私は、委任状の確認が終了したので管理会社にメールしました。
・集計ミス1件は修正すること
・以下の票の扱い(有効なのか無効なのか)について回答すること
-賃借人により署名・捺印された委任状(2件)
-包括承継人により署名・捺印された委任状(1件)
内容が固まらないのに届く議事録原本
メールを送ってから10日経っても回答がありません。そして、この間に、なんと議事録が私のところに届きました。
明らかな集計ミスがあるのに、無効かもしれない委任状が存在しているのに、管理会社は議事録を印刷し、署名のために回付してきました。
すでに、議長ともう一人の議事録署名人の署名・捺印は済んでいました……
そこで、再度管理会社にメールし、指摘した集計ミスを修正すること、前回メールにて確認した内容について回答するよう再度要請しました。そして、この件が決着しないと議事録に署名・捺印はできないよ、と議事録を差し戻しました。
翌日、管理会社から賃借人により署名・捺印された委任状について回答がありました。
カッコ書きではありますが、区分所有者登録されている方の名前が記載がありましたので、有効の議決権としてカウントしました。
厳密には、登録上の所有者と違う名前の場合は登記事項証明書を取得の上、真の区分所有者を確定することが望ましいですが、実務上はそこまでは行っていないのが現状です。
「登記事項証明書取得」とか素人がびびりそうな専門用語使って論点ずらしてるんじゃねーよ!本件は所有者が不明なわけでは無いので、登記事項証明書、いわゆる登記簿を取得する必要はありません。
カッコ書きで区分所有者の名前があっても、署名・捺印しているのが明らかに登録された区分所有者とは別の人であるのをそのまま受理することがおかしいのではありませんか?今後、この2件について誰かから法的な有効性を問われた場合、有効との判断が下されますか、と聞いてみました。
管理会社からの回答は以下のようなもの。
委任状の取り扱いについては、区分所有者本人が追認しないと無効となる可能性もあるかと思いますので、今後は本人への確認をする等、対応させていただきます。
つまり、このままでは「無効となる可能性もある」ということですね。
可能性がある、というよりは「無効」でしょう。
と、私は思います。
「今後は本人に確認する等、対応」って、なんか前向きに善処するみたいな書き方ですけど、確認すべきはまさに今回でしょう。特別決議が通過するかどうかが掛かっているんですから。
もう一つ、「追認」って何?
総会後に区分所有者に聞いて賛成って言ったらOKなのかよ、と管理会社に聞いてみましたが、この件については回答がありませんでした。
委任状の問題を無視した場合に考えられるリスク
上程した規約改正案は、賛成票が4分の3ギリギリでした。問題の2件を無効としたら4分の3を切ってしまいます。
たとえば、誰かが規約改正決議の無効確認の裁判を起こしたら、負けるかもしれません。今回は全面的な規約改正で100箇所以上の変更がありましたから、規約改正決議が無効となったらこれらの変更がすべて無かったことになってしまいます。私も裁判を起こされる可能性は限りなく低いと思っています。まず、無いでしょう。ですが、万が一起きた場合の影響は計り知れません。
また、このリスクを回避するために委任状を無効とし、規約改正案を否決にしたとしても再チャレンジは可能。もう一度総会に出せばいいだけです。
問題が発生する可能性と発生した場合の影響の大きさ、回避した場合の手間を天秤に掛けて、私は問題の2件を無効にする腹を決めました。このまま通した場合、いつか爆発するかもしれない不発弾を抱えるようなものですし。
ところが、この管理会社からのメールの少し前に、理事長からこのようなメールが来ました。
これらの委任状は、厳密に言えば問題があるかもしれない。
今回は、これらが無効であっても決議に影響はないと考えるので、管理会社から回付された議事録はこのまま有効としたい。
但し、今後は、もっとシリアスな場面が生じるとか、僅差での決議となった場合問題となり得る事があるため、次回の総会関係の書類送付時には、この旨を明記した方が良い。
何言ってるんすか、理事長!まさに今回がそのシリアスな場面であり、僅差での決議です。
委任状が1件でも無効になれば、特別決議である規約改正案は否決です。理事長がもし現在の議事録で通すというなら、私は内容に問題ありと考えているので署名できません。他の人を指名してください、と返信しました。
これに対して理事長は現在の議事録を採用する方を選択し、他の人を議事録署名人に指名しました。ですがその5日後、理事長より、この件は理事会で検討します、との連絡がきました。指名した人から断られた、あるいは改めて問題点を指摘されたのではないかと思いますが、経緯は公表されなかったので実のところどうなのかは分かりません。
理事会で検討した結果、賃借人が署名・捺印した委任状を無効とし、その結果、規約改正案は組合員数、議決権数ともに賛成が4分の3に至らず否決となりました。
私としては規約改正のための臨時総会を開き、その際、この件についてある程度周知して問題提起したいと思っていましたが、理事長をはじめ、その他の理事、監事は臨時総会までは開催する気がなく翌年まで持ち越しとなりました。それほどの問題であるとは認識されなかったようです。
規約改正案は継続審議とし、翌年の総会に再度上程し、無事可決されました。
勉強になりました。私も理事長やっていますが、管理会社のサポートが曖昧だと自分で自衛しなければならないのですね。自分も易きに流されてしまいますので気をつけたいと思います。
コラム楽しみにしています。
ペーパー理事長さま
コメントありがとうございます。アライです。
うちのマンションの例は特殊なんだと思います。
こんなことがそうそうあるわけ無い。
でも、何かあった場合、管理会社は責任を取らない(そういう構造になっている)ので、
自衛は大切ですね。
アライさんのコラム、毎回楽しみに読ませて頂いてます。
普通の仕事なら当たり前の良識的なものが、
ことマンション管理だと平気で無視されてしまい、
「おい!」と思うことは、私も何回か経験してきました。
委任状の署名者が他人なんてことがあるんですね。。
想像もしてませんでしたが、
今後はそんな委任状が混じってないか管理会社に確認するようにします。
けんさま
コメントありがとうございます。アライです。
私もけんさんのコラムを楽しく読ませていただいています。
管理会社ってビジネスの現場ではあり得ない対応をしますよね。
メールが1ヶ月放置されるなんてことザラでした。
委任状ですが、私が見たのは数年前のことになります。
今だと個人情報保護法が改正されて5000件要件が撤廃され、管理組合にも適用されるといわれていますので、
今後は私のように理事会承認だけで理事が委任状を見ると問題になるかもしれませんね。
管理会社に釘をさすだけでも一定の効果は見込めるものと思います。
自主管理しているときに、総会欠席者へ委任した方がおられ、取り扱いに困りました。
株主総会を参考に、議決権行使書を考えましたが、意図が理解されず、建て替え後、管理会社に悪用され放題です。 特別決議は少数差で否決できましたが、一般決議は通ってしまいました。
お話を参考にして、正常化に取り組みます。