【図面を取り戻せ!~大規模修繕後の戦い】40.弁護士無料相談(K西弁護士 2019年3月29日)(その2)

「まずは、図面の提出について、期限を限って回答を求めるのが良さそうですね。」
帰り道、Nさん、S井さんと妻は、そのように確認しあったそうだ。
「そうせんと、なかなか返事はなさそうやし。」
「先日の話では、B建築設計のM本さんは、今週中にC技研、S社も交えて、3社での会議を行うと約束しています。なので、S社の担当者には取り急ぎ、『図面を出してもらえないなら、そちらに損害賠償請求する可能性もありますよ』って、伝えておきます。」
「それがええですね。S社も、損害賠償までは払いたくないやろうし。」
K西弁護士から「こちらの言い分がもっとも」と太鼓判を押されたことで、強気に進めて良し…との決意をさらに固めたようだ。

「それにしても、K西弁護士も言ってはりましたね。」
とNさん。
「ええ、『むちゃくちゃ杜撰な仕事をしていたってかんじですね。』って。」

K西弁護士はこれまで、建築関連企業の側に立つ仕事を引き受けることが多かったらしい。

「どちらかというと、こういった書類を求められる側の仕事が多いですね。その私の受けた印象なんですが、ここまで提出を拒むのは、『作成していなかったので、出そうにも出せない』ってことなんじゃないかと感じます。おっしゃるように『何か隠したいことがあるから出さないのでは?』って可能性も考えられますが、むしろ、むちゃくちゃ杜撰な仕事をしていたんじゃないかってかんじですね。」

これがK西弁護士の感想だった。
前日のM本氏からの聴き取りに同席してもらったN川建築士も、同じようなことを話していた。
「図面がないなんてありえないと思ってましたが、仕事をしていなかったと認めてまで隠しているとは思えない。本当に作ってなかったんじゃないでしょうか。」

「あたしたち、今まで『ここまで図面を提出したがらないってことは、何か裏があるんやないか?』って思ってました。例えば施工当初の不良を隠すためとか、仕事の手抜きや、水増し請求を隠したいとか。」
S井さんが、相変わらず冷静に分析する。
「そうですね。そのつもりで調べてきたけど…、」
妻が答える。
「でも、C技研は、ほんまに図面を作ってなかったのかもしれません。現場では、『ここやっといて~』『わかりました~』ってレベルで進めてたのかもしれない…。」
「要するに、あたしたち、むちゃむちゃ舐められてたってことですね。」

「管理組合活動って、ずっと理事にお任せで、その理事かって1年で交代なんやから、どうしたって管理会社にうまくやられてしまうんやないですか。」

Nさんが、そもそもの問題点を指摘する。
「B建築設計かって、その管理会社が連れてきたんやし。」
「今後は、管理会社の変更や、管理組合の立て直しも、考えないと…。」
ただ少なくとも、この大規模修繕問題の後始末を通じて、現在少しずつではあるが、住民間に、管理組合活動への関心が芽生えてきてはいる。
「やらんなあかんことが、まだまだたくさんありそうです!」
決意を固めた妻の肩に、S井さんがそっと手を置く。彼女なりの慰労の仕草らしい。大きな課題について話しつつも、三人の足取りは、軽かったそうだ。

そしてこの5日後、事態は急展開する。

(photo by photoAC)

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