「リースバック」って聞いたことがありますか?
簡単に言えば次の特徴があります。
- 自宅マンション(住戸)を不動産業者などに売却して現金化する
- 売却後も引越しせず、そのままマンションに住み続けることができる
不動産業者がマンションを買取り、元の区分所有者は不動産業者を貸主、自分は借主としてマンションの賃貸借契約をし、不動産業者に賃料を支払いながら住み続けるという仕組みで、住み慣れたマンションで生活を続け、まとまった資金を調達することができるというメリットがあります。最近では、ハウスドウなど多くの不動産業者が事業化をしています。
マンション管理業界では、管理組合に対して「いい管理をすれば資産価値が上がります!」とか、「大規模修繕工事を行えば資産価値が上がります!」と、言われ続けてきました。しかし、マンション管理組合や住民からすると、マンションを売却せず住み続ける人にとっては、まったくメリットが感じられない、というものでした。
そんな中で、冒頭の「リースバック」サービスが開発されたのです。( ※注意:国土交通省の施策ではなく、民間の不動産業者などが取り扱うサービスです)
これなら、住み続ける住民にとっても、「将来、自分もリースバックを利用する可能性があるから、マンションの管理運営や建物の維持修繕をしっかりやって、資産価値を上げなくちゃ!」と、やる気がわいてきますね!マンション管理組合にとって「資産価値の維持向上のために頑張るしくみ」ができたといえるでしょう。
しかしながら、すぐにリースバックを利用しようとする人はちょっと待ってほしいのです。
リースバックでは、いろんなトラブルが発生しています。(国土交通省もトラブル対応を開始しました)
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000171.html
代表的なトラブルをあげると
- 賃料を途中から上げられた。又は最初から高い設定
- 相場よりもかなり安く売却させられた
- 賃貸契約の更新ができず、退去を求められた
- 買戻しに応じてもらえなかった
- 結局リースバックができなかった
- 勝手に売却されてしまった
- 相続人と揉めてしまった
- 売却した不動産業者(リースバック先)が倒産してしまった
等々…。可能ならば今すぐ利用するのではなく、国土交通省のトラブル対応策など、一定のセーフティーネットができてから、リースバック利用をするほうが良いと思います。
また、マンション管理組合も注意が必要です。区分所有者が、不動産業者に変わることは次のような想像できないリスクがあります。
- マンションの管理運営や建物維持修繕などに対する考え方や価値観が違う可能性がある
- マンション内にリースバックを利用する住戸が増加した場合、マンション内で合意形成が難しくなる可能性がある(不動産業者の議決権割合が増えるため)
- 前項が悪化すると、マンション管理が議決権多数をしめる不動産業者の思うようにされてしまう可能性がある
- 不動産業者が倒産した場合、リースバック契約が破綻し、管理費滞納や管理不全に陥ってしまう可能性がある
- 不動産業者が所有している住戸(リースバック対象)を第三者に転売した場合も、前項同様にリースバック契約が破綻する可能性があ
もし、このようになった場合、リースバック契約をしている住戸だけでなく、マンション全体の問題となります。さらに、法整備が進まない中では管理会社やマンション管理士などでも手に負えない状況になるでしょう。
<最後に>
国土交通省他関係各所におかれてましては、一日も早くリースバックが、トラブルの無い健全なしくみとなり、マンション管理組合にメリットあるものとして利用されるよう、法整備など対応をお願いいたします。