2019年9月9日、K山理事長から妻あてに、唐突なメールが入った。
「C技研(大規模修繕の施工会社)のH林氏(工事の監督)が、施工図面の見方について説明に出向くとのことですが、同席なさいますか?」
K山理事長がマンションに保存されている図書を確認してみたところ、建築関連の仕事をしている彼をもってして「全く理解できない」しろものだったそうで、C技研に連絡を入れてみたのだとか。
「図面についてはよくわかりませんが、とりあえず、同席させていただきます。」
と、妻。
そして当日。
待ち合わせ場所に指定されたマンションのエントランスホールにやってきたのは、大規模修繕時に工事の監督をしていたH林氏。彼については僕もうっすらと覚えている。やたらガタイが良く、やたら顔立ちが濃く、そしてやたら腰の低い四十がらみの男性だ。
開口一番、H林氏は次のように言って頭を下げたそうだ。
「申し訳ありません!K山理事長から連絡を受けて、会社に残っている図面を確認したところ、タイルの図面が抜けていることがわかりました!タイルの補修図面としてマンション側に提出されていたのは、タイルのものではなく、下地の図面でした。」
聞けば、「最終的な図面は、手描きのメモを元に専門業者に清書してもらう」ものなのだとか。
タイルの図面が抜けていて、代わりに下地補修の図面がダブった状態のそれを、C技研は、業者から上がってきたそのまま、中身を確認せずに提出してしまったそうで、
「タイルの図面ですが、業者から届けられていないことが確認されました。原本のメモも、業者に渡してしまったまま、手元には残っておらず、今後復元できる見込みもありません。」
平謝りの彼からは続いて、
「タイルについては、図面が無いと、どのタイルを補修したのか確認ができないので、貼り換えた部分、貼り換えていない部分に関わらず、すべて保証させていただきます!」
との補償の交渉内容が告げられたと言う。
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