【ゼネコン、デベロッパー経由、マンションのかかりつけ医 井上毅 渾身のコラム】管理会社に工事を頼むと割高になる理由(その2)

マンション工事の際の見積書に記載されている「諸経費」。この経費の額は、会社によって変わっていきます。

全国に支店を持つ管理会社の経費には、「支店経費」と「本社経費」が含まれます。しかし地場の小さな会社ですと、支店がないので「本社経費」だけになります。従業員数も違いますし、事務所の大きさも違うので家賃も全く違います。大手になればなるほど経費が高くなるのは、こういった理由があるのです。

また、保険料も会社の規模によって変わっていきます。工事会社は大手になればなるほど、大きな仕事を請け負います。そのため保険金も大きく設定する必要があり、保険料も上がってしまうからです。こうして会社によって経費は大きく変わっていきます。

管理会社も大手になればなるほど、取引業者の選定が厳しくなります。資本金など会社の規模、帝国データバンクの評点などが選定基準に含まれます。そうなると町場の小さな工務店などは、大手管理会社と取引をするのが難しくなります。大手管理会社が取引するのは大手の会社になり、どうしても経費が高くなってしまいます。

こうして大手の管理会社は自身の経費が高いのに加え、発注先も高い経費を請求してくることになるのです。そのため管理組合に出す見積書は、どうしても高額になってしまいます。

大手だから高い、というのは、このような背景が存在するのです。

 

 

管理会社に工事を発注すると、管理会社も経費を乗せて見積書を出してきます。その中に含まれる経費は、当コラムその1で説明した「現場管理費」と「一般管理費」です。工事の発注に際しては、管理会社のフロント(物件担当者)が理事会と打ち合わせを行い、業者との打ち合わせを行います。この費用は当然ながら見積書に計上されています。

管理会社は経費を取るなという人がたまにいますが、これは暴論です。管理会社が業務として工事を受注する以上は、必要な経費を要求するのは当然のことなのです。

そして、前述の通り、大手の管理会社であればあるほど経費は高額になりやすく、発注先の会社も大手になるので高額になりがちなのです。管理会社がボッタくりだと言われることもありますが、大手であればあるほど取引先の選定基準が厳しくなるため、経費が高くなるので修繕費も高額になるのです。直発注より2割ぐらい高いのは当たり前で、やり方によっては3割以上も価格が変わってくることがあります。

では、管理会社を介さずに、直発注の方が良いのかを考えてみましょう。
金額だけを考えると、直発注の方が良いでしょう。安くしたいなら安い業者を探して直発注するに限ります。その一方で工事業者とトラブルになったりすると、理事会が工事業者と交渉しなくてはなりません。当たり前ですが、管理会社は工事になんら絡んでいないので、アドバイスをすることはあっても交渉はしてくれないからです。

また直発注する際に、業者の腕(実力)を見抜くことも必要になります。安かろう悪かろうの業者も多く、そのリスクが存在します。工事の打ち合わせも理事会で行う必要があり、手間もかかります。こういったリスクや手間を引き受けて、安く発注するというのも理事会の判断ですし、面倒だから高くても管理会社に任せるという判断も有効だと思います。どちらを選ぶかは管理組合や理事会の考え方次第です。

ちなみに管理会社に発注したとしても、工事の完了検査は理事会で行うべきです。管理会社は元請けに過ぎないので、お金を払う前には依頼した工事がきちんと行われているか確認する必要があります。

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