【切っても切れないマンションと保険の話し その11】マンション修繕積立金の相場はどのくらい?

前回コラムの「管理費の相場」に続いて、マンション修繕積立金の相場についてもお伝えしたいと思います。

区分所有者は管理組合に対し、管理費とは別に「修繕積立金」も納入しなければなりません。この修繕積立金は、マンションの大規模修繕工事に使用するためのお金です。

標準管理規約の第28条には、次の使途が挙げられています。

  • 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
  • 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
  • 敷地及び共用部分等の変更
  • 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査
  • その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

東京都都市整備局の「マンション実態調査結果」によると、修繕積立金の月額の平均は1~20戸規模のマンションが最も高く1.33万円/戸、201戸以上が最も安く0.93万円/戸。全体的な相場は1万円前後/戸となっています。

修繕積立金は、ランニングコストである管理費とは異なり、十数年おきに行う大規模修繕工事の時(将来)に費用が発生するイニシャルコスト的な費用として(将来を予測して)積み立てるものです。ですから、以下の削減方法を実施する計画を立てたからと言って、修繕積立金の削減を安易に進めるのは注意が必要です。

 

 

現在の長期修繕計画に比べ、実際の工事コストが削減できた時や、修繕時期を後ろにずらすことができた時に、その時点の長期修繕計画を立て直し、余裕ができた金額を削減にあてたり、余剰金として確保しておきましょう。

また、以下内容など修繕積立金、大規模修繕工事に関する検討や実施に関しては、管理会社やマンション管理士だけでなく、一級建築士資格のある専門家(設計事務所や専門団体)に相談することをお薦めします。

(1)設計監理方式の採用
大規模修繕工事において、設計監理方式を採用し、建物診断のうえ、適正な工事内容を提案してもらい、余分な工事は行わない。

(2)費用の比較を行う
設計事務所や施工業者の選定には入札方式を導入し、工事費の抑制に努める。

(3)今工事するもの、まだ工事しなくていいものを区分けする
仮設足場が必要ない工事内容については、時期をずらして、工事費の支払い額を少なくする。

(4)中小規模の施工業者
小規模マンションの場合は、大きい施工業者ではなく、その下請工事を行っている中小規模の施工業者の中から選定する。

(5)直接発注することも検討
同じく小規模マンションの場合は、設計監理方式だけではなく、施工業者へ直接工事発注をする方法も検討することも大切です。

この場合は、設計監理方式のように、設計事務所がいないため、その代わりに管理組合が自ら推進することが必要です。まず、管理組合や管理会社による建物診断を実施し、設計事務所に依頼する建物診断費用を節約しましょう。

適正な工事費なのかの確認は「住まいるダイヤル」という無料見積チェックサービスを行っている国交省がつくった専門相談窓口にお願いしましょう。施工業者が適正に工事を実施しているかの現場チェック等は、これも国交省がつくった大規模修繕工事瑕疵保険に施工業者が加入するように管理組合からリクエストしましょう。(具体的には:施工業者選定の入札条件に大規模修繕工事瑕疵保険へ加入と記載する。)

同保険は、施工ミスに対する保険金支払い以外に大きなメリットがあります。それは、工事関係書類の提出が必要なため、設計施工基準をクリアしているかの確認をしてもらえるということです。さらに、それらの申込内容どおりに工事が実施されているか、同保険の保険会社の現場検査員(一級建築士)が第三者の視点で現場検査を2回程度実施してくれます。

施工業者は、もし、間違っていることがあれば、申込内容どおりになるように、現場検査員から是正指摘され、修正完了した場合に検査合格として、保険申込手続きが完了するという管理組合にとっては安心できる保険制度となっています。こういった信頼できる仕組みの利用も検討してみましょう。

(6)修繕積立金の積み増し
建物の劣化が進んでいないようであれば、工事実施の時期を後ろにずらして、修繕積立金の積み増しを行うことも検討してみましょう。あわせて修繕周期を15~18年周期に長期化することも効果があります。

(7)工事の材料相場(工事費相場)の把握
実施時期に余裕があれば、工事の材料相場が高騰している時期を避けて工事実施することもできます。
しかし、今後の相場見通しについては、建設業界・経済動向他、様々な知識や情報から総合的に判断する専門的な知見が必要です。専門家のアドバイスを受けることをお薦めします。

(8)補助金の利用
耐震補強工事や玄関ドア・窓サッシ工事、バリアフリー工事を行う場合は、国や地方公共団体の補助金申請により、工事費を節約することができます。

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