前回(その1)のあらすじ
「マンション管理士の将来性は?」と尋ねられ、マンション管理士事務所で3年間勉強した経験をもとに分析。「将来性あり」との結論からコラムはスタートするが暗雲が立ち込める…。
マンション管理士は経験者しかなれないのか
そういうわけではありません。マンション管理業界の経験がなく、私より後に門戸を叩いたマンション管理士(以下、「マン管士」)が、数カ月の教育期間を経て理事会支援を単独でこなすようになっています。
すごいなぁ、と感心するとともに、「一番大切なことは情熱だな」と気づかされます。また、本校の発起人である中間マージンを一切取らない管理会社のクローバー管理とクローバーコミュニティは、「フロント担当にフロント経験者を雇わない」が経営方針と聞きます。その心は、こちらのコラム「管理会社のフロント担当はなぜ「ダメ」なのか」が参考になると思います。サービスの質を重視しているのです。
グレーなマンション管理業界
私は現在、理事会支援の仕組みを変えるべくIT的な業務に携わっています。ですので、世の中のマン管士と同様に間接的ではありますが、理事会支援に情熱を注いでいるわけです。
この世界に足を踏み入れて分かったのですが、マンション管理業界ほどグレーな世界も珍しいと思います。まずをもって、大規模修繕工事をほとんどの管理会社に言われるがままに依頼すると、確実に工事費からマージンを抜かれることになります。(当校に支援をしてくださるマンション管理会社は例外です)
人件費が高騰する中で、管理委託費を上げることができない管理会社の虎の子が大規模修繕工事なわけですから、容易に想像もつくかと思いますが、息のかかかった工事業者に丸投げするだけで「2割3割は当たり前!」と、某家電量販店の昔のCMのような状態で工事費からマージンが抜かれてしまいます。
また、このような事態を迎えないために契約した設計コンサルタント会社の多くが、公正な競争入札を装いながら、これまた息のかかった工事会社に落札されるように誘導してバックマージンを得ています。このことはダイヤモンド誌で特集され、国土交通省のホームページで警告されていることからも真実であることがわかるのではないでしょうか。
「ビジネスなんだから仕方ない」という考えもあるかもしれませんが、「(顧客に)その存在を隠し、汗をかかずに儲ける」というマージンの存在は健全な経済活動とは思えません。(当校の人気コラムニストのムージさんは、自身の奮闘で1000万円もの工事費を削減しました)
アナログなマンション管理組合
デジタライゼーション(生活や仕事の隅々までデジタル化)がすすむ世の中にあってもなお、ほとんどのマンション理事会や総会で使用される資料は「紙」です。紙の方が見やすく、デジタル対応が難しい理事や住人もいることから、このこと自体はいいのですが、問題は皆さんに渡されたその大切な資料は、結局のところ捨てられるか戸棚のスペースを埋めるだけではないのか、ということです。
「このマンションで過去に同じような問題が起きたか?」
「この仕組みは、どのような背景から、いつのマンション総会で決議されたのか?」
このような質問に回答するには、過去の資料をひっくり返すことになり大変な労力が必要です。管理会社が変更になった際には、従前の管理会社から理事会や総会に用いた貴重な資料は引き継がれない、が現実のようですから、これではマンション理事会で苦労して重ねた議論の末に生まれた議事録も、その場限りの記録と成り下がります。
無関心ではいられない現実
管理組合が主導する大規模修繕工事の市場規模は年間9000億円といわれています。分譲マンションの戸数は直近のデータで664万戸を超えており、その数は少子化が叫ばれる現在も増え続けています。
1964年の東京オリンピックが起爆剤となったマンション建設は、大規模化やタワー化の進化を続け、来年開催されるオリンピックを見据え、この先もなくなることはありません。
この巨大市場において、マンション管理業界がグレーでアナログな世界であることに気づいている方は一定数いると思います。そのことにビジネスチャンスを見出し、すでに様々なサービスを始めている方がいますが、まだ世の中を変えるほどのインパクトを与えるには至っていません。
大規模修繕工事も2回目以降ともなると修繕積立金が不足するケースが散見されるようになります。今のままでは9割以上のマンションが修繕積立金不足になるという記事もあるるくらいです。しかしながら、その場合において、追加の出費を住人へお願いすることはとても難しいことです。
マンションの高齢化とともに、住人の高齢化も進んでいるからです。
修繕工事ができなくなったマンションに未来はあるのでしょうか。
「マージンの存在は必要悪だ」
「そんなの知らなかった」
「面倒だから任せてしまおう」
このような無責任な考えで、管理組合運営を続けて本当に大丈夫なのでしょうか。
マン管士の将来性
その一方で、マンションの未来のために理事として一肌脱ごうにも、貴重な休みをつかって実施されるマンション理事会が、正直なところ負担であることも事実です。一生懸命やればやるほど、理事会に費やす時間は長くなりがちで、すごいマンションは丸1日近くかかるところもあります。
「マンション管理の良し悪しが、マンションの資産価値を決める」
__これは間違いのない事実です。
ただ、「出費はできるだけ抑えたい。けれども、自分が理事会役員になった時は、極力面倒は負いたくない」このような意見が多いことも事実です。(まさに私がそのタイプです)
また、「マンションのために出費を抑えようと一生懸命活動したら、業者との癒着を疑われた」という理事長の声も聞いたことがあります。
「気楽に、でもしっかりと。そしてクリーンに」
このニーズを満たすことができれば市場は一気に拡大するでしょう。今、その実現に向けて準備を進めています。
LINEWORKSさんの力を借りて、理事会支援の新たなサービスを模索し、大規模修繕工事の施工業者選定をクリーンで簡単にできる仕組みを考え、今年中にはカタチにできるよう優秀な仲間とともに鋭意努力を続けています。
グレーでアナログな世界だからこそ、ビジネスチャンスあり
このチャンスを(私だけでなく)モノにできれば、その先に、さらなるマン管士の活躍する場が必ず待っています。
正に法体系の曖昧さに、マンション管理の問題があります。 そこへマンション個別の事情が加わり、法律等だけで問題は解決できません。
さらに、管理規約も、販売時に業者が事実上決めたもので、購入者や区分所有者等に知識や経験がないため、理解不可能です。
そこへ、マンション管理管理センター等関係団体の無責任さが加わり、まさに暗黒状態です。
マンション管理士は、専門的知識を生かし、第三者的立場で業務を行わなければなりませんが、管理会社の御用管理士がゴロゴロいて、マンション管理は、漆黒になってしまいました。
国の状況が、マンションの状況とそっくりです。
その事に気付いた、マンション管理士の団体もありますが、一方、業界団体と化したマンション管理士の団体まで現れ、「管理不全マンション」に輪をかけています。
信義誠実の原則、善良なる管理者の注意義務は、どこへ行ったのでしょうか?
数は少ないですが、「悪法でも法」に気が付き、対応している方はおられます。
マンション管理センターも、セミナーで注意喚起していますが、表現があいまいで、心に響きません。
器用人さん
いつもコメントありがとうございます。
天に向かって唾を吐けば、それはいずれ、自身に当たりますので。