分譲マンションの大規模修繕工事はどんどん割高になってゆく
~様々な要望は本当に管理組合の為になるのか~
分譲マンションの外装リニューアル工事を手掛ける工事会社の社長からお聞きした話です。
「うちは管理組合に対してプレゼンテーションにまで持ち込めれば、相当な確率で受注する自信があります。価格は必ずしも最安値である必要は無いのです。」
ちょっと信じられないと思いながら、その秘密をお聞きしました。
①大規模修繕工事のサイトを立ち上げ、組合員の皆様がいつでも工事関係のお知らせを確認いただけます。洗濯物の干せない日や騒音工事など、詳細な情報をお届けいたします。
②WEBカメラで工事の進捗を外部に居住の組合員の皆様にもご確認いただけます。
③修繕委員の皆様が容易に検査に立ち会っていただけるよう、低層部分においても単管足場(パイプを組み立てる簡易足場)に代えてビティー足場(本格的な鋼製の組み立て式足場)を採用します。
④足場周り(マンションの外周)は毎朝清掃をいたします。
⑤定例理事会(定例修繕委員会)に現場代理人が出席して工事報告を行います。
これ以上は企業秘密のようですから、あまり詳しくは延べませんが、重要なことは、これら管理組合には評価される対応は全て工事原価に跳ね返ってくるという事実です。
お話を伺った企業は、昨今の労務者不足を補うためタイから技能研修生を受け入れ、寮を完備して、正規の就労ビザを持つ社員を確保しているそうです。
__あるマンションの大規模修繕工事の工事説明会での出来事です。
住民「プレイロットの脇の共用トイレを工事現場の方が利用するのは困ります。労務者と鉢合わせすれば子供が怖がりますから。」
業者「修繕委員会からの工事見積もり条件には工事用に共用トイレを使用するとして、仮設トイレは不要と聞いておりましたが・・・」
住民「まさか外国人労働者が、うちのマンションで工事に従事することは無いでしょうね。」
業者「外国人研修生は当社の研修を修了した社員ですし、適法な手続きを経て就労しておりますので・・・・」
「お子さんが労務者の使うトイレは嫌だと言えば、エレベーターで自宅に戻れば良いではないですか。」
「コンビニでも居酒屋でも広く外国籍の労働力を受け入れざるを得ない実態をご存知でしょう。建設業界の労務者不足にも御理解を示してください。」
などといった本音を業者は言いません。
「承知いたしました。ご希望にはすべて対応させて頂きますが、いささかコストが異なってまいります。」
分譲マンションの大規模修繕工事の価格は、賃貸マンションのそれと比べると大幅に上昇するそうです。
プレゼンテーションで管理組合の要求が高まれば、どんどん工事価格は高くなるのです。
様々な要望は本当に管理組合のための要望なのでしょうか。今一度ご確認を。
工事は計上できない経費を削ることで、大幅な削減が可能です。 経験上では、集会室の壁紙張替えをするため、現場事務所での利用。 すぐ前にあるトイレの利用等です。 喫煙所は管理規約上最もハードルが高いですが、地下通路が吹き抜けのため、そこにしました。 外部からは全く見えず、スペースも広げられたので、職人の数が多くなる時期も対応できました。 資材置き場も公開空地を利用して確保できたので、事実上経費は要りませんでした。 駐車場も消防活動余地を確保しながら、空いている立体駐車場も使用し、外部に確保することなく済みました。 とにかく、工事が始まればどうなるを想定し対応すれば、大きなもめごとになりません。 ハードルを上げるほど工事費高騰につながりますから、注意が必要です。
現場がやりやすい環境を管理組合が提供することで無駄なコストをつぶし、作業環境の向上と作業効率をアップすることに、発注する側も理解を示さないといけませんね。ご経験に基づく現場の声をよせていただき感謝します。管理組合がこれら現場のの忌憚ない要望やアイデアに耳を傾けるのか、組合員受けする耳障りの良い提案を評価するのかでコストや品質に大きな差が出ることを知ってほしいと思います。