【ゼネコン、デベロッパー経由、マンションのかかりつけ医 井上毅 渾身のコラム】すぐに謝罪は誠意がない?(その1)

新築マンションを購入して入居します。ところがそのマンションに施工不良などの不具合が見つかりました。こういう場合には売主のアフターサービス担当がやってくるのですが、開口一番に「申し訳ありません」などと謝罪を口にする人が多くいます。日本では「まず謝れ」とよく言われるので、まず謝罪から入ることが多いのですが、これは誠意に欠ける行為かもしれません。

新築マンションを購入した人が、わざわざ不具合があることを電話して担当者に来てもらったのは、謝罪してもらうことが目的でしょうか。

もちろん謝罪すれば気が済むという人もいますが、多くの場合はそうではないでしょう。不具合を補修したり交換したりして、元通りにして欲しい場合の方が多いと思います。そのため謝罪されて満足していてはダメです。どうして欲しいのか、自分の希望を明確に伝えなければなりません。

謝罪が目的ではないのに、謝罪をされてもあまり意味がありません。謝罪をされるよりも、今後どうするかを話し合うことが重要になります。しかし現実では延々と謝罪の言葉を担当者が並べ、クレームを入れた人はそれに文句を言うといった光景が見られます。一方的に文句を言っている人が優位に立っているように見えますが、実はこれがクレーム担当者の作戦だったりします。

アフターサービスの現場では、クレームが会社に入ると上司から「とりあえず謝ってこい」と言われて、とりあえず謝りに担当者が現れることがよくあります。何を指示されたわけでもなく、どうするべきかもわからず「とりあえず」謝りに来るのです。

この場合、上司の意図は「お金をかけずに、なんとか相手を納得させろ」か「まずは謝罪して、相手の出方を見ろ」です。どちらも費用をかけないで、クレームを処理したいという意思があります。

こういった背景があるので、クレーム担当者は最初に謝罪をします。開口一番に「この度は、ご迷惑をおかけし申し訳ございません」といった決まり文句を発して、なんとか穏便に(お金をかけずに)終わらせたいのです。ここに誠意があるかというと、あまりありません。そもそも目の前で謝罪している人は、単なるアフターサービスの担当者に過ぎません。その人がミスを犯したわけでもなく、単に担当だから頭を下げているに過ぎないのです。

 

 

アフターサービスの現場では、謝罪が必要になる場合もあります。しかし最初に会ってすぐに謝罪が必要なケースは、あまりありません。そもそも何が起こっているのかわからないので、謝罪のしようがない場合がほとんどなのです。

ガスが使えないというクレームで行ってみれば、ガスを開栓する手続きを行っていなかったり、洗面所が水浸しになったというクレームで行ってみれば、洗濯機の排水の繋ぎ方が悪くて漏れていたりなど、売主や施工会社の責任ではないことも珍しくありません。初めての住まいですから、勝手がわからずトラブルを自ら引き起こすケースもたくさんあるのです。

何が悪いかわからない状況で「申し訳ありません」と言うのは、何に対して謝っているのでしょうか?

何に対しても謝っていないのです。「とりあえず謝ればいいんでしょ?」という開き直りすら感じる無責任な行為でしかありません。しかしなぜかとりあえず謝れば場が落ち着くこともあるので、とりあえず謝っているわけです。この時点でクレームを入れた人も、アフターサービスの担当者も問題を解決するという当初の目的から逸れてしまっているのです。

(その2へつづく)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA


アーカイブ