授業のポイント
- 宅急便の置き配、防火管理上の問題はないのか
- 明確な答えなし、ならば、分からないことは、その道のプロに尋ねる
- 大地震が来たら…想像力を働かせる
お早うございます!!授業を受け持つ、佐川九尾です。
「マンションの共用廊下やビルの通路に宅配業者の置いていった段ボール箱が増えてきているが、これは、防火管理上問題があるのか?」と相談が寄せられるようになりました。
コロナ禍以前から「受取人不在による再配達依頼の増大」「宅配業界の人手不足」「宅配ボックスの未整備」といった状況が続く一方で、日本では荷物が盗まれることが諸外国に比べて非常に少ないという素晴らしい国民性?もあり、宅配業者が玄関先に荷物を置いて帰る、いわゆる『置き配』がスタンダードになってきました。
どこの国とはいいませんが、モノをとられた経験が1回や2回ではない私からすれば、日本以外ではありえないサービスだと思います。
とはいえ、マンションやビルのオーナーとしては、「置き配」の良し悪しを判断する材料がいくつかあります。「宅配業者の負担軽減を応援したい」というのは「気持ち」であって、現実的には、
- 段ボール箱が廊下や通路に置かれていることによる「景観」
- 清掃の支障になるか
- 避難通路としての廊下や通路を置き配が妨げないか
といった観点が考えられます。
ここでは、「廊下や通路を置き配が妨げないか」つまり「避難経路の維持に抵触していないか」という観点で話します。
まずをもって、消防法令に「置き配」の良し悪しは書かれていません。
法令に書かれていないものについて、私たちはどう判断するか?ということですが、これは、消防法令に基づき指導を出す行政側、つまり消防の方に知見をいただくのが、やはり一番です。
今回は、東京消防庁のほか、横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市、大阪市、京都市の各消防局の予防係へヒアリングさせていただきました。各署に置かれましては、忙しいところご対応いただきありがとうございました。
九尾の質問
「マンションやビルの共用廊下の玄関ドア先に、宅配業者が「置き配」として荷物を置かれる場合で、かつ、居住者は基本的にその日のうちに室内へ引き取られることが想定できる場合において、消防署としての見解を教えて欲しい。また、防火管理者が業務遂行するにおいて注意すべき点があればアドバイスいただきたい」
消防署の回答まとめ
「置き配もそれ以外の荷物も、現実的に避難経路を塞いでいるかどうかで判断する」
玉虫色みたいな結論ですが、消防の方のアドバイスから最大公約数を割り出すと、結局、「原理原則に立ち戻って判断するしかない」というところへたどり着きました。とても、シンプルです。
普通の物品であろうがゴミであろうが置き配であろうが、個々に判断するしかありません。一時置きであっても、火事はいつ起こるかわからないので、避難の妨げになるリスクがあれば撤去させるべきです。
ちなみに、避難のためには、「どれくらいのスペースを確保」しなくてはならないのか、という問題があるのですが、こちらも何メーター以上という明確な決まりはないようで、消防署に聞いても、100cmだったり、120cmだったり、回答はまちまちです。
手動より大きな、電動車いすの幅が、70cm以下と定められていますので、車いす利用者が避難できる幅の確保は必要と考えます。
日本は災害大国と言われ、私たちの住まいが大地震に見舞われる可能性は、決して低くありません。見た目には避難路に十分なスペースが確保できていても、廊下に積み上げられたその荷物、いつも置いてあるその自転車。大地震が来たら、どうなるでしょうか。
このような想像力を働かせて、日ごろの防火管理に努めていきましょう。