【デベロッパー・管理会社経由、北関東のマンション管理士 白寄和彦のコラム】管理会社との関係 その1

都内の複合Aマンションの理事会に出席しました。

議事は粛々と進んでいましたが、ある区分所有者から部屋のリフォーム申請がされたのを契機に、理事長から管理会社のフロント担当者が叱責を受けました。規約では、区分所有者は承認を受けようとする日、つまりリフォーム工事を始めたいとする日の3週間前までに、設計図や仕様書、工程表等を添付した申請書を理事長に提出しなければならないことになっています。

にもかかわらず、区分所有者からの正規の申請書が管理員を経て、管理会社の担当者の手に渡ったのが1週間前でした。担当者は、管理会社によるリフォーム申請に関しての啓蒙活動が甘いのではないかと叱られたのです。その後、管理会社の技術課で工事仕様(特に床部材)のチェックが最優先で行われ、管理会社から理事長への「承認しても問題ナシ」の報告は数日前ということでした。

しかし、理事長は単独でリフォームの承認をすることができません。規約上、理事長がリフォーム申請について承認又は不承認をするときは、理事会の決議を経なければならないと規定されているからです。いつも厳粛に理事長職を執行されている方ですから、マンションに居住するうえでの「約束事」=規約の遵守を重んじる理事長の立腹や懸念は、多少八つ当たり気味ではありますが、痛いほどよく理解できました。また、詫びることは詫びて、今後申請した区分所有者及びリフォーム会社をしっかりとフォローしていく旨を宣言したフロント担当者の態度も頼もしく思いました。

ここまでのやり取りは、どこの理事会でも見られる「ありふれた」一場面です。

しかし、管理会社が何らかの形で専有部分のリフォームの関わっていたなら、やり取りは大きく変貌するのではないでしょうか。管理会社がリフォーム工事の当事者になる訳ですから、管理員が申請書を預かることも、管理会社がリフォームの工事仕様をチェックする必要もなくなります。また一方で、申請の手続補助をする管理会社としての役割を担っているのですから、業務懈怠以外に瑕疵が生じるはずがありません。

効用は他にもあります。フロント担当者、管理員、リフォームの現場監督の連携が上手くいけば、近隣住戸への配慮は行き届いたものになります。理事長が最も懸念する「リフォームによる苦情が理事会に持ちこまれる」ような事態は起きないはずです。管理会社にとっては、リフォームをする専有部分の所有者も、騒音等でそれなりに影響を被る近隣住戸も同じ大事な組合員ですから。

ただ、この提言には、未だ管理会社に身を置く私の「理想」というか過度な「思い入れ」が多分に含まれています。

だいたい管理組合は、区分所有者の共有財産であるマンションの共用部分を維持管理することが主業務であり、リフォーム工事をどこの会社が請け負うかなど預かり知る立場ではありません。専有部分に関しては、管理組合はマンション居住者の平穏で健全な生活を脅かすことがないよう用途制限(専ら住宅として使用する)をし、事象が発生した場合にはルール(規約)に則り是正のために警告等を行い、最悪のときは法的な対抗措置を講じることになります。

その意味で専有部分のリフォームはトラブルの発生原因になる可能性が高いので、執行機関である理事会の審議・決議マターになっているだけで、それ以外に管理組合との関連はないというのが原則になっています。

そもそも、管理会社は大規模修繕工事を含む毎年の計画修繕やリフォームに関わるべきではなく、組合から委託された本来の管理業務に徹するべきだ、「余計なことはするな!」いう意見が多くあります。昨今、この意見は、管理組合と管理会社が互いの立場を分かりあえる関係を構築していたとしても、それとこれは別ということで、世間では支配的になっています。

ところで、マンション管理においては欠かすことができない存在になっている管理会社は具体的にどんな業務をしているのでしょう。管理会社が委託される業務は大きく分けて4つあります。

  1. 事務管理業務

    (出納業務)⇒ 管理費等の収納、滞納者への督促、通帳の保管、経費の支払い、帳簿の管理等を行います。

    (会計業務)⇒ 管理組合の予算案作成、収支決算案作成、収支状況の報告等を行います。

    (管理組合運営の補助)⇒ 総会・理事会の運営支援・補助や施設運営の補助を行います。

  2. 管理員業務(窓口業務)

    受付業務・点検業務・清掃業務・立会業務・報告連絡業務を行います。

  3. 清掃業務

    日常清掃と定期清掃に分けて、共用部分の清掃や植栽部分のお手入れ等を行います。

  4. 建物・設備管理業務

    エレベーターや給排水、機械式駐車場、受水槽、建物等の保守・点検等の建物・設備管理業務を行います。

管理組合が管理会社に上記のどの業務を委託するか、管理会社はどの業務を受託するかで4つのタイプがあります。

まず、管理会社に①〜④すべてを委託する場合のことを「全面委託」といい、全国のマンションで75%がこのタイプです。①〜④のうち、どれかを選択して部分的に委託しているタイプが「一部委託」です。一部委託の内容としては、①の出納、会計業務が圧倒的で、全国的には15%のマンションがこれに当たります。また、管理会社に委託せず管理員を管理組合自らが雇用するタイプを「管理員直接雇用型」と呼んでいます。なかには①〜④の業務をすべて委託していないマンションもあり、全国的に5%存在し、このタイプがいわゆる「自主管理マンション」と呼ばれているものです。

ただ傾向としては、自主管理マンションも上記のように①〜④の何らかの業務を管理会社に委託しつつあり、管理会社への依存は年々高まって来ているようです。全面委託よりは一部委託、一部委託よりは自主管理と移行した方が、管理コストが下がることは自明ですが、全国4分の3のマンションは、コストよりは「餅屋は餅屋として」管理業務を全面的に管理会社に委託し請け負わせているということです。

ちなみに、「全面委託」されている管理会社の収益増大の如何は、④に含まれる建物及び各種設備の保守・点検業務を可能な限り多く管理組合から請け負うことができるかにかかっています。

具体的には、定期巡回点検(年6回)、消防設備点検(年2回)、受水槽清掃(年1回)、エレベーター保守(フルメンテナス)、機械式駐車場点検(年8回)、排水処理設備点検(年12回)、宅配ロッカー保守(年1回)等の業務です。また、④とは別にセキュリティ・機械警備業務(戸別監視・鍵預かり)を請け負い警備会社に発注している会社も多数あります。

一方で、管理組合側としては、多少のコスト高を承知のうえで、トラブルや事故が発生した場合の窓口の一本化、リスクや責任を管理会社が一手に引き受けることをメリットとして、委託契約にこれらを含めていると思われます。(つづく)

 

 

積水ハウス株式会社 宇都宮支店長・水戸支店長・札幌支店長を経て、関西第二営業本部長。その後、積和不動産株式会社に移籍し、分譲マンションの管理事業とめぐりあう。東京・神奈川に展開する「グランドメゾン」シリーズを手がける。積和不動産株式会社役員・顧問を経て、2017年に事務所を開業する。栃木県小山市出身/家族は妻と二女

3 thoughts to “【デベロッパー・管理会社経由、北関東のマンション管理士 白寄和彦のコラム】管理会社との関係 その1”

  1.  マンション管理士の資格創設の理由に「第三者的立場」があります。
     これには「圧倒的優位」すなわち、経験、知識、情報等に恵まれている管理会社と、「圧倒的不利」つまり何も情報等を持たない管理組合の契約は、公序良俗に反し、管理委託契約自体が無効と考えます。
     何も知らないJK相手に「JKビジネス」と構造は同じで、法律にたけた雇用者とJKでは話しになりません。
     管理会社のマンション管理士自体が利益相反になる恐れがあります。
     「知らない方が悪いは詐欺師の常套句」です。
     管理会社のマンション管理士や、管理会社が「詐欺師まがい」にならないよう、努力して下さい。

  2. 「管理会社がリフォームの関わっていたなら、管理員が申請書を預かることも、管理会社がリフォームの工事仕様をチェックする必要もなくなります。また一方で、申請の手続補助をする管理会社としての役割を担っているのですから、業務懈怠以外に瑕疵が生じるはずがありません。
    フロント担当者、管理員、リフォームの現場監督の連携が上手くいけば、近隣住戸への配慮は行き届いたものになります。「リフォームによる苦情が理事会に持ちこまれる」ような事態は起きないはず・・・」
    白寄管理士が気付いていおられる以上にこれは過度な「幻想」だと思います。
    この理屈で、リフォーム会社を管理会社以外に決めてはならないと強い逍遥(強制はさすがにできないでしょう。)が顧問のマンション管理士や理事会からあれば、管理会社は錦の御旗を得て割高なリフォーム代を請求するでしょう。
    そもそも期日遅れは組合員の規約認識不足。規約を守らない組合員は管理組合が恥ずべきことで、啓蒙不足と管理会社をなじるのは心得違いです。啓蒙すべき内容と手段を具体的に指示するのが理事会とこれを支援する管理士のやるべきことです。それをしないのは管理会社の不作為で責められても仕方ありませんが、これを行ってなお是正できないのは管理組合全員の問題だと思います。管理会社に安易に責任転嫁する理事会の姿勢を正しく矯正するのも管理士の大切な仕事の一つと思います。管理会社も、「滞納者や規約違反者の責任までは負えません。」と毅然と対応すべきです。管理会社が謝るのは、発注者=理事長の心象を悪くするわけにはいかない商売人の性であって、物事の是非を見誤ってはならないと思うのです。

  3.  物事の是非を見極めるには、「カネ」に目がくらまない精神が必要です。
     管理会社や工事会社の「適正利益」には文句を言いませんが、鞘取り、コロガシ、丸投げで末端業者のいじめ、管理組合から巻き上げる不当利益には、メスを入れなければなりません。
     下請けいじめをすると、まともな仕事をしなく(できなく)なります。

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