【ゼネコン、デベロッパー経由、マンションのかかりつけ医 井上毅 渾身のコラム】一転してマンション施工不良を認めたゼネコン

あるマンション管理組合が、ゼネコンに対して施工不良部分の改修を求めていましたが、ゼネコンは施工不良を否定したり、のらりくらりとかわしていました。ところがある日、方針を180度転換して施工不良を認めて全面的に補償すると言い出しました。管理組合側の意見が100%通ったのですが、なぜゼネコンは態度を変えたのでしょうか。

問題のマンションは東京郊外のマンションで、戸数は100戸程度です。中堅ゼネコンが建設し、中堅デベロッパーが販売しました。問題発覚時は築8年で、まだまだ新しいマンションでした。比較的安価で販売されたため住民は若い夫婦と、退職金で一括購入した高齢者が混在していました。

住民によると「ありきたりなデザインで共用施設もほとんどないけど、安かったので発売からすぐに完売していた」とのことでした。しかし見方によってはモダン建築を思わせるシンプルさで、決してデザインが著しく劣るというほどではないと私は思っていました。

最初の問題は最上階の雨漏りでした。管理会社から連絡を受けたゼネコンは施工不良を認め、すぐに改修工事を開始します。しかし築5年ちょっとで雨漏りが起こるものなのか?と不安視する住民もいましたが、ゼネコンは「雨漏りは起こりうる。そのために10年の保障を設けている」と、なんら問題ないというスタンスでした。

しかし改修工事中に台風が直撃し、複数の住戸のサッシから水が噴き出すトラブルが発生しました。これは後に私もサッシメーカーの報告書を読んだのですが、サッシ性能を上回る水圧が発生したため起こった現象でしたが、素っ気ないゼネコンの対応を不安視していた一部の住民にとって、このマンションは欠陥があるのでは?と思わせることになりました。そこで理事会は理事の知り合いの建築士に依頼して、マンションを検査してもらうことにします。この検査により、多数の問題が発覚して大きな騒動に発展しましていきます。

発覚した問題を羅列してみます。これ以外にも沢山あったのですが、私は途中から参加したので全ては知りません。また古い話なので、私の記憶から抜け落ちているものもあります。

  1. エントランス等、共用部施設のあちこちが竣工図と寸法が違う
  2. 専有部も竣工図と寸法が違う箇所が多い
  3. 集会室の照明やコンセントの位置が竣工図と違う
  4. 共用施設の内装仕上げ材の品番が、竣工書類と違う

 

 

新築マンションに欠陥があれば、それは売主の責任になります。しかしここのデベロッパーは、ゼネコンが瑕疵を認めないため改修工事を拒否しました。デベロッパーからしても、ゼネコンが費用を負担しなければ自らが全額負担するとなるため、拒否せざるを得なくなってしまったのです。そのため話し合いは膠着状態になり、即時改修を求める住民に対してゼネコンが一部を改修するものの、その他はのらりくらりと返答することが3年近く続きました。

痺れを切らした管理組合側は弁護士に相談することも検討し始めた頃、ゼネコンからデベロッパーに連絡があったそうです。ご要望があった内容全てについて、ゼネコンの費用負担で改修工事を行うというものでした。これにはデベロッパー側も驚き、なぜ方針を180度変えたのかと尋ねると、ゼネコンの担当者も突然上司から言われたのでなぜかはわからないと言ったそうです。しかしゼネコンが態度を軟化させたことに安堵し、このことはすぐに管理組合の理事会にも伝えられました。理事の皆さんは大喜びだったそうです。

改修工事の計画を立てるため、ゼネコンと理事会の話し合いが始まりました。ゼネコンは共用部の改修工事の計画を立てて、専有部の改修はそれぞれ住民の希望日を募りました。部屋によっては改修工事が2週間ほどかかるので、ホテルを手配しなくてはなりません。こうして改修工事は多くの住民の日程を調整する必要が出てきました。

さらに一部の住民がホテルのグレードに不満を言い出しました。ビジネスホテルでは自宅のようにくつろげないから、もっと広い部屋にして欲しいという意見が出始め、日程調整が進まなくなりました。理事会もゼネコンの担当も管理会社も頭を抱えることになり、話し合いが空転し始めました。これではいつまで経っても着工できないという焦りが募り、ホテルのグレードなどをゼネコンに強気に言えない理事会を非難する住民も出始めました。

そんなある日、管理組合や管理会社、デベロッパーに1枚のファックスが届きます。送信時間は19:00ちょうどで、ゼネコンから一斉に送信されたものでした。それはゼネコンが会社更生法申請し適用が決まったというもので、要するに「倒産しました」というお知らせでした。そのためゼネコンによる改修が出来なくなり、管理組合は大混乱になります。

デベロッパーの担当者はゼネコン担当者に何度も電話してようやく捕まえると事情を聞き出したのですが、夕方に全社員が集められて社長から説明があったそうで、社員にとっても寝耳に水だったと言います。そもそもゼネコンが急に改修しますと言い出したのは、倒産するつまりだったからでは?という疑念の声が出ました。おそらくその通りなのですが、ゼネコンがこれを認めるはずもありません。デベロッパーはゼネコンが倒産したため改修ができないと連絡があり、管理組合は怒りの声が渦巻きました。

 

このトラブルは、引き渡しを受けたマンションが雨漏りを起こすなど、あるべき性能を有してなかったという瑕疵担保責任の問題と、竣工図と実際のマンションが異なるため契約通りのマンションが引き渡されなかったという2つの問題が原因です。

そのためこの問題は売買契約を結んだデベロッパーと話し合うべき問題です。ゼネコンはマンション住民とも管理組合とも契約関係にはないので、倒産しようが夜逃げしようが管理組合にとってはあまり関係ないのです。

改修工事にしても、ゼネコンが改修を決断したことを受けてデベロッパーが改修することを管理組合と約束したので、管理組合は改修工事を行うようにデベロッパーに求めれば良いのです。ゼネコンの倒産はデベロッパー側の問題であり、管理組合にはなんら関係のない話なのです。ゼネコンの倒産により新たな業者選定の必要があるため、予定より改修工事が遅れるのは仕方ありませんが、ゼネコンの倒産により約束した改修工事がなくなることはありません。デベロッパーが改修工事を行うことを承諾する内容は理事会の議事録にも残っていました。そのためデベロッパーには粛々と改修工事を行うことを求めていくことになりました。

このゼネコンは、予め倒産することをわかっていたため、改修工事を引き受けたのか?という疑念がありました。ゼネコンの担当者も倒産を知らなかったため、担当者にこのような意思はなかったと思いますが、当然ながら会社更生法の準備をしていたのですから、その上司は倒産することを知っていたでしょう。会社更生法適用後は債務がなくなるので、改修を約束していてもやらなくてよくなります。面倒な交渉が続いているので、どうせやらなくていいからとりあえず引き受けておこうとなった経緯は容易に想像がつきます。真相は不明ですが、改修費用を全額負担することになったデベロッパーの怒りは、かなりのものでした。

管理組合がデベロッパーに要求した改修項目は多岐に渡り、多くのことを同時に求めました。最初に発生した漏水などは明らかに改修を要するものですが、中には過剰な要求に思えるものもありました。例えば上記の「発生した問題の数々」の「②専有部も竣工図と寸法が違う箇所が多い」は、竣工図が施工図を元にしていたため起こった問題です。玄関からリビングに通じる廊下の幅は、竣工図によると783mmになっています。それが実測したら781mmだから改修しろと要求していました。施工図のため厳密に寸法が割り振ってあり、その施工誤差を認めないという強い姿勢ですが、専有面積にも使い勝手にも影響しない部分で部屋全体を作り直さなくてはならなくなります。

このような要求は過剰ですし、他にもかなり厳しい要求がありました。これらの要求を話し合いというよりも一方的に強く求めたため、ゼネコンはのらりくらりとした姿勢になっていったようです。そのため本当に必要な工事まで遅れる原因になっており、何でもかんでもひとまとめにして要求したのがゼネコンの態度の硬化に繋がりました。どうしても改修して欲しい部分に絞って交渉すれば、違った展開になったと思います。

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