授業のポイント
- 多くの管理会社が優先するのは「自社の利益」
- 大規模修繕工事を勧める「巧みな言葉」に注意
- 大規模修繕工事に関しては管理組合と管理会社は利害が合わない
マンション管理業界一の選球眼を持つ男、浜田悦斗(はまだえつと)です。
分譲マンションのオーナーであっても、「大規模修繕工事については、専門じゃないからさっぱりわからない。敬遠や。」という方がほとんどではないでしょうか。しかしながら、「毎月払っている管理費や修繕積立金は値上げしてほしくない」という気持ちは皆さん同じでしょう。
建物は年数と年数とともに少しずつ劣化していくため、いつか必ず誰かに修繕工事をお願いしなければなりません。その発注先は管理会社であってもいのですが、その際に注意しなくてはいけない点があります。
そもそも皆さんは、「マンション管理会社は、管理組合の大切な資産である修繕積立金を大切に守ってくれている」と思っていませんか?
私の考えはこうです。
管理会社の多くは皆さんの資産ではなく、管理会社自らの利益を優先している。
なぜこのようなことが言えるのか__。それは、不要・不急な工事提案と割高な修繕見積りを迫る管理会社が非常に多いからです。
管理会社は委託費の中で定期的に建物の点検を行っていますが、これは法律に基づくものではなく自主点検です。この際の報告書は当然管理会社が書いて理事会へ報告されますが、実は、この「伝え方」に問題があります。
仮に屋上を点検したとして、比較的軽い劣化が数カ所あったとしましょう。本来は部分補修や経過観察でも十分なケースです。ところが、管理会社が自社の利益を優先すれば、劣化部分をアップにしてカメラにおさめ、
「これを見てください。そろそろ全体をリニューアルする時期です。大規模修繕工事を検討しませんか?」
とやってくるわけです。
建物管理の素人である理事会役員が「これはマズい」と思うのは当然のことでしょう。(ストライクワン!)
さらには、管理会社が自社で作成している「長期修繕計画」もマユツバものです。そもそも長期修繕計画は、計画通りの時期に、計画通りの金額で、大規模修繕工事を実施するためのプランではありません。それにもかかわらず、通常総会を控えたタイミングで任期終了が迫っている理事会に対して管理会社が投げる言葉は、
「長期修繕計画に●●工事が予定されていますから、総会の予算案に計上しておきましょう」
そして、新しい理事会役員には、
「前期からの引き継ぎで、長期修繕計画に予定されている●●工事を検討しましょう。予算がとれています」
と伝えるので、すんなり通ります。(ストライク、ツぅぅうう!)
このように、不急・不要・割高な工事が、管理会社の言動がきっかけとなり、皆さんのマンションに持ち込まれてしまうのです。管理会社のすべてに対して不信感を持つことはあってはなりませんが、こと修繕工事に関しては、「お金を持っている素人集団の管理組合」と「お金を稼ぎたいプロ集団の管理会社」とでは利害関係が合わないことを理解し対策を打ちましょう。
マンション管理士事務所等が管理会社の示した工事案が妥当かを点検するサービスを扱っていますので、選択肢のひとつにあっていいでしょう。ストライクを3つとられる前に、正確な選球眼で正しい判断を導きましょう!