いとする。スピーカーオンで複数の役員が会話を確認することが望まれる。

③ 居住者宅にインターホンで書面提出を促し、可能であればその場で訪問して回収する(管理会社の協力を得て、組合員の電話連絡先に電話をする事でもよい)

委任状、議決権行使書を手元に準備し、「今からお持ちするので記入願いたい。」とお願いする。訪問を拒絶されたり、出席するつもりだとの回答であれば、対応は①の後段に同じ。

④ 総会当日の出席要請(僅差で4分の3の定足数割れの場合)

総会開催日の定刻になっても定足数に達しない場合はその場で③の対応を再度行う。会場の出席者に対しては定刻より20分程度遅れて開会することを了解いただく。

特別決議議案を総会で成立させるため、管理会社の担当が区分所有者に個別に電話連絡を行い、書面提出を促すことは広く行われていると思います。先ずは理事会が率先して出席者の確保に努めることが肝心ですが、管理会社にも積極的に協力をお願いし、是非特別決議を勝ち取ってください。

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