一般的にタワーマンションの大規模修繕は難しいと言われています。その理由はどこにあるのか、実際はどのような工事が行われるのかなど、タワーマンションにおける大規模修繕についてお話しをします。
タワーマンションの大規模修繕工事の難易度が高いと言われるのは、主に次の理由からです。
工事を行うのが難しい
大規模修繕工事を行うことができるのは、新築時に建物を建設した施工業者(ゼネコン及びゼネコン子会社)など一部の施工業者に集中するケースが多いですが、タワーマンションの工事例が少なく、工法やノウハウが確立されていないのがその理由です。特に高層階では、風対策をはじめ特殊で高度な作業ノウハウ必要とされるなど、タワーマンションならではの構造上の問題があります。
区分所有者が多く、合意形成が難しい
タワーマンションは戸数規模が大きく、1棟100戸以上、場合によっては1,000戸以上を数えることもあります。そのため、往々にして管理組合による区分所有者の合意形成に困難が伴います。
また、高層階と低層階では、区分所有者の世帯収入や価値観にギャップがあることも障害となりやすいです。高層階ほど雨風の影響などで外壁などに損傷を受けやすく、修繕や改修に対する要求の度合が異なることも問題になりがちです。
工事費が割高になる
タワーマンションの場合、大規模修繕工事の工事費が一般のマンションより高くなる場合があります。そのため、修繕積立金が不足するという事態も起きやすいのです。新築時に建物を建設した施工業者(ゼネコン)の子会社が工事を請け負うケースが多く、一般的に修繕費や改修費が割高になるという側面もあります。
なお、タワーマンションの大規模修繕工事は工期が長期に及び、2、3年かかるということもめずらしくありません。
それでは、実際にはどのように工事をするのでしょうか。
タワーマンションの大規模修繕工事では、足場は通常の組み立て式ではなく、屋上から吊り下げる「ゴンドラ」を使用する場合や、柱を組み立てて設置する「移動昇降式足場」を使用することが多くなります。
そのため、雨、風などの気象条件によって、工事の進捗度が大きく影響を受けるほか、風対策や飛散、落下防止対策も必須となります。また、デザイン性が高く外観フォルムが独特なタワーマンションは、大規模修繕工事もそれに合わせた複雑なものになります。
高層階と中層階、低層階では、足場の種類、工事の方法などを変えなければいけないこともあります。ラウンジや屋上デッキといった共用施設についても別途、改修が必要になる場合があります。そのため、独自性をセールスポイントにしたタワーマンションでは、構造、設備、施設に応じて個別に工事を行うことになります。
タワーマンションを20階以上の超高層マンションと定義すると、その総竣工戸数は、平成12年~平成14年までは、7,743戸~8,338戸で推移しています。その後、平成15年には一気に14,984戸に上昇し、ピークは平成19年の23,868戸となっています(国土交通省「平成27年度 住宅経済関連データ」不動産経済研究所調べ)。
竣工戸数が目立って増加した時期は、平成15年~平成22年にかけての間です。その後は徐々に落ち着き、平成27年はまた増加に転じています。そのため大規模修繕工事の周期を10-12年と考えると、第一次の大規模修繕工事ブームは平成27年頃からはじり、今後平成37年頃まで続くことになると考えられます。
タワーマンションの大規模修繕工事には、上記のような特殊事情が存在します。しかし、建物の寿命を伸ばすには、大規模修繕工事を施すことは避けられません。この先、タワーマンションの大規模修繕工事の事例が増えていくことで、工法や工事ノウハウ、管理組合による計画の考え方が慣熟され、効率化していくことも予測されます。専門のコンサルタントによるサポートも受けながら、しっかりとした準備を行って行きましょう。