【マンション管理組合の教科書】マンション理事長代行に潜む罠

授業のポイント

  • 2016年、理事のなり手不足解消に、理事長代行が可能に
  • 実は、理事長代行は何十年も前から存在していた
  • 区分所有者の無関心を食い物にする管理会社

授業を監督するハリデホジッテです。

理事長代行方式とは、分譲マンションの理事長を区分所有者(部屋のオーナー)以外の第三者の専門家が行う仕組みで、専門用語では「管理者管理方式」とか、「第三者管理方式」と呼ばれています。

全国のマンション管理組合のひな形として、国土交通省が作成する「標準管理規約」というものがあり、その時代に合わせて適宜改正されていますが、2016年の改正において、これまで区分所有者にだけ認められていたマンション管理組合の役員が、外部の専門家に任せることができる旨の記述が加わりました。

管理組合の役員の担い手不足を解消する目的で改正されましたが、少子高齢化という問題を抱えながらもマンション供給が止まらない日本にとって、将来的にも有望な仕組みといえるでしょう。

ところで、2016年の改正ということで、全く新しい仕組みのように感じますが、実は、一部のマンションで20年以上前から活用されている仕組みです。そのからくりをお教えしましょう。

投資マンションを中心に、賃貸収入や節税目的でマンションを購入したほとんどの区分所有者は、自身が購入したマンションに居住しません。投資目的の方は、「家賃が安定的に入ってくればいい」と考えるので、建物管理や管理組合運営に全くといていいほど興味を示さない傾向があります。

投資マンションは電話営業が活発なことから、都会の物件を買いながら、実際の住まいは地方という方も多くいます。そのため、東京の投資マンションに集まって理事会を開催する、なんてことはそもそも非現実的です。

このような状況から、新築時から機能しない管理組合であることを前提に、不動産開発事業者は管理会社と相談して、はじめから管理会社が理事長代行をする仕組みをつくってきました。

仕組みといっても、管理規約の中に『理事会制度はなし、理事長代行は管理会社です』と、一文が書いてあるだけです。

管理会社が理事長代行をするということは、一定の合理性があります。理事長代行料金を別途受け取らない会社が多く、定額支出を抑えられるのは最大のメリットです。しかしながら、管理会社が理事長を代行するということは、管理組合が負担する様々な支出を、管理会社自らが決めて執行することになるので、例えば、大規模修繕工事の発注先や工事金額、工法、工事の必要性に至るまで、すべて管理会社の判断に委ねることになります。

多額のお金が動くような案件であれば、管理会社が理事長代行として総会を提出することになりますが、素人でもわかる愚案でもない限り、委任状が集まって可決です。

管理会社が理事長代行をするということは、大規模修繕工事を施工業者1社にすべて任せる「責任施工方式」を選択することに似ています。管理組合と理事長代行、さらには施工業者の間に信頼関係があるならこの状態でも構いませんが、残念ながら実態は違います。

理事長代行者である管理会社が、区分所有者が自分の資産に無知、無関心なことを利用して、最低限の管理しか行わず、大規模修繕工事の費用を抑える努力もなし。その結果、20年、30年経ってみれば、修繕積立金はほとんど残っていない、破綻寸前のマンションが非常に多いのが現実です。

理事長代行を考える理由が、「理事のなり手がいない」という理由だけで安易に管理会社に依頼すると、一旦は解決したように思えますが、それは区分所有者の労務負担が減っただけで、マンション管理自体がよくなっているわけではありません。

大切なことは、理事長代行を依頼された、管理会社にしてもマンション管理士事務所にしても、『理事長代行者がマンション管理組合のために何をしてくれるのか、そして管理組合は何を期待するのか。』そこのところをしっかりと議論してから依頼するようにしましょう。

大一番で交代、ということにならないよう、企業も努力しましょうよ、自責の念を込めて。

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