統括防火管理者制度をご存じでしょうか。そのことを説明するには、防火管理者とは何かを説明しなくてはなりません。
防火管理者とは、火災による被害を防止するために一定の条件下にある建物等に選任される防火管理のプロのことで、れっきとした国家資格です。この防火管理者を選任すべき建物の中には、様々な用途のテナントが入居するような複合用途物件(1階に飲食店や会社が入居している、商業地にある居住用のマンションなど)が数多くあります。このような建物には、建物オーナーや店の責任者など、防火管理の責任を担うべき方が複数おり、同時に、防火管理者も複数いるわけです。
複合用途物件は人の出入りが多いため、ひとたび火災が発生すると大惨事を招く危険があります。実際に悲惨な事故も多く発生していることから、防火管理をより強化するために、防火管理上必要な業務を統括する統括防火管理者を選任し、建物全体についての消防計画を定めるようにしました。
___前置きが、長くなりました。(ホリエモンが、前置きが長い人は仕事ができないと言ってました)
統括防火管理者の仕事をお引き受けした千葉県西部の賃貸マンションでの話です。
マンションオーナーから正式にご契約いただき、いざ統括防火管理者の選任届を消防署へ提出しようと準備を進めるうちに、1階にコンビニエンスストア、2階に設計事務所がが入っており、当社が統括防火管理者へ選任されることの承諾(同意)が必要となりました。
そこで私からこの2者に対し、直接テナントを訪問し、勤務するスタッフに対して同意してほしい旨のお願いと同意書の書式、テナント責任者向けのご挨拶文を渡しましたが、1週間、2週間、、、なかなか承諾書が戻ってきません。
そこで、それぞれのテナントに対し、次の手を打ちました。
コンビニエンスストア:フランチャイズ本部の総務部へ直接交渉
電話番号をインターネットで調べ、本部のフランチャイズ担当者に依頼し、全体の消防計画と承諾書用紙に返信用封筒をつけて送付しました。さすがに大手企業です、3日で承諾書を戻していただけました。
そもそもビルやマンションに同居するコンビニエンスストアは高い確率で防火管理者の選任が必要であり、大手コンビニ会社であれば数千~万単位で防火管理者を立てる必要があり、この手の業務はお手の物なのでしょうね。
設計事務所:建物オーナーからの親書による依頼
そもそも、多くのテナントは消防法への理解が足りない上に、新たな統括防火管理者である当社のことも全く知りませんので、こちらからの依頼にテキパキ動いてくれないことが多いです。そこで建物オーナー(つまりテナントから見えれば部屋の大家さん)の名前で手紙を作成し、オーナーからの依頼という体でお願いするのです。大家さんからのお願いであれば、多くのテナントは丁寧に対応してくれます。更に時間はかかりましたが承諾書を返信してくれました。
これで消防署へ統括防火管理者選任届を提出するための資料が揃いました。
どうしてもテナントが統括防火管理者を承諾してくれない場合は?
確率は高くないですが、どうしてもテナントが統括防火管理者を承諾してくれない場合もあります。特に外国人が経営する店舗や事務所では、法律に対する知識や意識がどうしても希薄になりがちです。言葉も壁もあります。
そこで次の手です。
消防署からテナントへ一報を入れていただく
つまり「言いつける」です。(言葉のチョイスが正しいかはさておきまして…)
やはり消防署の影響力は絶大です。特に外国の方からすると、消防からは警察のそれに近いプレッシャーを感じるのではないでしょうか。これでほぼ100%のテナントが協力してくれます。「言いつける」のはあまり気持ちの良いものではありませんが、法令遵守のためには仕方がありません。
なお、消防署の方々はとても協力的な方が多いうえに、こちらが防火管理に対して真剣に向き合っていることが伝わることで、なおのこと力を貸してくれているように感じます。
なお、消防署の力を借りても、どうしてもテナントから承諾書がもらえない場合はどうするか…。
この場合は最終手段に、、、企業秘密です、ごめんなさい!