空き家問題②(空き家はなぜ問題なのか)はコチラです。
マンションの空き家、2つの問題点
戸建て空き家の対応が急がれる中で、マンションの空き家も年々すごい勢いで増加しています。戸建ては解体をしてしまえば更地となり、倒壊や火災など近隣住宅へ与える危険性は低減できます。(所有者は引き続き雑草等の敷地の管理は必要となります)
しかしながらマンションの場合は集合住宅のため解体はできません。また、老朽化するのは基本的に専有部(室内)のため、戸建て空き家に比べるとマンション管理組合や上下隣戸に影響は少ないでしょう。一方で、戸建て空き家と異なる、マンション空き家にありがちな問題が2つあります。
①管理費、修繕積立金の未払い(滞納)
マンションの1室に居住者はいなくなっても、区分所有者として管理費や修繕積立金を管理組合に納入し続けなければなりません。管理組合は、未払いがあった場合に督促をすることになりますが、相続人など所有者が遠方にいる場合などは、電話や郵送物などの督促では無視をされてしまうこともあります。
②管理組合の理事のなり手不足や総会決議への協力が得られない
区分所有者の中から選任される管理組合の理事は、輪番制で2年おきに各区分所有者が担うことが一般的です。しかし、空き家がマンション内で多数になってくると、その理事のなり手が不足し管理組合運営に支障が生じます。また、総会決議では区分所有者から決議をとるにも議決権が不足したり、区分所有者多数で決めることが少数で決めざるを得ないといった、管理不能といえる状態にもなりかねません。
マンション総戸数のうち3割が空き家になってくると、管理運営に支障が出始めるといわれます。空き家が5割を超えると、さらに深刻な問題となります。
管理費・修繕積立金滞納は大きく影響し、マンションの補修や修繕を適正に行うことができなくなります。漏水が頻発したり設備関係の不具合が発生し、エレベーターが止まったり、ひどい場合は、ネズミや虫が繁殖したりカラスやハトが住みついたりと、マンションのスラム化に向かいます。
主要都市の中心部に位置するマンションの場合は、住戸が空き家になっても賃貸や売却に出せば、ある程度の値段で契約ができます。一方で、人口減少も重なって、郊外のバス便を利用する物件や地方や主要都市以外のエリアのマンションは、築年数が40年以上となってくると、借り手・買い手の需要が少なくなり、値段を安くしても、貸せない、あついは売れないという可能性がでてきます。
管理組合が早い段階から行動し、スラム化を防ぐ必要性があります。
マンションのスラム化を防ぐ
マンションのスラム化いう恐ろしい状況に陥らないように徹底してやること。それは「管理費・修繕積立金の徴収をしっかりやる」です。
空き家が増えたとしても、管理費・修繕積立金が徴収できていれば、日常の維持管理や修繕工事は適正に行なえます。そのために管理組合は、管理費・修繕積立金の未払いが発生したら、毎回対象住戸に対して迅速かつ厳正な対応をする仕組みを構築し、確実に実行しましょう。
具体的には次の点があげられます。
- 未払いが発生したら、未払い者に対し、即支払いの督促を行う
- 未払いが続き滞納状態となる場合には、管理組合として「裁判も辞さない」という厳格な姿勢を示す
- 必要に応じて、遅延損害金を課す、あるいは駐車場・駐輪場の利用権の差押えをする
- 滞納されている住居を管理組合が競売にかける(最終手段)
滞納者には、「管理費・修繕積立金を支払わなければ、様々な損害を被ることになる」と意識を持ってもらうことが重要です。なお、競売という手段をとる際は法律の専門家である弁護士などに相談をして検討してください。
これらは、輪番制で担当となった役員さんには厳しい経験かもしれませんが、管理組合は区分所有者の集合体組織として、マンション全体を円滑に維持管理運営していかなければなりません。そのためには、厳しいルールや対応で臨まなければ、マンション全体に影響がでてしまうのです。
マンションの「空き家」の増加、悪化を防ぎつつ、「快適なマンション生活」をみんなで演出しませんか?
マンションは戸建のように古くなったら住めないのかといえば、そんなことはありません。
マンションの耐用年数=コンクリートの耐用年数と、考えても良いという専門家の考えもあります。そう考えるとマンションは、適切な維持・管理を施すことによって、100年はもつと言えるのではないでしょうか。
築40年以上のマンションも、共用部分の外壁・屋上防水工事や、設備改修、改良工事(耐震化含む)を行い、専有部分は内装リフォームを行うことで、購入希望者や賃貸入居希望者からの需要は高まります。
「建物の快適性プラス子供から高齢者までが安心して暮らせる立体的な住宅街」それがマンションです。
- 「おはよう、こんばんわ」という挨拶のある穏やかな関係
- 清掃が行き届いていて気持ちがいい
- 緑が多く、自然を感じる空間
- 防犯、防災が行き届いている安心感
- なにか困ったことがあれば、誰かがサポートしてくれる「ゆるくつながっている関係」
- マンション内や周辺地域の仲間やサークル、活動があって、楽しみが一つ増える地域
住人は高齢者だけでなく、学生~単身者・子育て世帯など、多様な入居者構成となり、新築時とは異なる「築40年以上のマンションの小さなコミュニティー」にしていくことで「それぞれの建物&生活の魅力化」が図れます。「資産価値維持向上」と言われ続けていますが、高級マンション以外の一般的な住まいには、この「それぞれの建物&生活の魅力化」が問われていると考えます。高級住宅地やタワマン、駅近・築浅とかは関係ありません。
安全が確保されていて、うっすらと人のぬくもりを感じることができて、その地域になんらかの魅力が見つけられれば、価値はあるのではないか。いや、小さな価値を見つけ、大きく育てて行けばよいのではないでしょうか。
こうやって一つの住戸の空き家対策を行うことに固執するのではなく、マンション全体・周辺地域としてとらえることで、結果として空き家対策にもつながるのではないでしょうか。都市以外のどこにでも、魅力はあるはず!!
戸建と違う「区分所有者どおしが仲間になりやすい・行動を起こしやすい」がマンションの大きな特性です。自助・共助の関係が魅力とできるのがマンションなのです。昔、江戸時代にあった長屋の人間関係が、今ではマンションという形に変えて、引き継いでいけるのではないでしょうか。
それを実現するのは、私たち一人ひとりの意識の切り替えだと、私は期待しています。