【切っても切れないマンションと保険の話し】どうして?マンションの工事費が大幅増額

マンションの大規模修繕工事では、工事費がまさかの大幅増額という事態がたびたび発生します。しかしながら、このような事態が生じた場合も、管理組合として想定外というわけにはいきません。万が一、だとしても、管理組合内で工事計画時に認識しておくことは必要です。

十数年ごとに行う、マンションの大規模修繕工事では、主に外壁と屋上など、いわゆる外層部分の修繕工事を行います。そこで、特に問題となるのが「外壁タイルの浮き」です。これは、外壁タイルがコンクリート躯体に適正に密着しておらず、タイルと躯体の間に隙間等の部分があるということです。

放置をすると、タイルが剥落する危険性が高くなるため、タイル張り部分の「タイルの浮き」の状況を把握することはとても重要で、かつ浮きがある場合は、状況に応じてタイルの張り替えや補修工事が必要となります。

「タイルの浮き」は、つまり「外壁」であるため、状況把握は非常に難しいです。その検査方法は、打診棒を使い、壁をたたいたりしながら、その音を聞いて浮きの有無を把握するもので、手が届く範囲しか検査ができません。そのため、共用廊下・階段・バルコニーなどの内側壁は手が届きますが、外側の壁は手が届かないため、仮設足場を設置して、そこに登って壁にアプローチしないと2階以上の壁は検査することができません。仮設足場の設置費用は非常に高いため、手が届かない壁部分は目視検査を行い、外壁の浮きの有無を予測するとしています。

 

十数年ごとに行う、マンション大規模修繕工事では、仮設足場を設置して外壁の修繕工事を行います。その時(施工前)に、すべての外壁のタイルの浮き、ひび割れ、劣化等のチェックを行います。

約5年ごとの建物診断調査や、大規模修繕工事前に設計事務所等が行う建物診断調査では、費用節約のために仮設足場設置は行いません。資金の余裕がある管理組合を除けば、仮設足場を設置する大規模修繕工事の直前しか、タイルの浮きの正確な状況は確認できないのです。

そのため、大規模修繕工事の工事計画をたてる場合、外壁タイルの浮きは専門家の経験値から外壁全体の2~3%程度(正確には設計事務所などにご相談ください)と想定して、その補修(張り替えや樹脂注入・目地補修等の修繕)予算をたてます。施工業者の工事金額も2~3%で見積りします。

しかし、いざ大規模修繕工事の前に施工業者が仮設足場を設置して、外壁の調査を行ったら、な・な・なんと、外壁全体の15%、20%もタイルが浮いているーーー!となることがあるのです。当然、これを補修するとなれば、工事請負契約で予定していた工事金額は、数百万円、数千万円増額となってしまいます。

この、「予測」と「実態」の差は次の2点に原因があることが多いです。

1.新築時のマンションデベロッパー及びゼネコンの施工ミス等
新築時の施工不良、施工ミスなどが原因で、そもそもタイルの設置状況が悪く、経年とともにタイルの浮きが大きくなってしまったケース。具体例として、新築後10年以内にタイルが落下して発覚したケースや、異常を感じた管理組合が調査をしてデベロッパーやゼネコンを訴えたケースがあります。その場合は品確法や保証期間内であるため、デベロッパーやゼネコンは100%ではないにしろ補修対応に応じることもあるようですが、築後10年を超えてくると、デベロッパーやゼネコンとの交渉は難しくなっていきます。

2.経年劣化によるもの
マンションの外壁が経年及び地震や暴風雨などの影響により、タイルの設置状況に悪影響を及ぼし、タイルの浮きが大きくなってしまったケース(とはいってもタイルの設置状況は悪かったでしょうが)は経年劣化と扱われてしまう可能性があります。その場合は、共用部の維持管理責任がある管理組合の費用負担で補修する可能性が高くなってきます。費用に余裕が無い場合は、借入をしたり、建物全体のうち、危険度や劣化度の高い部分の補修から優先し、劣化度の低い部分は補修を先延ばしにするなど、専門家に相談しながら進めましょう。

このように、大幅なタイルの浮きが発覚した場合は、取り扱いが非常に難しくなります。早い段階で、設計事務所、マンション管理士、工事に詳しい法律家などに相談しながら対処していくことが必要です。どのような結果となるにせよ、世の中では、こういった問題も発生しているのだと、管理組合として認識しておくことは大切です。

また、日頃から打診棒による点検をしっかりやっておくことで、ある程度外壁の傾向は把握できるはずです。管理員による簡易な定期点検まかせにせず、定期的に専門家による打診棒も含めた簡易劣化検査の実施をお薦めします。

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