【深山州のゆる~いマンション管理コラム5】はじめてマンション管理でムフフとなったとき
あれは、もう15年前。27歳の冬です。
その前に、不動産仲介業者からマンション管理士としての独立を目指すことを決め、マンション管理業界を勉強するために、大手管理会社へ転職しました。
当時、不動産仲介業時代の同期や上司からは、マンション管理業界(管理会社)への転職を賛成・後押ししてくれる人は一人もいませんでした。
- 定時で留守番電話に切り替わる、やる気のない人たちが集まる業界
- スピード感がない・対応が遅い
- 給料が安い
- 不動産業界の中でも使えない人間が行くお荷物業界
マンション仲介業とマンション管理業との実務上の「接点」は、仲介営業マンが、中古マンションの購入を決めたユーザーに対し、売買契約前へ報告する「重要事項説明書」の一部(管理面)について、管理会社へ照会する時に発生します。
基本的に仲介営業マンは「常に売上ノルマを抱え、スピード勝負」です。
週末にお客様をマンションへ案内して、気に入ってもらったらその場で購入申込書にサインしてもらい、次の週の火・水曜日には契約してもらう位のスピード感が必要だったりします。
自分が契約を取らないと、給料が大きく減ってしまうばかりか自分の居場所がなくなってしまう、そんな世界です。
なので「鉄は熱いうちに打て」でした。
一方で、管理会社は、基本的に社員にノルマがなく、売上は小さいものの、毎月着実に管理委託費が現金で入ってくる安定性があり、リストラのリスクも非常に少ないです。
「他の業界に比べると、とにかくマイペース」です。
このように、不動産仲介業とマンション管理業とでは、体質が大きく異なります。
うさぎとカメ、みたいなものです。
『こっちの売買契約に間に合わせるために報告書(重要事項調査報告書)早く送ってくれ!』
とパワハラまがいに怒鳴りつけるような依頼をする場面を多く見ました。
一方で、転職したマンション管理業時代には、事務スタッフが仲介営業マンから電話越しに怒鳴られ、恐怖に怯え慌てて報告書を発送する場面にも多く遭遇しました。
で、私がムフフ、となったのは、、、
管理会社に転職してすぐに、不動産仲介業者(大手御三家の一社)の営業マンから電話があり、例のごとく女性の事務スタッフに、
- 売買契約は明日なんだから、早く重要事項説明書を出せ
- こっちは事務手数料を払ってるんだぞ
- 17時までに頼むぞ
みたいな勢いでガンガン怒鳴りつけています。
おののく女性スタッフ。そんな急に言われても、、、みたいな。
で、私が電話を変わって、この仲介営業マンに電話口で(やさ~しく)こう言いました。
深山:代わりました、深山です。
仲介営業マン:あのね、今おたくの事務員さんにいったんだけど、報告書、いつできるの?急いでるんだけど。
深山:あのね、あなたね、もし私たち(管理会社)が報告書を出さなかったら、おたく売買契約できないんでしょ?
こっちはあなたの都合に合わせて早く送る義務は一切ないので、そういう態度ならゆっくりやさせてもらいますけど、良いんですかね?こっちも忙しいので。
仲介営業マン:(猫なで声で)す、すみません、大変失礼しました。何とか○○時までにいただけないでしょうか?御社まで報告書を受け取りにお伺いしても結構ですので、、、
深山:(ムフフ)←ここです!
そうです。不動産仲介業者は、管理会社が報告書を出さないと、購入者へ契約締結前に説明する重要事項の一部が完成できないため、契約ができないんです。
私は不動産仲介業者にいましたので、そのことはわかっていました。
でも、管理会社の人は、不動産仲介業の実務を知らないし、彼らが凄んでくると、どうしても怯んでしまうんですね。
「ムフフ」って書いていますが、交渉と言うのは、最初に「どちらにイニシアチブがあるか」を良く理解して臨むと、慌てなくて良いんですね。
深山 州(みやま しゅう)
※㈱メルすみごこち事務所:代表、㈱クローバーコミュニティ:共同代表
この「マンション管理組合の学校」発起人の一人で、マンション管理士(メルすみごこち事務所)とマンション管理会社(クローバーコミュニティ)の代表。まわりが勝手に「すごい人」と誤解しているが、実はマンション管理や修繕の専門知識は高くない。とにかく仕事もプライベートも理事会も「楽しく」「新しい」ことを考えていないとアタマが腐ってしまうので、取り扱い注意。『怪しい経歴書』はあまりに文が長すぎて誰も見る人がいないとか。