【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その95】NPO法人は非営利団体だから安心?

マンション管理をサポートする大阪のNPO法人が、マンション修繕業者から提供された約2000万円を、寄付金として大阪市に収支報告していないこと。その寄付金が当該NPO法人の理事長に渡っていたことが報道されました。
特定非営利活動促進法(NPO法)は、寄付金も含めた収支状況の報告を義務付けていますので、寄付金の未計上は同法違反となります。それよりなにより、このような多額の資金が修繕業者からNPO法人の理事長に支払われたことは驚きですね。

特定非営利活動法人(NPO法人)には、本来の趣旨に合致した活動のために作られたものと、NPO法人を隠れ蓑として、営利活動をする個人や団体が、その本質を隠して営業活動するための便利な器として、活用するために作られたものがあります。
後者のマンション管理に関連するNPO法人において、営利活動をする個人や団体は、マンション管理士、建築士事務所、大規模修繕工事業者、損害保険代理店などです。

中には、マンション管理会社が肝煎りでNPO法人を設立している例もあります。管理規約の作成、長期修繕計画の作成、大規模修繕工事の設計・施工管理など、本来は管理会社がになってしかるべきと思いますが、これらの業務を積極的に当該NPO法人へ斡旋・紹介して、別費用で管理組合から直接外注させるのです。管理会社として管理規約の全面改定や長期修繕計画の作成などの業務を提案しても、下手をすれば管理組合からサービス業務として押し付けられ、無料で多大な労力を割かざるを得ません。息のかかったNPO法人を管理組合に紹介し、これらの業務を管理組合がNPO法人に有料で業務委託してくれれば助かるのです。

 

 

大規模修繕業務に至っては、管理会社が建物診断、改修工事の設計をコンサルティングし、かつ大規模修繕工事を受託することは、利益相反行為となり至難の業です。自社の息のかかったNPO法人と上手に役割分担し、①管理会社はNPO法人を大規模修繕コンサルタントとして推薦し、管理組合と契約するように仕向ける。②NPO法人は大規模修繕業者の選定において管理会社の工事部門又はその息のかかった改修工事会社を本命として受注できるよう画策する。

管理会社とNPO法人が、お互いを最適なパートナーとなりお互いを推薦し合えば、外見上は公平性を担保しながらその実、出来レースを演じて管理組合から最大の果実をもぎ取り、両者で分け合うことがたやすくできるのです。管理会社が裏で不適切なパートナーシップを構築するのはコンサルタント会社だけではないのです。

では、どうすればこのからくりを見破ることが出来るのでしょうか。

  • NPO法人の理事は個人です。理事長以下、理事の素性を調べましょう。 特定の企業の息がかかった気配はないでしょうか。
  • NPO法人の理事が交代することなく特定の人物に支配されているといったことはありませんか。
  • NPO法人の会員や賛助会員にマンション管理士、管理会社、改修工事会社、コンサルタント会社などが多くを占め、これらの営利活動するものからの会費や寄付が、本来のマンション管理組合からの会費を大きく上回っていませんか。もしそうだとしたら、これら営利団体がお金を出してもメリットがあるという仕組みが成り立っている証左です。
  • NPO法人がマンション管理のコンサルティングを行ったマンションの実績を調べましょう。マンション名だけを先ず尋ねて実績のリストをもらいましょう。その後に、そのリストに記載のマンションを管理している管理会社、大規模修繕工事を行った施工会社の名前を追加で教えてもらってください。特定の管理会社の管理物件から偏重して業務を受託し、特定の工事会社一社又は数社に大規模修繕工事が流れていないでしょうか。
  • NPO法人の収入の内訳をみてみましょう。マンション管理に関連するコンサルティング収入が、会員の管理組合が負担する会費収入に比して突出していませんか。そうであれば、NPO法人の会員や賛助会員のマンション管理士や設計事務所がNPO法人を営利業務の受注窓口として活用しているということです。
  • NPO法人が自らの業務を説明する際に、ことさらに「都道府県の認可団体」だとか「非営利団体」だということを強調し、公平、公正、中立な業務を行うなどと宣伝していませんか。

玉石混交のNPO法人の中から、慎重に玉を見極められますよう、皆様くれぐれもお気を付けください。

One thought to “【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その95】NPO法人は非営利団体だから安心?”

  1.  NPOだからダメとは限りません。 一般社団法人や株式会社でも脱税事件はあります。
     納税の義務は国民の三大義務の一つですから、法治国家としては許してはいけません。
     「他山の石」として、すべての自然人、法人が襟を正す「反面教師」としなければ、今後の参考にはなりません。
     最近感じているのは、法人が従業員個人の責任であるということで、管理会社はフロントや清掃管理員に責任を押し付け、会社の責任を放棄や回避しているということです。
     何も知らな「かたぎのしろうと」の管理組合に、「プロ」の管理会社が責任を押し付けることが多すぎます。 専門的知識者の劣化は、NPOだけに限りません。
     「反社の管理会社」等が「堅気の素人の管理組合」を騙すことは、立法措置もされているので、断じて許せません。

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