【切っても切れないマンションと保険の話し その19】マンション専有部分の工事は何をしてもいいのか?

マンションの建物・敷地および附属施設などのいわゆる「共用部分等の維持管理」は「管理組合」が行います。ですから、エレベーターのメンテナンスや外廊下、階段、外壁や屋上部分の点検・修繕(大規模修繕工事)などは、管理組合が対応して進めます。一方で、専有部分である住戸内については、その住戸の区分所有者が維持管理を行います。

では、この専有部分とは、どんな範囲なのでしょう。
国土交通省がガイドラインとしている標準管理規約があります。(管理組合ごとに管理規約の内容は異なる可能性がありますので、あくまでも参考としてください)

標準管理規約・第7条
1号:天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
2号:玄関扉は、錠及び内部塗装分を専有部分とする。
3号:窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。

このため、部屋の壁紙は自由に貼りかえられますし、フローリングや床も張り替えることができます。但し、床のリフォームには「遮音等級を維持すること」など、下階への音の伝わり方に対する規則が定められていることが多いです。

玄関扉は、鍵と錠は原則変更できますが、扉は共用部分ですので交換することはできません。また、玄関まわりやバルコニーの床や外壁も共用部分ですので、塗装やリフォームをすることはできません。窓枠や窓ガラスも共用部分です。交換等はできません。窓ガラスの内側にシールを貼るなどは可能です。

その他わかりづらい点では、天井裏や床下の空間部分は専有部分、上下及び界壁部のコンクリート躯体部分は共用部分となります。
ここが、ポイントなんですが、壁クロスの貼り替えは可能ですが、コンクリート躯体へ釘を打ったり、穴をあける行為はできません。(界壁以外にも住戸内の同様のコンクリート躯体部分含む)

また、床と床スラブの間の空間は専有部分となりますから、そこに設置してある給排水管路や各種配線等の維持管理責任は原則、その住戸の区分所有者となります。(実際に維持管理することは難しいため、管理組合がマンション全体の床下給排水管路のメンテナンスや更新、更生工事を行うケースもあります。)

このように、専有部分と共用部分の区分けや、その近接部分の維持管理及びリフォーム工事などは、実は非常にセンシティブな問題なのです。

 

 

そこで、標準管理規約では、次のように定めています。

その専有部分で修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替えを行おうとするときは、あらかじめ管理組合の理事長にその旨を申請し、書面による承認を受けなければなりません。

一見、非常に厳しいルールのように読み取れますが、各区分所有者が自由にリフォームした場合、構造耐力上主要な部分であるコンクリート躯体部分を損傷させ、マンションが耐震強度不足となってしまったり、防水性能を満たさなくなったりと、1住戸の損傷がマンション全体の建物バランスを崩してしまうリスクがあるからです。

管理組合が今専有部分リフォームについて、きちんとルール化していくことも重要です。リフォーム工事の前に理事長の承認を得るということだけではなく、次のような規則を追加して、区分所有者や施工業者に遵守させることで、未然にトラブルや迷惑行為を防止・抑制することができるのかもしれません。

・スケルトン工事など大がかりな工事の場合は、管理組合は申請者である区分所有者の費用負担により、専門家による工事内容チェックを依頼することができる
・コンクリート躯体を損傷する工事は禁止する
・間取りの大きな変更は禁止する。原則元の間取りを遵守して、下階寝室上に水回り設備を移動させるなどの工事は騒音その他の迷惑行為となるため禁止する
・近隣住民へ施工業者から事前説明や挨拶周りをする
・掲示版へ工事内容や問い合わせ先を記載した貼り紙を掲示する
・その他、作業時間や作業車両の駐車場、養生規則

等々

私のマンションでは、ここまで詳細な規則はなく、区分所有者や施工業者にお任せという状態です。
今後は管理組合に規則追加の提案をしてみたいと思います。

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