台風19号で被害に遭われた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
去る、2013年10月__。台風によりマンションの機械式駐車場が浸水し、車やオートバイが水没しました。
管理組合は、水没したのは管理会社が浸水防止措置等を怠ったことが原因であるとして、管理会社に損害賠償1.008万円の支払いを求めて訴訟を起こしていました。
東京高裁は、控訴審判決でほぼ全面的に管理会社の責任を認めて、昨年の一審判決通り744万円の支払いを命じ、管理会社の控訴を棄却しました。
原告は理事長を含む12人の区分所有者だそうですが、約4年「長いこと、よく願頑張られたな。」と思います。相手は数十万戸の管理を受託するマンション管理業界の大手であり、弁護士をはじめ業界最強の専門家チームで裁判に臨んだはずです。控訴した面子もあったはずです。
こんな表現をすると、「非力な管理組合VS大資本の管理会社」の対決を一面的に面白がっていると誤解されると困りますが。長期に構築された管理組合と管理会社との関係、なかんずく相互の不信感は部外者には決して窺えない闇深さがあります。
私自身、或る業務を委託されている、されていないの「事実誤認」や組合の期待値を超えられない自社の体制・サービスから生じる「不信感」を理事会において厳しく叱責されたことが度々ありました。
管理会社はあくまでも業務を受注する立場であり、ライバル管理会社は数多あるわけですから、主張できる限度はおのずと決まってきます。
この対決は、相互が裁判を通して、初めて「対等の立場」で積もり積もった何か(水没事故以外の)に決着をつけることになったのではないかと思います。これらは、あくまでも私の想像ですから念のために!
確かなことが一つあります。それは、理事会が訴訟の提起及びその継続に推進力を発揮し、長期になればなるほど気弱になる被害者(組合員)を物心面で支え、牽引していったのだろうということです。
マンションに係る法律は区分所有法と呼ばれています。区分所有法は、法人化されていない管理組合には理事会の設置を義務付けていません。
しかし、区分所有者全員は、管理組合の運営を理事会が執行する「理事会方式」を選択し、理事会を構成する理事を総会で承認し、彼らにその執行を委任することとしたのです。また、理事の候補者は立候補や推薦を優先し、人数が足らないときは輪番制によって選ばれることになっています。
区分所有者はいつ、これらを承認したか疑問に思われる方がいるかもしれませんが、実はマンションの販売時に分譲会社からこれらを明記した「規約承認書」を示され、区分所有者全員が求めに応じて提出しているのです。これが理事会設立の根拠になっていて、全国の分譲マンションの99%に理事会が存在します。
理事会では、具体的に、①組合の収支報告案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案の作成②規約や使用細則の制定又は変更案の作成③長期修繕計画の変更案の作成④専有部分のリフォームの承認等を行います。理事会は、管理組合の日常の管理及び「将来に備えた管理」を実行する大きな役割を担っているのです。
___そんな理事会が今、危機に瀕しています。
賃借人が増えたことや、海外勤務等により空き家が多くなったことで現に居住する区分所有者が少なくなり、理事のなり手を確保することが困難になっています。また、区分所有者の高齢化がこれに拍車をかけていて、意欲減退や認知症発症を理由に理事就任を辞退するケースが現実の問題になってきました。
これらに直面する管理組合側も対策を講じています。
理事の就任資格要件を拡大し、①区分所有者の配偶者や子・親②マンションに居住しない不在所有者③マンションの賃借人も理事になれるよう規約を改正しつつあります。加えて、理事が1年で全員交代するマンションでは、任期を2年とし「半数ずつ交代にする」と変更し役員を確保しようとしています。
ただ、これらの施策や努力が最終的な解決策になると信じている業界関係者は少ないと思われます。先日来られた区分所有者もその対策のアドバイスを求めて相談に見えたので、上記の施策を提案したのですが、根本的な解決に結び付くか首をかしげ自信無さげでした。
組合活動に無関心な区分所有者が多かろうが、役員のなり手が少なかろうが、どんな理由があろうと、管理組合は回していかなければなりません。区分所有者全員が選択し、公平で民主的な理想の「理事会方式」であっても、理事会が現実に回らなければ何の意味もありません。
私は先ほどの相談者に、「まずマンション内で自分たちの組合の将来を憂慮する同志を募ってください。」と申し上げました。現状を嘆いて、手を拱いて時間を浪費するのではなく、同志で理事会を構成し決議してマンション管理士を招聘してください。マンション管理士は幾つかの引出から貴マンションが実現可能で、かつ有効な施策を提示できるはずです。
少ない役員のなり手(同志)であっても、成功体験が他の区分所有者にも見えるようになれば、そのための「仕組み」ができれば、少しづつでも管理組合は必ず回って行きますと。