回数を重ねる度にお金がかかる大規模修繕工事
一般的に、第1回目の大規模修繕工事の目標は、新築時の姿に戻す程度のため、工事内容としては塗装工事や防水工事など、コンクリートの劣化を補修する修繕にとどまります。
第2回目の大規模修繕工事になると、玄関ドアやアルミサッシも不具合が出てくる等から、修繕する程度が大きくなる項目も増え、改良も加えて性能を向上させる工事も求められます。
第3回目の大規模修繕工事となると、外壁・屋上防水工事に加え、給水管や排水管など設備の多くが対象になってきます。
さらに築年数が古いマンションになると、耐震補強や省エネ改修なども必要となります。しかし費用も大きいため、管理組合の合意形成は難しく課題となります。築年数が浅い時期から、計画修繕の優先順位を各年次にうめこみながら計画構築をしていくと、管理組合の合意形成もしやすくなるかもしれません。
修繕周期の長期化の注意点
ここ数年、修繕周期を長期化する工事に関する商品発表がされています。今までの12年周期を18年周期にして、60年間のトータルコストを大きく節約できるといった内容です。しかしながら、その18年周期の工事で使用される「屋上防水の防水材などの商品レベル」には注意が必要です。
今まで使用してきた一般的な防水材であれば良いのですが、高耐久ハイスペックの高級仕様だと、スペックオーバー(管理組合のコストアップ)になりかねません。
防水材メーカーの商品開発レベルや工事会社の施工技術レベルが上がったことで、国も令和3年9月に修繕周期のガイドラインを12年周期→12~15年周期に幅を持たせた考えとなりました。業界でも「一般的な防水材を屋上防水工事に使用しても、15~20年間は十分もつ」という意見が多いです。(但し、一定期間おきに防水層の保護塗装を行う)
商品発表されている「18年周期の工事」では「高耐久ハイスペックの高級仕様」を採用するケースが多いようです。例えば、防水材メーカーの品質保証期間が10年間か、15年間か → 品質保証期間が15年間の場合は高級仕様の可能性が高いと考えられます。
高額の料金を支払えば、高い品質・性能、そして長期間の保証が得られるのは当たり前です。もし、皆さんが高耐久ハイスペックの高級材料を使われるのであれば、修繕周期を20~25年とさらに長期化することを検証してください。工事会社の施工がしっかりしていれば、20~25年くらいは不具合が発生しない商品です。
予算的に難しいのであれば、一般的な防水材をお薦めしますが、一定期間おきに防水層の保護塗装を行うようにしてください。
品質保証と施工保証の違い
メーカーの品質保証にも注意が必要です。「大手メーカーが15年間保証してくれるから安心」と信用してしまいがちですが、品質保証と施工保証は異なり、具体的には次のとおりです。
品質保証
防水材メーカーなどが、工事完了後の保証期間内に、自社製品の品質に問題や不具合があった場合に無料で補修対応をするもの。ただし、工事会社の施工が不具合の原因だった場合は対象外とする。
施工保証
工事会社が防水材を使用して施工して、工事完了後の保証期間内に施工部分に不具合があった場合に無料で補修対応をするもの。ただし、防水材の品質が原因の場合は防水材メーカーの責任とされ対象外となる場合が多い。
これは私の所見ですが、大手メーカーが商品開発した防水材などの品質は信頼性が高いと思います。今まで防水材の品質が問題で不具合が発生したケースを私は知りません。品質に問題がある場合もあると思われますが、たいていの不具合は工事会社の施工ミスや、施工方法の選択ミスが原因です。
施工が原因の補修責任は工事会社にあります。工事会社には一定期間の補修保証の確約と合わせて、国土交通省が認可した「大規模修繕工事瑕疵保険」に加入してもらうことで、補修費用を保険制度で担保してもらうことが管理組合の安心につながります。