【デベロッパー・管理会社経由、北関東のマンション管理士 白寄和彦のコラム】〜ちゃんとした議事録〜

N君は着実にキャリアを積んで、社内外で評価の高いプロのフロント社員です。日頃は寡黙で、話は短く的確で雑談においても示唆にあふれ勉強になります。私自身相談することが度々で、時に彼が判断やアドバイスに悩む姿をかいま見ると、イジワルな気持ちが起こり快感を得ることさえあります。男が嫉妬する典型です。

N君は、竣工以来10年間一筋に700戸超のAマンションを担当しています。

Aマンションは元々居住者間コミュニティの形成をコンセプトに共用施設が充実していますが、同マンション管理組合の考えるコミュニティとは地域との融合を目指す「開かれたコミュニティ」であり、そのために様々な施策をうってきました。その分、フロント社員にとって管理組合の運営支援には業務外の仕事や気苦労も多く、中途、余人には代えがたい社内的な事情もあったからです。

N君はAマンションについて、「役員の方々が自分の任期中に結果を出すんだ!」という意思と有言実行に付いて行くのが実はいっぱい、一杯でした。」と感慨を漏らします。

そんなAマンション管理組合の10年間の活動と成果及び彼の苦闘を知りたいとき、我々には議事録(総会・理事会・説明会に係る文書を含む。)があります。同マンション管理組合の議事録は、素案に対して理事長や複数の役員のチェックと手直しが効いていて、組合員に真に読んでもらうことを前提としているので、誤字はなくビジュアルに優れていて、かつリアリティに富んでいて、退屈せず一気に読むことができました。

特徴的であったのは、肝心な場面で「この議題を理事会で決めなければならない理由は何か」または「もし総会で決議されなかったらどういう問題が生じるか」という集団自治に不可欠の議論が十分になされて、合意形成に至っている場面が多く登場することです。

議論をリードしたのはどんな人だったんだろう?見識と推進力を見習いたくなりました。

Aマンション管理組合は、毎期のように幾度も組合員に必要な規約や運営細則の改定及び管理仕様の見直し等を行っています。周到な準備をしたうえで、10年目にしてようやく修繕積立金の積立方式を均等積立方式に変更することに成功しました。しかし、理事会議事録からは、議論が紛糾し、議案の核心部分で意見が分かれ、総会に上程できるのか焦燥感が理事会を覆う様子がうかがわれます。理事会だけでは少し荷の重い、ようやくたどり着いた「難事」であったことが想像できます。

残念なことに私は現場に出向くことは叶いませんでしたが、「運よく」、議事録を通してAマンション管理組合のチャレンジを追体験することができました。

「運よく」は、私が求めるこのような「ちゃんとした議事録」にお目にかかるのは希少であるという意味です。多くの議事録の作成に携わる人たちは、「議事録は、会議で何を審議し、結果として何が決議され、いつから何が変更となるのか」を最低限記載してあればよいと思っているのではないか。読まれないことを前提に、紙数を増やさず簡潔に仕上げることを「徳」とする考えではないかと疑わざるを得ません。

私のように、担当社員の主観をまじえず、議事録を通じて「静かに」管理組合の軌跡を辿り、今後の仕事の教訓としたいと考える人はいるはずです。他にもそれぞれの動機で「ちゃんとしたもの」を読む必要のある人がいるはずです。

例えば、新規で役員に就任し過去の組合活動を振り返ってみたいと思う組合員や、引き継ぎの一環として管理組合が培ってきたDNAを知りたいと思うフロント社員。N君のような社員をきちんと人事評定しなければならない立場の管理会社の上席、などなど。

これらの人達は、読後に「ちゃんとした議事録」の存在と作成に携わった方々に必ず感謝すると思うのです。

私が考える「ちゃんとした議事録」とは、まず「会議の出席者が確認し共有できるものであり、欠席者に正確に周知させ共有できるもの」、「決定事項を明確化し決定に至るまでのプロセスを共有できるもの」であることは当然です。そして「保存して証拠になるべきもの」、「管理組合の活動を随時紹介して組合員の理解を得ようとするもの」です。

欲を言えばキリがありませんが、これらが私にとって「ちゃんとしたもの」の最低限の要件です。

作成に携わる人は、これからは、最後の要件について特に重要と認識し手を抜くべきではないと思っています。なぜなら、「管理組合の旺盛な情報発信や具体的な活動を判断材料の一つにしたい」と考える購入希望者が現れる時代がすでに到来して来ているからです。

著名なマンション管理士が「議事録とは古文書のようなもの」と書いているのを覚えていますが、そこに「ちゃんとした」を加えて頂ければ、私は大満足です。

 

積水ハウス株式会社 宇都宮支店長・水戸支店長・札幌支店長を経て、関西第二営業本部長。その後、積和不動産株式会社に移籍し、分譲マンションの管理事業とめぐりあう。東京・神奈川に展開する「グランドメゾン」シリーズを手がける。積和不動産株式会社役員・顧問を経て、2017年に事務所を開業する。栃木県小山市出身/家族は妻と二女

One thought to “【デベロッパー・管理会社経由、北関東のマンション管理士 白寄和彦のコラム】〜ちゃんとした議事録〜”

  1.  自主管理の経験から、100戸までの中規模マンションなら、議事録ではなく、議案書の作成がカギになります。 議案書がしっかりしていれば異論は少なく、議案書を少なくとも1週間前に役員に渡しておけば、読む人は読みますので、ややこしい話がない時は能率的にすれば、理事会は30分で済みます。 管理会社は、議案書案さえ作る能力はなく、当日配布もあったようです。 これでは理事会自体が機能せず、まともな管理はできません。
     質問ですが、正しくない議事録など存在するのでしょうか?

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