【相談内容】バルコニー(共有部分)に設置された給湯器の交換は誰の負担か?
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●マンション販売時の契約内容をチェック
●民法上の「主物」と「従物」の考え
●標準管理規約の「共用部分”内”と”外”」の解釈
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【相談者】レオシティ705号 理事(浪人生)S原さん
【回答者】マンション管理士 テミス先生
~今回も不合格だった、浪人生のS原さんが『マンション管理組合の学校』に訪れた(2度目)~
「テミス先生っ!」
「あら、先日の浪人生。どうしたの?(ウチはアンタの学習塾じゃないんだけど)」
「・・・ウチの給湯器が壊れました。」
「はい?(訳が分かんない)」
「ですから、我が家の給湯器が壊れたんです。あ、テミス先生!今日は芋焼酎を持ってきましたよ!」
「それで?(芋焼酎っ♪♪♪)」
「我が家の給湯器はバルコニーにあって、共用部分である壁に設置されています。これを管理規約に照らすと、我が家の給湯器は共用部分ではないかと思うんです。あ、ウチのマンションの規約は標準管理規約とほぼ同じです。」
「さすが浪人生。細かいところも知っているのね。で、どの条項からそうだと思ったの?」
「えっと、第7条第3項です。」
「アンタ! また面倒な条項を持ち出してきたわね。」
「ええっ!? いや、標準管理規約の第7条第3項では『専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。』となっているので、共用部分であるバルコニーの壁面に設置されている我が家の給湯器は共用部分ではないのか?
という疑問です。」
「その条項って、私としては『問題あり』なのよね。『ツッコミどころアリ!』という感じなの。」
!?(さすがテミス先生♪ やばい、惚れそうだ・・・)
「・・・アンタ、私に惚れるなよ!」
!!!!!(◎o◎;)
「ええっと(ニヤリ)、その条項のことは一旦置いておいて。給湯器って、アンタの所有物だよっていう説明が、販売時の重要事項説明とかであったでしょ?」
「・・・覚えてないっス。」
「まぁ、それは仕方ないわよね。でも、売買契約に際して、給湯器はアンタの所有物だよ、という内容が、おそらくは交わされていると思う。そうだとすると、管理規約がどうのではなく、最初から給湯器はアンタの所有物になっているから、その場合は、給湯器の交換はアンタの負担でしなくちゃイケないよね?
所有者なんだから。」
「あ、そうか! 民法にいう主物と従物ですね!?」
「(ちっ。面倒くせーな浪人生。ここぞとばかりに法律用語出すんぢゃねーよ。)そうそう。専有部分が「主物」で給湯器が「従物」。従物は、主物からは独立した個別の物でありながら、主物の機能や目的、性能等に必要不可欠である物。そして、民法の規定では、従物(給湯器)の処分は主物(専有部分)に従う、となっている。この点からも給湯器はアンタの所有物だということが分かるよね。」
「なるほど、納得です。でも、でもですね、テミス先生!」
「(まだなんかあるのかよ)何?」
「今までの話を前提としても、標準管理規約の第7条第3項はどう考えたら良いのですか?」
「(だからさぁ、ウチはオマエの学習塾じゃねーっての)標準管理規約の第7条第3項は、私が考えるに、例えば横引排水管を想定していると思うの。
横引排水管は、その専有部分からの排水のみが流れる(なので専有部分)んだけど、横引排管は、その先で、その他の住戸(他の専有部分)から排水された汚水もまとめて流れる竪管(縦管)に繋がるのね。この竪管(縦管)は、みんなが使うので共用部分。
つまり第7条第3項は、共用部分に繋がるまでの管(横管)は専有部分ですよ、ということを言おうとしている。」
「はい」
「この例では特に問題にはならないんだけど、例えば、アンタが言ってた給湯器。それにこの条項を適用すると微妙なことが起きる、と私は考えている。」
「それは一体?」
「アンタも言ってたけど、給湯器は、共用部分であるバルコニーの壁に設置されているのよね?」
「その通りです」
「標準管理規約第7条第3項は『・・・共用部分“内”にある・・・』という表記。ここでいう“内”の解釈が問題となるのよねぇ。
共用部分の壁面は、「共用部分の“内”」か?
文字通り解釈(文理解釈)すれば、壁面は“内”ではなく“外”だとなるね。そうだとすると、共用部分の壁面に設置された物(給湯器)は、それがその専有部分の専用となっていれば、共用部分“内”には存在しないので、その専有部分と考えることが妥当でしょう。」
「なるほど!!でも、そうだとすると、給湯器の場合、バルコニーの壁側から室内に通ずる配管や配線などは、共用部分(壁)を通り抜けますよね。つまり共用部分の“内”です。第7条第3項の規定に基づけば、せいぜい10~20cm程度かもしれませんが共用部分の“内”を通る配管や配線は共用部分となりますよねっ!?(どうだ、テミス!)」
「(こいつ、マジでうぜぇ)そう。その考え方は間違っていないと思う。それこそが、私が冒頭に言った『アンタ! また面倒な条項を持ち出してきたわね。』に通ずるの。」
「え!?」
「標準管理規約は良くできているけれど、絶対ではないということね。準拠するにしても、参考にするにしても、その趣旨をちゃんと考えなければイケない、ということ。そして、私の考えでは、この条項は見直しの余地がある、ということ。(さーて、芋焼酎お湯割りでいっちゃいましょう♪)」
「深い・・(またマンション管理士試験落ちそう・・・しょっちゅう試験やってないし・・・焼酎だけに)」
【ご了承願います】
この記事は「できるだけ解り易く」という観点で作成しています。正確性には留意していますが、厳密性を欠いている表現が含まれている場合があることをご了承願います。