長いデフレの時代を経て、サラリーマンの給与アップは未だ進まないものの、諸物価が上昇し、日経平均は史上最高値を更新する勢いとなっています。
管理会社はデフレ時代には我が世の春を謳歌したものです。団塊の世代が大量に現役をリタイアし、その彼らを、会社の指示に忠実かつ真面目な勤務が期待できるフロントマンや管理員として、賞与や定期昇給がない嘱託社員やパートタイマーとして容易に採用できていたのです。
管理物件の増大に伴い当時は下請け業者への発注単価を切り下げることも容易でした。発注単価の切り下げで当初予定していた利益率は受託件数の増加と共に思いの外向上したものです。
ところが今では管理会社の経営環境は一変し、団塊の世代は後期高齢者となり労働市場から去ってしまいました。去っていった職員の補充すらままならなない事態となっているのです。社員募集の時給単価を少々アップしたところで、もともと労働市場にターゲット層の人材が不足しているため効果はさほどありません。
かつては定年延長も75歳までが上限で、後期高齢者は採用しないとしていた管理会社でも、やむを得ず後期高齢者の定年延長が増えているのです。管理組合も、管理員の高齢化で清掃の質が低下したり、依頼したことを失念されたり、突然の病欠などが増えた・・・といった不満を抱えながらこれを受忍しています。
毎年上昇することが常となった最低賃金。時間給が最低賃金割れとなる恐れのある管理員や清掃員の雇用条件は毎年改定することとなります。その為の原資は管理組合からの委託費の増額です。毎年最低賃金の上昇を理由に現業員やフロントスタッフの人件費相当の委託料増額交渉が理事会の中で時間を割いて行われています。管理組合の緊急課題や長期的な課題が山積みの中、なんと不毛な議論かと思います。
フロントマンの必須資格である管理業務主任者の毎年の合格者は資格創設当初の33,742人から、ここ数年は3,000人を切りそうな勢いで低下しています。30組合につき1人の管理業務主任者を在籍させる義務(マンション管理適正化法)をクリアするため、とうに退職した資格取得者まで在籍しているように装っている管理会社を幾つも承知しています。(国土交通省は届け出られた管理業務主任者と管理会社との雇用実態まではチェックしないのです。管理業務主任者に対して主任者証と共に会社が発行する健康保険証を提示するよう要請してみればすぐに判別はつくのですが・・・)
管理会社としてもこれらを打開するための方策を真剣に模索し始めています。