【マンション管理組合の教科書】マンション管理規約に「前文」を入れてベクトルを合わせよう!

授業のポイント

  • 日本国憲法の「前文」の原理を管理規約に導入する
  • 住人の共通のベクトルを見出すことが重要
  • 理事の交代があっても、普遍的な価値として守れる仕組みを

 

 

授業を受け持つ猛者手(もさて)です。日本国憲法に前文があるのをご存じでしょうか。

「日本国民は、政党に選挙された国会における代表者を通じて行動し…(中略)政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。(後略)」

日本国憲法には趣旨や基本原則を記した「前文」があり、この前文を理解したうえで条文理解する必要があると言われています。この憲法の前の前文の原理を管理規約に取り入れたマンションがあります。

国内外から観光客が押し寄せる、浅草の中心に程近い場所にある、とあるマンション。

実は、新築時には管理組合運営があまりうまくいってなかったのです。商業地の複合マンションということから、浅草の伝統を重んじながら地域に密着する1階店舗所有者と、後から浅草の地に住み始めた2階以上の住戸所有者との間に軋轢がありました。マンション管理や住まいに関する認識のズレから、理事会の中で議論がまとまらず、理事会運営が停滞することも少なくなかったのです。

そこで、管理規約の全面改定を機に、「マンションのあるべき姿」を徹底的に議論し、その結果、

  • お互いの立場を超えて、一体となってマンション管理にあたる
  • 浅草の文化に溶け込むことが資産価値の向上につながる

という、共通のベクトルが見出せたのです。そして、マンション管理士の助言もあり、このポリシーが理事の交代があっても普遍的な価値として守れるよう、管理規約に「前文」として入れることにしたのです。

 

今では、物事を判断するときの拠り所として、この前文の理念に照らし合わせて、妥当性があるかという判断ができるようになり、管理組合活動のブレが無くなっています。

とても素晴らしい取り組みです。企業でいえば、「経営理念」に置き換えることができますかね。経営理念は、組織の行動指針を示し、企業経営の判断軸を決めることが目的にあります。企業価値を高めるために必要なんですね。

ちなみに、経営理念の例としては、

株式会社ファーストリテイリング「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

株式会社オリエンタルランド「自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜びそしてやすらぎを提供します」

株式会社セプティーニ「ひねらんかい」

(参考:面白法人カヤックさん https://www.kayac.com/vision/philosophy

とても分かりやすい経営理念だな、と感じます。

浅草のマンションの「前文」を参考に、神奈川県のマンション管理規約の改定に携わった際に、管理規約の第1条に導入した文章は次の通りです。

 

第1条
この規約は、○○マンションの管理又は使用に関する事項等について定めることにより、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保することを目的とする。

2.前項に掲げる良好な住環境については、管理規約・使用細則および総会の決議ならびに関係法規・公序良俗に反しない限り、その同居人や占有者を含むすべての居住者に対し等しく確保されること確認する。(3以降に続きます)

 

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