【ある「元」大手管理会社取締役つぶやき その37】全てのマンションが終の棲家にはなりえない~限界マンションの終期~

 

全てのマンションが終の棲家にはなりえない~限界マンションの終期~

ある地方都市のマンション管理会社の社長から伺った話です__。

マンション管理会社の当社がこんな発言をするのは不謹慎だが、分譲マンションは不動産としての価値を維持し続けることができるのだろうか?

大規模修繕も2回目、3回目と進んでゆくとエレベーターや給排水管などの設備の全面改修も必要となる。いよいよ改修では対応できないとなれば、建て替えを検討することになる。

大部分のマンションは、解体費用、解体・建築期間中の仮住まいの費用、そして新築の建設費用を捻出などできないだろう。

建て替えのできるマンションは、大都市の、地価が高い所に立つ、容積率に余裕のあるマンション(今より戸数の多いマンションが建設できるため、余剰の戸数を不動産会社に買い取らせて、建て替え費用をねん出できるマンション)に限られるだろう。

多くの分譲マンションの行く末はどうなってしまうのだろう…。

 

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マンションの行く末を懸念する声は、私が見聞きしたものでも深刻かつ多岐にわたります。

①老朽化による維持管理、修繕に要する費用の増加(必要費用の捻出が困難)

②組合員の高齢化(要介護、認知症世帯の増加、役員のなり手が不在)

③居住者人口の減少(単身世帯の増加、子供たちの転出)

④空き駐車場の増大(高齢化、居住人口の低下による)

⑤空室率の増大(居住者は家財を残したまま転出、賃借人が見つからない等)

⑥外国人居住者の増大(マナーの悪化、治安の悪化等)

⑦民泊、シェアーハウス的な利用の増大

⑧組合員の収入の減少(定年退職後の年金世代増大、安くなった中古マンションを購・入居する世帯の増加)

⑨管理費・積立金の滞納者の増大(滞納者増大で毎月の支払費用が賄えないため管理費を値上げ、自主管理への移行等)

⑩管理会社の方から契約解除を通告(管理委託料の未払い、委託料の値上げ要請を断ったため等)

限界集落や限界自治体という言葉があります。社会学者の大野晃教授が1991年に提唱した概念です。山村の人口減と高齢化が進み、森林が荒廃し、集落自体が消滅することの警鐘として、あえて「限界自治体」「限界集落」という表現をされたと聞きます。65歳以上の高齢者が地方自治体総人口の過半数を占める状態を限界自治体と呼びます。

 

___分譲マンションでもマンション自体の高齢化と組合員の高齢化を二つの老いの問題が指摘されるようになりました。

富士通経済研究所の米山秀隆さんは「限界マンション ―次に来る空き家問題」という本を著しましています。

以下Amazonの書評を引用します。

▼老朽化したマンションの末路は、スラムか廃墟か。居住者の高齢化と建物の老朽化という「2つの老い」により、空室が増え、管理組合が機能せず半ば放置される「限界マンション」化がじわじわと進行している。

▼しかし、建て替えができるだけの容積率の余裕がある物件も、区分所有権を解消し解体するための費用を積み立てている物件も少ない。朽ち果てるまで放置するしかないのか。50年も保たない耐久性と区分所有権というマンションの矛盾が生んだ時限爆弾がいよいよ炸裂しようとしている。

▼限界マンション化を防ぐ手立てはあるのか。どうすれば建て替えを実現できるのか。購入者にとってマンションは終の棲家となりうるのか。前著『空き家急増の真実』で空き家問題を世に問い大きな反響を巻き起こした著者が、リサーチとデータをもとに、次なる空き家問題であるマンションの末路を冷徹に分析する。

 

新築マンションの入居に夢膨らませる若い世代の皆さんにとっては、「まさか」、の冷や水を浴びせる問題ですね。

「我が家の超高層マンションは人気マンションだし、高額マンションだから建て替えも容易だ。」なんて思ってはいけません、40年50年後には区分所有者の属性や懐具合は様変わりしているはずです。

超高層マンションを解体し、再建築するには3年以上かかるでしょう。そんな長期の仮住まいを何百世帯もの住人が耐え忍んで、再度同じマンションに居住する必然性があるのかといったことも議論となるでしょう。

これから世帯人口がどんどん減少し、住宅は明らかに余ります。空室は増大し、管理費の滞納も増大するでしょう。いまのうちから将来に備えなくてはなりません。

管理会社が管理組合を手玉に取るような関係をまずは整理・解決して、良好なパートナーシップを構築したいものです。経済的に深刻な事態となり、金額面で委託管理が継続できない管理組合であれば、会計業務のみをアウトソースする、マンション会計ソフトを活用して会計業務を組合直営とするなど、自主管理を模索することも必要でしょう。

すべてのマンションが建て替えを目指せるものではありません。修繕による建物の保全が限界となり、建て替えも実現できないとの判断に至った場合には、「建物を解体して区分所有関係を解消し、敷地を売却して清算する」といったマンションの終期を見据えたビジョンを組合員全員が共有できるよう、今のうちから準備することが、組合員の責務であると思います。

 

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