【ゼネコン、デベロッパー経由、マンションのかかりつけ医 井上毅 渾身のコラム】防犯カメラを増やす前に考えること

世の中には、高いセキュリティが求められる施設は沢山あります。例えば銀行や空港、自衛隊基地などがそうです。これらの施設では入り口に警備員が立っていて、入る人を監視しています。セキュリティで最も効果的なのは人の目なのです。誰かが見ていると、犯罪は起こりにくくなります。そのため警備員を増やして、常に誰かが見ているようにしているのです。高いセキュリティ性が求められる施設には、必ず多くの警備員がいます。

マンションも同様で、セキュリティを高めるには警備員を何人も雇い、24時間監視を行えば良いのです。マンションのどこにいても警備員が見ていることがわかれば、泥棒は寄り付きません。しかし人を雇うのは最もお金が掛かる方法で、さらに警備員などの専門職の人を雇うのは現実的ではありません。マンションで複数の警備員がいるというケースは、よほどの高級マンションでもなかなか見られないと思います。

最も効果が高い警備員の代わりとして、防犯カメラが用いられます。人ではなく機械なのでコストが大幅に抑えられるうえに、常に見られているという状況を作り出せるからです。そして高いセキュリティ性を維持する必要がある施設では、警備員と防犯カメラを併用することが多くあります。警備員がいなくても防犯カメラに見られていることを、来場者に意識させるようになっているのです。

そのため防犯カメラは、目立つように設置されています。さらに看板やプレートを併用して、防犯カメラが作動中であることを積極的にアピールしています。このような看板を見たことがある人は多いと思います。

このような看板は日本だけでなく、海外でも多く見られます。防犯カメラは「あなたを映しています」と主張することが重要になるのです。防犯カメラは証拠能力がある映像を撮影することが重要視されがちですが、まず考えるべきは来場者が撮影されていると意識することで、それがなければ防犯カメラの抑止力は期待できなくなります。

このように映されていることを意識させるには、上記のような看板の設置とともにダミーカメラであっても設置することで効果を生みます。本物の防犯カメラとダミーカメラを混ぜて設置することで、セキュリティ性は大きくアップするのです。

最も効果的なセキュリティが人の目で、防犯カメラが人の代替品だとすると、マンションセキュリティを高めるには人の目を増やすことが重要だとわかります。マンションで警備員を増やすのは費用が掛かりすぎますが、マンションには多くの住民がいます。住民の目による防犯効果は、防犯カメラより大きいと言えます。

 

 

スーパーやコンビニなどの小売店では、店に入るなり「いらっしゃいませ」と声を掛けられます。これは万引きを防止するための防犯対策として広く浸透しています。さらに効果を高めるためには、入店してきた人の顔を見ていらっしゃいませと言った方が、不審者は「顔を覚えられた」と意識するので良いそうです。これはマンションでも全く同様で、空き巣狙いでマンション内に入ってきた人に「こんにちは」と声を掛けられると犯罪を行いにくくなるのです。ましてや勝手がわからないマンション内で侵入できそうな部屋を物色している最中に「お困りですか?何号室に行かれますか?」などと声を掛けられると、とてもやりにくいのです。

マンション内で会った人に声を掛ける、挨拶をするのはコストが全くかからないうえに防犯効果を高めることができます。そのためマンションセキュリティを考えるなら、防犯カメラやセンサーの設置を行う前に行うべきことです。住民同士が顔見知りになれば、住民でない人がマンション内にいてもすぐにわかります。

これまで私は多くのマンションに出入りしていますが、全く声を掛けられないマンションもあれば、エレベーターを探してウロウロしているとすぐに声を掛けられるマンションもあります。どちらが防犯効果が高いかは明らかで、声を掛けない手はありません。

また、住民同士が挨拶をすることはマンションの資産価値に影響します。マンションの資産価値とは高く売却できるかどうかです。資産価値が低いマンションは安い価格でしか売れませんし、中にはただでもいらないと言われているマンションがあります。買いたいと思われるマンションであり続けることが資産価値を保つことであり、買いたいと思われるマンションにするために挨拶は有効なのです。

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