「泳ぎ上手は川で死ぬ」ということわざがあります。
自分の力を過信して、慣れたことや得意なことで失敗することの意味ですが、誰もが一度くらい身にしみた経験があるのではないでしょうか。
私も学生時代の卒業旅行で、屈強な男3人だからとタカをくくり、ある国の危険エリア(といっても、繁華街のディスコですが)に足を踏み入れたところ、チンピラに拘束されて殺されかけるという、ギャグにならない経験があります。
マンションは様々な人の拠り所、当サイトのコラムニストの言葉を借りれば平成長屋なので、様々な分野の知識や経験を持った方の集合体といえます。
理事会などで、大規模修繕やコミュニティ形成のための議論がなされる際、もちろんそのような専門的な知識や経験を活かしてほしいのですが、そのことが過信とならないように気をつけたいものです。
20年くらい前の話ですが、後輩の身に起きた『泳ぎ上手は川で死ぬ』を紹介したいと思います。
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その日、スノーボードが趣味だった私は、バブル絶頂期にあった会社の福利厚生制度をフル活用し、新潟にあるスキー場に向かっておりました。
代表を務めていた私のスノボサークルも10人を越える所帯となり、トップシーズンともなれば、夜中に車を連ねて雪山に向かうことが、週末の恒例行事のようになっていました。
当然この時期はスタッドレスタイヤを装着し、安全には細心の注意を払っていたのですが、後輩のMだけは夏タイヤのまま。というのも、Mの車は当時流行りのハイラックスサーフ(4WD)で、夏用といってもクロスカントリー用のゴツゴツタイヤ。(なぜかこのタイヤでチェーン規制の検問が通過できる)
さらに自宅を車で出入りすること自体が、クロカン鍛練の場だったこともあり、運転に対して絶対的な自信を持っていたのです。
どのくらいの鍛練の場だったかというと、崖の上のM宅に車で上がるには、まずをもって両サイド10センチ程度しか余裕のない道を進むこととなります。道中にはほぼ直角に折れ曲がるカーブ。さらに、その道の片側は、脱輪でもしようものなら奈落の底、廃車必至の3メーター級の崖が待ち受けており、対向車が来たことを考えただけで足がすくみます。
その地獄の裏街道のようなあぜ道を、Mはなんとバックで悠々と下るという猛者なのです。
(その2へつづく)