ー工事は完了したが不具合があるので事業主に責任を問い回答を求めたい!弁護士に内容証明郵便の発送を依頼ー
マンション管理士 新人のメル夫です。先月からマンション管理士事務所「メルすみごこち事務所」で研修中です。
いろいろなマンション管理組合の理事会や総会等へ訪問させていただき、その活動を通して得られた「気づき」をリポートさせて頂きます。まだまだ文章が拙いかもしれませんが、どうぞ宜しくお願いします。
今回は、神奈川県にある大規模マンション(総戸数約100戸)の理事会に同席しました。その審議事項の一つに「外壁補修工事に関する事業主への通知書の送付」があり、採決が行われました。
このようなケースでは、何が原因で、どのように対応すべきか勉強させていただきました。
外壁タイルの剥離トラブルについて事業主に回答を求め責任を問いたい
理事長の話では、当マンションで新築以降、かなり早い段階で外壁タイルの剥落が続出したことから、管理組合が瑕疵ではないかと事業主交渉した結果、事業主が施工責任を認めて補修費の半額を負担して補修工事をスタートすることとなったものの、着工後に更に倍ほどの追加工事が発生し、施工会社から5千万円(累計1億円)の請求がなされた。その点を事業主に求めるも事業主は交渉テーブルに乗らずに困っている、、、ということでした。
この追加作業分の支払いを管理組合はまだしていません。というのは、補修工事は完了しましたが、外壁タイルが剝れる等の不具合がありましたので、これまでの対応について当マンションの事業主(デベロッパー)に回答を求め責任を問いたいと考えています。
そこで、弁護士に代理を依頼し、事業主の社長宛「内容証明郵便」を送付してもらうことにしたいというのが今回の主旨です。
販売した商品に不具合がある場合―事業主は責任を免れない
続いて、当メルすみごこち事務所の担当マンション管理士から次のような補足説明がありました。
・元々事業主が引き渡した時点で外壁タイルの施工が不十分だったことが原因だと調査会社からの報告がある。
・施工会社は支払い済みの一部である1割相当額を返還してくれたが、肝心の事業主は打合せをお願いしても対応してもらえないので、書面で回答を求める形式が望ましいこと。
・販売した商品に不具合があった場合、事業主は責任を免れられないと考えられること。
審議の結果、担当マンション管理士からの提案は承認され、弁護士に内容証明郵便の作成と発送を依頼することになりました。
ところで、内容証明郵便とはどんなもので、どういう効果が期待されるのでしょうか。
内容証明郵便とは?
・郵便局が、➀手紙を出したこと、②出した日付、③内容、の3点を公的に証明してくれる郵便のことです。
・「配達証明郵便」との違いは?:配達証明郵便とは、郵便局が、➀相手が手紙を受取ったこと、②受け取った日付、を証明してくれる郵便のことです。
・今回のような文書の場合、内容証明郵便でかつ配達証明郵便としての利用が望ましいようです。
内容証明郵便に期待される効果は?
・次の3つですが、郵便の内容によっては➁が期待できるようです。
- 証拠力を得る。(契約解除、取り消し、クーリングオフ、債権放棄、時効の中断)
- 心理的な圧力を加える。(貸金、売買代金の請求、損害賠償の請求)
- 確定日付を得る。(債権譲渡の通知)
・宣戦布告ともとれる強い決意や態度を表す内容証明郵便を受け取った相手は、心理的な圧力やプレッシャーを感じ、これにより行動を起こさざるを得ない状況になるといわれています。
販売した商品に不具合ある場合、事業主は責任を免れない、とは?
ところで、今回の「事業主に責任を問い」とは、法的にはどのような根拠があるのでしょうか。
売買契約において、売買の目的物に権利または物の瑕疵(欠陥)があった場合に、売主が買主に対して負う責任を売主の担保責任といいます。
この責任は、公平の観点から認められているものですので、売主に故意・過失がなくても負わなければならない「無過失責任」とされています。この担保責任には、物の瑕疵に対する担保責任(瑕疵担保責任)と、権利の瑕疵に対する担保責任があります。
商品に瑕疵があった場合、売主が買主に対して負う責任の内容は、損害賠償の請求と契約の解除です。
この権利は、買主が瑕疵を発見した時から1年以内に行使しなければならないとされています。但し最高裁は、瑕疵担保による損害賠償請求権には一般債権の消滅時効の規定の適用があり、目的物の引き渡しの時から10年の経過により消滅するとされています。
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