【デベロッパー・管理会社経由、北関東のマンション管理士 白寄和彦のコラム】反省とペットクラブ

成城学園駅からほど近い340戸のマンションの理事会に出席しましたが、理事会のメンバーに謝らなければなりません。

審議が順調に進捗した理事会の終盤に、複数の女性理事からペットの愛好者の集まりを企画したので、マンションの掲示板を利用させてもらい告知したい、との提案があったのです。

皆さんご存知のように、マンションの掲示板は通常管理会社からの定期的な連絡事項や居住者への注意を呼び掛けるために利用されています。理事長やフロント担当者がちょっと困ったような逡巡する態度を示して私の方を振り返ったので、自分の出番と見定め私見を述べさせていただきました。

「掲示板の使用方法について規約や細則で定めてはいませんが、掲示板はマンションの共用部分に関することや居住者の共同の利益に関すること、及び管理組合や自治会に関係することなどのために供されるものと一般的に認識されており、このことは区分所有者の方々の暗黙の合意が得られているものと承知しています。マンション内の一部の居住者が趣味のグループを作ったからといっても、そのために掲示板を使用することは以上の理由からできません。」

続けて、

「また、今後も同様の申し入れがあるものと予想されますし、掲示板をめぐるトラブルを未然に防ぐためにも、掲示板の使用については理事会の決議マターであること、掲示と撤去は担当役員の指示を受けた管理会社のみが行えることなどを居住者にお知らせしておいたほうが良いと思います。」

理事長や他の役員は合点がいったようでしたが、女性理事たちは残念がって、かつ納得がいっていないことは明らかでした。彼女たちは掲示板による告知を事前に愛好家の間で決定していて、よもや理事会で反対されるとは予想もしてなかったのですから。その辺の事情は出席者にも容易に察することができ、微妙に苦い後味感が理事会に漂いました。

私はすでに後悔をし始めていました。私の助言は杓子定規すぎてはいなかっただろうか。女性理事たちの申し入れに対して、結論は出ないにしても、彼女たちと一緒になって代替案を検討するような姿勢を理事会が示してもよかったのではないか。その方向に理事会を自然に導いて行くのが役目ではなかったか。

 

 

さらに重要なことは、はたしてペットの愛好家の集まりは一部の居住者の趣味のグループと矮小化してしまってよいのだろうかという疑問です。ペットに癒されペットが生きがいとなりペットが家族において重要な位置を占める居住者が増えつつあるなか、その分動物が苦手な方やアレルギーをお持ちの方も相当数おられるはずです。ペット問題が居住者間のトラブルの上位になっている昨今、飼育者のマナーの向上とペットを飼っていない居住者への配慮は直接的に居住者の共同の利益に係わってくることではないか。

先進的な多くのマンションでは、ペット愛好者の集まりを「ペットクラブ」という名で管理組合の正式な専門委員会的存在に進化させています。理事会との連携が重要なため、会長には理事の1人に就任してもらい、ほかの役員は会員の中から1年ごとに輪番制で選出し運営されています。マンション内での飼育者は当然にクラブに全員加入することが必須条件です。活動内容はマンションごとに様々ですが、会員名簿の作成と更新、予防接種の確認、玄関先にペット飼育を告知するために貼る会員シールの配布、会員への注意喚起と啓もう活動、そしてペットを飼育していない居住者からのクレーム対応等はクラブの基本行動としているようです。さらに情熱的なクラブでは広報誌を作成して、ペットが家族と写真付きで紹介されており、私も拝見したときは微笑ましく感動いたしました。

優秀なマンション管理士であるならば、女性理事たちの申し入れに対して、居住者の共同の利益に資する「ペットクラブ」に発展させて設立する意義を他のマンションの成功例を紹介しながら話をすることができたでしょう。これは今後のことですが、もし二人の女性理事にその中心的な役割を担ってもらえたら、理事会が設立に向けて審議すべき議案としてもらえたら、アドバイスをした甲斐があったというものです。

未熟な私はペット愛好者の集まりを単なる一部の趣味グループと断じて、私の助言は掲示板の利用にとらわれ終始してしまいました。これではマンション管理士として失格です。

「反省だけなら猿でもできる!」と戦友たちが笑っていることでしょう。

One thought to “【デベロッパー・管理会社経由、北関東のマンション管理士 白寄和彦のコラム】反省とペットクラブ”

  1.  ペット問題は、マンション問題の中でも無tかしいものです。 好き嫌いがあるうえ、種類による好き嫌いがあり、絶対飼育反対の声が出やすい案件です。
     ひどいマンションでは、ペット禁止を、多数派工作で「飼育可」をしたマンションもあります。
     以前住んでいたマンションでは、玉虫色の管理規約を盾に、ペット飼育するものがおり、建て替えの際、障害になりました。
     その時点で飼育しているペットは、「一代限り」で建て替え後のマンションでも飼育可能にしました。
     今住んでいるマンションには、飼育細則があり、もめ事はありません。
     ペットクラブもあり、飼育者同士が注意することになっていますが、空文化しかけています。
     高齢化や子供たちにとって、「コンパニオンアニマル」の存在は重要です。
     私は、猫は好きですが、犬は大嫌いで、ルールを守らない飼い主はもっと嫌いです。
     でも、狂犬病予防注射と役所へ登録し、鑑札を受けた犬は否定しません。
     もちろん、飼育細則の順守は当然ですよ。

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