大規模修繕工事とは
かつて、工事の現場名称や工事名称は、「外壁・屋根等修繕工事」など、工事内容をそのまま記載して使用していました。今日では、さほど大規模な工事でなくても「大規模修繕工事」と称することが多いです。居住者が理解しやすいことや社会の認知度も高まった背景があります。
一方、修繕といいながら改良も含めて改修と同義で扱われることも増えています。このあたりの名称は業界内でもあまり整理されていません。
よって、大規模修繕工事を主流に、修繕工事や改修工事、計画修繕工事など様々な名称が使われているのが現状です。
このように名称は様々ですが、マンションの大規模修繕工事には、幅広い工事項目と奥行きのある工事内容が含まれているのです。
ところで、建築基準法には「大規模修繕工事」という定義はありません。それはなぜか__。
マンションの大規模修繕工事は、一般的には主要構造部に触れませんし、増築や改築・用途変更を伴わないため、建築確認申請は不要となります。したがって、建築基準法に適合する工事内容になっているかを役所や検査機関はチェックすることがありません。
具体的に見ると、外壁のタイル補修、塗装工事、屋上の防水工事、手すり等の鉄部塗装工事など、確かに上記の内容には該当していませんね。
※ただし建設業法では、必ず主任技術者を工事現場に配置することになっています。また、請負金額と契約形態に応じて、監理技術者を配置しなくてはいけないというものもあります。
設計事務所に求められるもの
マンションの大規模修繕工事では、新築住宅のように建築確認申請の手続きをするということがありません。外壁のタイル補修、塗装工事、屋上の防水工事が主要工事のため建築確認申請は不要ですし、建築基準法に適合しているかについて、役所や検査機関の現場検査もありません。
私は、この大規模修繕工事とリフォーム工事の扱いは、住宅の工事の中では非常にあいまいな扱いになっていると思っています。つまり、大規模修繕工事やリフォーム工事は、工事発注をする一般消費者にとって、万全の施工品質を期待することが難しい状態となっていると考えます。
そこで修繕業界では、「設計監理方式」という大規模修繕工事の進め方があります。
私は、この「設計監理方式」をお薦めしています。
これは、管理組合が施工業者に直接やりとりして進めるのではなく、第三者機関として設計事務所(できれば、管理会社ではない「専門の設計事務所」に依頼しましょう)へ設計監理業務を委託する方式です。
設計事務所は、①建物診断、②基本設計、③実施設計、④施工業者選定業務サポート、⑤工事監理、⑥アフター点検サポート(瑕疵・不具合発生時のサポート)などを行います。
業界を代表する設計事務所が会員となっている団体があります。
この団体に所属する会員設計事務所は信頼と実績があり、安心して大規模修繕工事を行えると思います。
(私が住宅あんしん保証で大規模修繕工事瑕疵保険を取り扱っていた時にも、こういった設計事務所が設計監理業務をしている工事は、管理組合が施工業者へ直接工事発注する方法と比べ、瑕疵・不具合その他トラブルが無く一定の品質が保たれていました)
管理組合は、次の事項を調べてみるところからはじめてみると良いと思います。
- 団体の設立時期(設計事務所の設立時期とは違います)
- 団体や会員が出版協力などした業界専門誌
- 全管連・マンション管理士会他の管理組合をサポートする団体との関係
実際に「修繕工事や設計監理、マンションの維持管理などに対する思いや考え」を設計事務所に直接聞いて、比較するのも良いと思います。
なお、管理組合の知らないところで施工業者等からバックマージンを受け取る、一部の悪質な設計事務所がいます。設計事務所を選ぶ際は十分に注意して、しっかり調査を行ってください。
管理組合のために「修繕工事の専門家」として、適切な建物診断・工事計画・工事監理・アフターサポートの補助などを行ってもらうことで、万全の工事品質が期待できると思います。