【ゼネコン、デベロッパー経由、マンションのかかりつけ医 井上毅 渾身のコラム】翻弄され、食いつぶされたマンション その2

地方のマンションに住むK氏からの一本のメール。

管理会社の言いなりと化した理事会の代償は、修繕工事直後の雨漏り、修繕積立金不足のみならず、自主管理を余儀なくされることになった。

 


 

管理会社は最初の契約で「安い管理費」で管理をしなくてはいけなかったので、修繕費で利益を補っていたのでしょう。ずっと言い値で修繕ができたので、それなりの利益を上げてきたのだと思います。

管理組合に借金をさせて2回目の大規模修繕を行わせています。これも管理会社の言い値で行っているので、それなりの利益を出せたでしょう。

しかし、これで管理組合のお金はなくなり、借金だけが残りました。そこで管理費の値上げを要求し、無理なら契約を更新せずに逃げることにしたのだと思います。管理会社に食い潰された典型的な事例、と言えるでしょう。

雨漏りが止まらない屋上防水に関しては、写真を見せてもらいました。

元々、屋上防水はアスファルト露出防水という一般的な工法で工事されています。1回目の大規模修繕の際に、上からウレタン塗膜防水を施しました。これは液状のウレタンを塗っていく防水で、簡単かつ安価な方法でよく用いられています。そして2017年に行った2度目の大規模修繕工事でも、ウレタン塗膜防水が行われています。

写真を見る限り、元々のアスファルト露出防水が浮いてきており、一部が剥がれたり波を打っている状態でした。

このような状態で、ウレタン塗膜防水を塗布しても防水効果がないのは明らかで、なぜこのような状態で工事を行ったのか不明です。雨漏りが起こるのも納得の状態でした。

本来はアスファルト防水を撤去して、断熱材から入れ替えないといけなかったはずです。これは想像ですが、予算が足りなかったのでそこまではせず、防水工事を行ったポーズをとっただけなのでしょう。

いずれにせよ、剥がれたルーフィングの上からウレタンを塗っているので、この工事は無駄だったと言えます。

現在、このマンションは竣工当初から住んでいる人達に加え、中古で購入した人が混在しています。中古購入者は全体の2割に満たない数ですが、この人たちは若い人が多く、最初に管理会社に依存している状態に警鐘を鳴らしたのもこの人達でした。

せっかく購入したマンションが、長い間に渡って蝕まれたていた事実を知り憤っています。彼らは長年にわたり管理会社の言いなりになっていた理事会に批判的で、一部の人は足りなくなった修繕積立金を歴代の理事が充当すべきだと言っています。

歴代の理事の中には自分たちの行き届かなかった点を反省する人、管理会社に騙されたので訴えるべきだと言う人、自分たちだけに責任を求める人達に反論する人などがいて、対立が始まっているようです。

その一方で、管理費や修繕積立金の値上げには根強い反対派が多く、何度か理事会でも協議したそうですが実現していません。

年金生活者の方が少なからずいて、値上げされると払っていけないという声も多いようです。理事長のK氏は、修繕積立金を200円/戸・月の値上げを提案したことがあるそうですが、約2倍の値上げになるため理事会内での賛同も得られなかったそうです。修繕積立金の値上げをしなければ借入金の返済に追われるだけで貯金ができず、今後は何かが壊れても修理費がないということになりかねません。

そのため、雨漏りが続いている部屋の修繕もままならず、その部屋の住民からの苦情が続いているそうです。

 

 

管理会社を信じきり、全てを任せていたのが問題でした。管理会社はマンション管理の委託先に過ぎません。K氏は「管理会社の指示に従うのが理事の役目だと思っていた」とメールに記していましたが、実際にはその反対で、理事会が管理会社に指示を出すべきでした。

理事がマンション管理に関して何もわからないのは当然で、難しいのはわかりますが、管理会社にお任せで見積書のチェックをしないどころか、修繕工事完了後の検査すらしていなかったのは問題です。

本当に修繕が行われたのかすらわからないまま、黙って言い値の費用を払っていたのです。

これでは管理組合のお金がなくなるのは時間の問題でした。

今後できることは限られてきます。管理会社を訴えると騒いでいる人もいるようなので、弁護士に相談するのが良いでしょう。訴えることなどできないと言われるでしょうが、弁護士の口から無理だと言われなければ納得しないはずです。

早急に行うべきは、資金が不足している現状を管理組合全体で共有し、修繕積立金の値上げが必要だということを理解してもらわなければなりません。中には高齢のため、自分達が死ぬまでなんとか住めれば良いと考えている住民もいるようです。しかし、自分たちが死んでも残ったマンションは相続され、子供達がボロボロになったマンションを所有しなくてはならなくなります。

今後起こりうる問題を、弁護士やマンション管理士などの専門家を招いて、住民に説明することも必要かもしれません。何にせよ管理組合がいがみあいを続け、団結しない状況では何をするにも難しいのです。住民同士で喧嘩している間にマンションの劣化は進み、修繕積立金の不足は膨らみ続けます。

すでに時間がない状況で時間を浪費することを止めなければ、状況は悪化するばかりでしょう。

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