授業のポイント
- 大規模修繕工事には「責任施工方式」と「設計監理方式」」がある
- 設計監理方式に潜む落とし穴
- セカンドオピニオン、という選択肢もある
マンション問題にメスを入れる、白井巨人(しろいきよと)です。
大規模修繕工事を施工業者に依頼するには、大きく分けて2つの方法があります。ひとつは「責任施工方式」、もうひとつは「設計監理方式」。一昔前と違い、設計監理方式を採用するマンションが増えましたが、そこにはとんだ ”落とし穴” があるので注意が必要です。
それでは、それぞれの方式について詳しく説明していきましょう。
責任施工方式
マンション管理組合が施工業者への工事の一切を発注する方式。施工業者との信頼関係のみに依拠した発注形態。
【メリット】
- 工事に携わる関係者が、発注者(管理組合)と受注者(施工業者)の2者しかいないため、非常にシンプル。
- 相互の信頼関係があれば、建物の調査や修繕工事の設計、施工業者の選定作業がなく、比較的短期間で着工まで進めることができる。
- 工事金額が安価であれば、設計監理方式より総工費が安く済む。
【デメリット】
- 工事価格に競争原理が働かない。
- 施工業者の工事品質をチェックする機能がない。
「なぜ、その施工会社にその金額で発注するのか」の根拠説明が難しいため、住人の合意が得られにくいです。総会において多数決で可決されても、モヤモヤの残りやすい発注方式といえます。
設計監理方式
マンション管理組合と施工会社との間に、設計監理者(設計事務所、一級建築士事務所、NPO法人、管理会社の設計監理部門)を入れて、技術支援を受ける方式です。
【メリット】
- 技術者として、劣化診断や修繕設計、工事中の監理(チェック)を行ってくれる。
- 施工業者の選定を支援するため、競争入札の原理が働いて工事費が安くなる可能性がある。
【デメリット】
- 設計監理者と施工業者による癒着(バックマージン・便利供与)があると、総工事費が安くならない。
残念ながらマンション修繕業界では、設計監理者と施工業者のつながりが非常に強いため、「Aという設計監理者を使えばこの3社から」「Bという設計監理者をつかえばこの3社から」選定される、といった、談合状態に陥る可能性が非常に高い。その事実を国土交通省も警告しています。
★国土交通省のサイト→https://www.mlit.go.jp/report/press/house06_hh_000154.html
特に設計監理費が安いところは、その穴埋めで施工業者からマージンを受ける可能性が高く、その額は工事費の10%~20%といわれてるので注意が必要です。
もうお気づきかと思いますが、
そのマージンは工事費にのせられるため、最終的にツケを払わされるのは発注者である管理組合
となります。
修繕コンサルタント(セカンドオピオン)方式
学校からの提案として、このようなサービスがあることをお伝えしたいと思います。これは、マンション管理組合の立場にたった修繕コンサルタントを、施工業者や設計監理者とは別に採用する方式です。設計監理者と施工業者の癒着を防ぐために、管理組合側に立ったコンサルタントを入れるといった発想です。理事会や総会での説明代行など、住民間の合意形成に対する支援も受けることができます。当行の支援会社である「メルすみごこち事務所」にそのサービスがあります。
気づいたらステージ4、とならないためにも、情報武装をして、大規模修繕工事という一大イベントを迎えて下さい。