【マラソンと日本酒をこよなく愛する弁護士のマンション管理コラム】マンションにおけるペット飼育問題④(最終回)

今回も引き続きマンションにおけるペット飼育の禁止について考えてみましょう。ペット編の最終回です。
<前回のコラムはこちら

義務違反者に対して採りうる措置1~差止請求、専有部分への立入請求

共同利益違反等の条文上の要件該当性が認められれば、行為の差止め請求は、認められることになります。
それでは、差止請求から一歩進んで、管理組合は、違反区分所有者によるペット飼育禁止義務の履行を確認するために、専有部分への立入りを請求することができるのでしょうか。

専有部分は、外部からは観察することができません。仮に、ペット飼育の差止めを命じる判決が下されたとしても、当該義務違反の状態にある区分所有者が、ペットの飼育をやめたかを確認することは容易ではありません。そのため、管理組合としては、ペット飼育禁止義務の履行を確認するために、専有部分への立ち入りを請求することがあります。

しかし、裁判例は、このような専有部分への立入請求を否定しています(東京地判平成19年10月9日)。すなわち、裁判所は、「原告の請求は,被告に対し,原告が被告の所有物である本件建物に特段の期限の定めなく無条件に立ち入ることを管理組合の総会決議に基づいて強制しようとするものであり,被告の私生活上の自由を強度に侵害するものといわざるをえないからである。他方,本件建物から猫を退去させるとともに,消臭のための措置を執ることにより,被告による共同利益違反行為は当面停止,除去されることになるのであり,しかも,万一被告がその後本件建物内において新たに動物を飼育する行為に出たとしても,それは本件建物内において動物を飼育してはならないという不作為命令に違反する行為であるから,いずれにせよ強制執行により排除することが可能であると考えられるのである。これらの事情を考慮すると,被告に対し,動物の退去等の措置が履行されたことを確認するために,本件建物内への原告の立入りを受忍することを求める請求は,被告による共同利益違反行為を停止,除去ないし予防するために必要かつ十分な範囲を超えるものとして,許されないものと解するのが相当である。」であるとして、立入行為の権利侵害性が甚だしいという点と、立入りの必要性が認められないという2点により、管理組合の請求を棄却しています。

したがって、ペットの退去に関する履行の確保については、別の手段を検討しなければなりません。たとえば、禁止請求にも従わなかった場合には次の手段として競売請求を行うことや、ペット飼育禁止の請求ではなく、ペットの退去を求める請求を行い、強制執行において、執行官にその義務を履行してもらう等の方法が考えられます。

 

義務違反者に対して採りうる措置2~損害賠償請求

ペット飼育行為により、その他の居住者個人との関係で、不法行為が成立するか否かも問題になります。
この点、猫への餌やり行為等が人格権侵害にあたると判断した東京地立川支判平成22年5月13日が参考になります。この裁判例によると、野良猫に対する餌付けを継続したこと、一部の猫に対しては住みかまで提供し飼育の域に達していること、猫のトイレへの配慮が充分でなかったこと等が理由とされ、居住者個人との関係でも不法行為を構成するものとされました。

損害額のうち、慰謝料額は、それぞれ2万円から13万円までの範囲で認容されました。この算定要素としては、被告専有部分との距離、原告の居住歴、建物所有の有無が考慮されています。
なお、「原告管理組合及び個人原告らの再三にわたる飼育及び餌やりの中止の申入れを拒否して,猫の飼育及び餌やりを継続し,その結果,原告管理組合は、・・・(中略)・・・弁護士に委任して本訴を提起せざるを得なかった」として、管理組合に対する不法行為の成立も認めています。

なお、こうした場合、不法行為により訴訟提起を余儀なくされたとして、弁護士費用相当額を別途請求することができます。

マンション管理に関する事件は既に10年近く、管理費滞納の問題や駐車場の問題、管理費等の値上げや公平性の問題、共用部分の利用方法の問題、(大規模)修繕の問題、総会決議の瑕疵の問題など様々な問題を扱ってまいりました。川崎で法律事務所を代表として経営しています。https://www.kawasakiphos-law.com/

One thought to “【マラソンと日本酒をこよなく愛する弁護士のマンション管理コラム】マンションにおけるペット飼育問題④(最終回)”

  1.  ペット飼育は、過去からの永遠の課題と言えます。
     今となっては、高齢化や少子化等が進み、コンパニオンアニマル等としての動物飼育は防ぎきれません。 しかし、多頭飼育等多くの問題を解決する必要もあります。
     守れない飼育規則よりも、より守れる飼育規則の検討、飼育者の会等で違反飼育者への注意喚起等も必要です。
     私も転居に伴い、過去にはやむなく猫を飼育したことがあります。
     しかし、理由が消滅した以降には、動物を飼育していません。
     むしろ、共用部分で猫に餌をやる等の行為が問題となります。
     猫ブームで、当地でも野良ネコが増えています。
     子供たちが猫を好きなら、猫カフェ等もありますので、利用等の検討も必要です。
     もちろんマンション外ですよ。
     
      

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