授業のポイント
- 理事会や総会の話し合いには歴史がある
- 議事録には、「経過の要領」を記載する必要あり
- 管理会社が作成した議事録に捺印するまえにチェックを
凝備井(コルビイ)です。本日は、書記の大切さをお伝えします。
とある大規模マンションの総会で、敷地の改修工事の議案が見送りとなりました。そのマンションの敷地には、もともと芝生でできた小山があったのですが、子供たちの恰好の遊び場だったため、踏みつぶされた芝生が枯れ、地面むき出しの単なる盛り土となってしまいました。
そのため、子供たちが遊びやすいように平らに成形して人工芝を敷く計画を立て、総会で提案しました。ところが、ひとりの元理事が、「私が理事の時は「自然の杜」をコンセプトに取り組んできた。人工芝ではコンセプトに合わず、とうてい納得がいかない」との反対意見を述べたため、結果として、議案可決に至らなかったのです。
この事例から2つの教訓が得られます。
- 過去に取り組んできた経緯を示す議事録の大切さ
- 議事録には経過の要領が必要
この管理組合が、前回の大規模修繕工事の議事録を確認し、「自然の杜」をコンセプトに取り組んできた歴史を把握していたらどうだったのでしょうか。人工芝にするにしても、そのコンセプトから外れない説明がされていれば、元理事の理解が得られていたかもしれません。そして、実は、見落としがちなのが、「議事録の要領」です。
そもそも、議事録に、「自然の杜」というコンセプトをもとに取り組んだ経緯が記されていなければ意味がありません。
国土交通省が例示するマンション管理規約のひな形である標準管理規約には、議事録の作成について、次の条文を記しています。
- 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない
理事会や総会で話し合った内容の「経過の要領」および「その結果」をしっかりと記録しましょう、ということです。
議事録は基本的に管理会社が作成します。ところが、この議事録…。話し合いの「結果」は記載していても、「経過の要領」が抜けていることが非常に多いです。
議事録に記載すべき要領は、次の3点に注意するといいでしょう。
- その時の参加メンバーがどのような話し合いをしたか
- どのような意見交換がされたか
- 決議された理由は何だったのか
ただ単に、『●●を購入した』『△△を発注した』と、結果だけ記すのでは、『なぜ、××にしないで、●●になったのか』と、判断に至った経緯が、後で分からなくなります。
貴重な時間を割いて、住人のために一生懸命取り組んできた歴史が将来に残らないというのは、マンション管理組合が記憶喪失の状態に陥ることを意味し、最悪の場合、過去の経緯を住人が忘れていることをいいことに、一度決まったルールが理由なく変更になることすらあるのです。
管理会社が作成した議事録に捺印する前に、このあたりをよくチェックしてみて下さい。